第3話 生存者
ノートリアスのミュージアムに入ったモヒウス達。そこはミュージアムと言うよりは…。
『いずれはこの辺も手を付けたい。保存環境のためにも空調…』
ノートリアスはぶつぶつと呟いている。ミュージアムの照明が点いた。荒廃した世界した外の世界しか見た事がない彼らには文明を保っていた生活感ある空間と言うのが非常に新鮮な物に思えた。思わずそれぞれが感嘆の息を漏らす。
ズィーマがまるで子供の様にはしゃぎながら走り回る。彼女は胸元の前で指を組んで涙をこぼした。
「はあ…嘘みたい。今まで生きてて良かった。こんな物を見られるだなんて…」
歴史的な価値がある物ばかりだ。ヴァネッサはポカンとしていて、モヒウスとタンタはまじまじと置かれている物を眺める。全ての商品の規格がでかい。時代の変遷でどれだけ人類の背丈が縮んだのか、かつての人類はこれだけ背丈が高かったのか。当時は何気ないだろう物がこんなに感慨深く後世の人間に見られているとは思わなかっただろう。
「大きさはとにかく、内装はミュージアムって言うか…まるでデパートだな」
モヒウスが呟いた。タンタも頷く。ヴァネッサとズィーマは首を傾げた。
『おや…驚きです。現代人でその言葉を知ってる人がまだいるとは』
「モヒウス、デパートってなんだ?」
ヴァネッサが尋ねる。百貨店。大型小売店。大きな建物に色んな店が立ち並んでいて多くの市民がそこで一度に多くの買い物を済ませる事が出来たと言う旨の説明をした。ヴァネッサはそこで美味しい物を食べる事が出来たと言う事に目を輝かせる。
「ぐ、グルメ天国!素晴らしい!…かつてここにもそれがあったと言うのか…」
『ええ、そうですよヴァネッサ。ここは本来の空調機能を失っているので今は無駄な寄り道をしている暇がございませんがいつかは案内しましょう』
「はあっ、人類の文明を全身に感じる♡むしろここで死にたい♡」
ズィーマが辺り一面に広がる科学技術と歴史の宝庫の山に発狂した。彼女ほどではないがモヒウスも当時の技術力の高さに圧巻される。そして同時にそれらが失われてしまった事に悲しさと人間の時代の儚さを知った。
「…これだけの科学技術力を有しながら、未曽有の災害を前に為す術もなく衰退して行ったと言うのか俺達は」
「あはははははは!!私達は人類の末裔!歴史の生き証人!死ねば人類史の終焉を看取る事ができる、生きれば人類史の一部になって生き続ける!ああ、死んでも生きても素晴らしい!これが私達人類!あははははは!!」
先程からテンションがぶっ壊れたズィーマが両手を広げて笑いながらグルグルと回る。タンタが彼女を受け止めて宥める。
「落ち着いてくださいズィーマ。ほら、深呼吸ですよ」
吸って吐いてと言うタイミングを言うとそのタイミングに合わせて呼吸をするズィーマ。やっとおかしなテンションから戻ったがその両頬の紅潮と見開いて血走った眼は普通ではなかった。彼女は肩で息をしながら独り言の様に言った。
「…早く行きましょ。私ここに長くいたら頭がおかしくなっちゃう」
それから各階を回りながらノートリアスと相談し、必要な物を必要なだけ取っていく。確かにここから持って行くのが楽なのは間違いないのだが、ここで回収して使ったパーツも物によってはもう製造できない。壊してしまえばそれきりになるし、それに当たるパーツを探し出してここに戻す事はできるのだろうか。
初めはノートリアスがミュージアムの部品を提供する事を渋っていた事をモヒウスもズィーマも快く思っていなかったが、こうして実物たちを前にすると自分達の都合で持ち出していい物やら少し躊躇いが生まれた。
これも1人でも多くの生存者を助けるため、下町再興のため。そう言い聞かせて貴重な物を持ち出して行く。どんなに貴重なものであれ人類が滅んでしまってはこのミュージアムは誰に知られる訳でもなくひっそりとここで廃れていくばかりなのである。
「この車なら悪路も走ってくれそうですね」
タンタは展示してある小型オフロード車を見つけてそう言った。それぞれ集まって眺める。細かいメンテと掃除と補修は必要だが確かに乗り心地も悪くない。この荒れた世界を走り回るには適している様だった。欲を言えばもう少し大きなサイズを乗りたい所だが彼らの体格では乗りこなすことができない。
『実に目の付け所が良い。それは私のお気に入りの1つですよ。言わずと見つけてくださるとは』
やや大仰で嫌味な言い方から「お気に入りだから使わないで欲しい」と言う風にも取れたが走破性の悪い車を走らせて駄目にするよりずっといいので遠慮せず使う事にする。一応後々にいくつか候補も上げたが結局はこのオフロード車以上の物はなかった。
ミュージアムにはドゥーデロは発生していたがルーガスはいなかった。ノートリアスが今よりしっかり管理していた頃はドゥーデロすらいなかったはずなのだと言う。やはり謎だ。
『ふうううむ。もっとノートリアスが沢山あったならもっとミュージアム管理に力を入れられるのに…。とても残念。とても悔しい』
「外の世界を走り回ってたら良さげなパーツだの再利用できそうな物の1つ2つ見つかるんじゃねーの?あんたの体だって問題なく動いてる訳だしさ」
悔しがるノートリアスの隣でヴァネッサが肩を竦めながら言った。
「ですね。私達としても作業の手が1つでも欲しい。生存者ではリスクが大き過ぎる事も多々ありますしこれからは出かけた先でノートリアスやノートリアスの部品回収も優先事項になりそうです」
タンタがヴァネッサの意見に同意を示す。ノートリアスとしてもタスクが多すぎるばかりにリソースを避けずに痒いところに手が届かない所が多々ある。下町で稼働するノートリアスを増やせるのなら彼としても願ったり叶ったりである。タンタはヴァネッサの発言に便乗してオフロード車の有用性をより強調してより彼に「オフロード車の使用は仕方がなかった」と思わせる様に誘導している。
およそめぼしい物を集めてしまうとオフロード車に燃料を入れてミュージアムを出た。地図のおかげで崩落した箇所などが殆どなく凶暴なルーガスも出現しなかったため結局中では殆ど飲食をせず探索中にノートリアスの充電を何回かした程度だった。
中は非常に広かったためノートリアスの言う事が大げさだとは思わなかった。もしも天井が崩れたりして閉じ込められたらと思うと彼らはズィーマを除いて全員がゾッとした。ノートリアスは努力しているが彼1機維持にも限界がある。人間を集めて技術を学び補修、補強をしていく必要がある。
『人間も沢山、ノートリアスも沢山。この下町に活気を取り戻しましょう』
「もちろんだ」
モヒウスが返事をする。
「人類史の礎、何としても後世に残したぁい!」
ズィーマが祈るようなポーズで言った。彼女はできるだけ抑える様に努力していたがミュージアムにいる間は大体こんなテンションだった。それからはそれぞれ休憩を挟んだ。それからはズィーマとモヒウスが車を整備し、タンタとヴァネッサが車を洗浄した。それが非常に難航し約3日はかかった。
それぞれが車の運転の練習をしてから下町を出発した。屋根付きで、かつ動く乗り物。これには4人は感動した。それだけではない。ヴァネッサが押すと急にノリノリな曲が流れるボタンを見つけたのだ。タンタを除く3人は歌を歌いながら北東を目指す。
「「「ほうっ!ほうっ!!やーーーーっ!!!」」」
「うるさいですね…」
いつもは祈る様な思いで雨をしのぐ場所や泊まる場所を探して回ると言うのにそれが快適この上ない。食料は余るほどあるのでドゥーデロを狩らずに済むし、水も困らない。ルーガスの対処には慣れてるので大回りで避けて戦いは最低限しかやらない。
雨が降り出した時は4人共緊張したが、事前に淡水で確認した様に水漏れはなく車は問題なく走る。この時はタンタも一緒になって大喜びした。歩けば確実に数日はかかる道をまるでお散歩感覚で行く事ができる。あまり着心地の良くないレインコートだって着ずにいられる。まさに革命だった。
興奮の熱が冷めないうちにノートリアスの言っていた林に到着した。木々は20~30本も地上に生えている。日の当たらない所で細長い木が点々と生えているのは見た事が合っても地上で力強く根を張ってい光景は見た事がなく彼らも非常に驚いた。林に着くやいなや髭を蓄えた目玉は大きく背丈がズィーマより低いおじいさんが穴蔵から出て来て4人の乗っていた車を見て感動する。
「素晴らしい!素晴らしい!!ああ、なんて事だ!生きているうちに動く車が見られるなんて!!」
おじいさんは搭乗者4人には目もくれずまるで孫か何かと再会できたかの様に車に縋り付いて大声で泣いた。
「ほらね、別に私がおかしいんじゃないんだよ。物の価値が分かれば普通はこうなるんだって」
傍から見て変に思われていた事を気にしていたのかズィーマは泣き叫ぶおじいさんを指差して言った。
「分かった分かった。そんな事よりこの林の事を聞かないと」
ヴァネッサが「そんな事で」片付けるものでジト目で睨まれたが彼女は気にせず泣いているおじいさんに話しかける。
「じいさん、ちょっと話がしたいんだが」
「おおお、すまんすまん。それで、何だね」
4人は口々にこの林について尋ねた。この老人はこの土地で生まれそれきりここに住んでるらしい。数世代前の家族が旅の最中に雨にも負けずに地に根を生やして枝や葉を伸ばしている小さな木に出会いそれを研究して改良を加え雨にも負けず地上で育つ木を世代を経て作って増やしていた様だ。
その甲斐あって今では10~20mも高く大きく太い木々が林と呼べるレベルの木々が生い茂っている。更に彼は4人に見せたいものがあると言って穴蔵へ入って行った。ヴァネッサは穴蔵の近くに車を停めそれから全員で中に入った。
穴蔵は林の地下にありそこには地下水の池があった。おじいさんはニッと笑うとその地下水を掬い上げて飲んだ。4人は驚いた。辺りに浄水器はなかった。林の上にもこの穴蔵の中にもそれらしい物は見当たらなかった。
「お、おい…大丈夫なのかじいさん」
モヒウスが心配して声をかけると急に苦しげな声をあげて喉を両手で掴みゴロゴロとのたうち回りだす。驚いて4人が駆け寄るとひとしきりに暴れた後にニマーッと笑った。
「へへーっ!驚いたろ??驚いたろ??そうなんだ、ここの地下水は浄水器がなくても飲めるの」
「そんな、あり得ない…。これは一体…」
タンタが頭を掻きながら困惑する。
「うん。実はこの上にある木々が水を浄水してくれてるのよ。だからこの水は人間も飲める。凄いだろう?」
「そんな馬鹿な…。それじゃまるで木が汚染物質を吸収して育ってるみたいじゃないですか」
「『まるで』でもなければ『みたい』でもないわ。浄水効果の発見は偶然だったが我々の血筋が浄水器いらずになる様に改良を重ねたんだよ。ワシの代でやっと完成したんだわ。すげーだろ!な!」
あまりに非現実的な事で、なのにそれが実現してる事にタンタは言葉を失ってしまった。
「天然の浄水器…!じいさん達天才だな!」
ヴァネッサが褒め称える。
「おう、救世主と呼んでくれ。それはそうとどこから来てどこへ行くのか知らんが苗木を貰ってくれんか。あちこちに植えたいがワシはもう足腰も自由が利かんで遠くへは行けん」
そう言って並べてある苗木を見せる。むしろ喉から手が出るほど欲しかったので4人はハイタッチして喜んだ。
「それはもちろんいいんだがじいさんも下町に来ないか?人が住める町を目指して再興してる。環境は整いだしたが如何せん人手も知識も足りない。力が欲しい」
モヒウスが誘う。
「うん。役に立てるならどこへでも連れてってくれ。孫共はもう世話もいらんしな。…と言いたいがちと難儀するな」
ここから離れられない理由があるらしい。聞けばここから3、4km離れた所にある廃村に住む生存者3人がいるらしく彼らは数日に一度は顔を見せてここの水を汲んでいくらしい。何でも浄水器が壊れているが頼りのメカニックが重篤状態にあるらしく切羽詰まっている様だ。ここ最近は水を汲みに来ず心配している。
ドゥーデロもルーガス(おじいさんは青いの、赤いのと呼んでいた)も飲み食いはしないが場所を悪意もなく荒らす事は多々ある。おじいさんは彼らのために水場を守る必要があるのだと言う。
「水もある。食料も困らない。ここに引っ越せば良かっただろうに」
モヒウスが肩を竦めた。おじいさんはため息をついて首を横に振った。
「そう言うな。元々はその廃村に生存者を集めて暮らそうと考えていた様なんだ。そこには思い出も流した血汗の結晶もある。そう簡単に割り切れんのよ」
「そういうもんか」
生まれた環境や暮らしによって異なるがここの4人は基本的に定住地を持たずに安全地帯や集落を探して旅をしている。故に住む場所にこだわる事は殆どなかった。だから住む場所への愛着は理解できなかった。モヒウスやタンタでさえホームシックや愛郷心を忘れてしまっている。
しかしおじいさんは下町が上手く行けば近い内に失いたくない場所になるだろうと諭した。彼らは一度林を後にしておじいさんの言っていた生存者のいるという廃村に向かった。
いよいよその廃村が見えて来た。
「止まれーっ!止まれーっ!!」
女性の叫び声が聞こえた。ズィーマはは言われた通りに車を止めようとするがボウガンの矢が飛んで来た。ガンっと音を立てて車体を掠めた。
「あの女、グレート下町号に傷をつけやがった!轢き殺してやる!!」
「お、落ち着いてズィーマ…」
車の名称についてツッコミたいのをグッと抑えてタンタが宥める。ヴァネッサはハッとして迂回しようとする車から飛び降りた。
「ヴァネッサ?!?!」
モヒウスが彼女の行動に驚いた。あれでは射的の的だ。彼女は両手を広げて村に近付く。
「よせーっ!私達に攻撃の意思はなぁーい!攻撃をやめろーっ!!」
車を旋回させてヴァネッサを助けに戻る。
「動くなーー!!撃つぞおおおおおおお!!!!」
タンタは意を決して助手席から足を伸ばして急ブレーキを踏んだ。全員前のめりに倒れてフロントガラスや席に頭をぶつける。
「馬鹿野郎…舌を噛んじまったろうがよぉ…」
今にも泣きそうな声で言うモヒウス。タンタは2人に謝りつつそのまま身動きしない様に言う。やがて村から出て来た女性がボウガンを構えながらヴァネッサに近付く。それからこっちに来ると車から降りて手を上げて大人しくしてる様に言った。身体に武器防具は身に着けていない。車の中にはルーガスと戦うための武器がある。
それから村に来た目的を答えてやっとの思いで中に入った。
「随分手荒な歓迎だな、フルチカ」
ヴァネッサの言葉に3人が驚いた。
「生存者に襲撃されなきゃこんな事してないよ!…もう3回だよ、3回…。助け合わなきゃ生きて行けないってのにさ」
フルチカと呼ばれた人物は痩せこけていて、目の下には隈ができていた。彼らの活動拠点となる保育園の様な建物の中に入る。辺りを見渡してもロクに水や食料の様なものが見当たらない。彼らの生活がどれほど窮地に陥っていたかがよく分かった。
持って来た水を差し出すと「私より飲ませたい人がいる」と言って先へ進む。次第に悪臭がし出した。
『おっと、待ってください皆さん』
ズィーマの鞄からノートリアスの声がした。どうやら彼女はミュージアム探索時に持っていた機械を持ち込んでいたらしい。鞄から遠隔操作機が出て来る。どうやらオフラインなのではなく話はずっと聞いていたらしい。
『先行しますので少々お待ちを』
「なんだいこの不快な機械は」
「ノートリアスって言う機械だよ。知らない?」
彼女は肩を竦めた。ズィーマは可能な限り簡潔に説明する。罹患者の病名、対処法が分かるかもしれないと伝えるとひとまずは納得してくれた。ノートリアスとフルチカは先に進んで行った。しばらくするとフルチカの叫び声が聞こえた。ヴァネッサが駆けつけようとするのをモヒウスが止める。
彼女が呼んでいるのはティエロと言う妹の名前の様だ。少し間を空けてノートリアスが戻って来た。
『感染症の恐れはありません。しかし看病していたらしい人物は少なくとも2日以上前に死亡しています。看病していた方は早急に処置する必要があります。元気に見えますがフルチカもこのままでは危険です』
「あああ、神様!一体、一体あたしはどうしたらいいの!」
半狂乱でフルチカが叫んでいる。ヴァネッサはすぐに部屋に向かった。感染症の疑いはない。今は急いで向かう必要がある。全員で中に入ると既に蝿がたかってぐったりしている男性と傍で倒れている女性がいた。混乱しているフルチカをヴァネッサが宥めている。
「それで、僕達にできる事はありますか?」
タンタがノートリアスに尋ねる。
『充分な水と食料を与え安静にさせるべきです。しかし大変弱っている。まだざっとしか見ていませんが恐らくここの設備では彼女を助ける事はできません。2人を下町へ連れて来てください』
「フルチカ、ごめん」
ヴァネッサが短くそう言うとフルチカを殴って気絶させた。それから彼女を持ち上げる。
「迷ってる暇はない。すぐに運び出そう」
ノートリアスの指示に従ってティエロを運び出す。しかし困った事にどう詰めて乗っても1人分の席が足りない。ここから下町まで往復で2時間半から3時間はかかる。帰ってからはティエロの看病とフルチカを落ち着かせたりで忙しく、ここへ戻るにはもしもの事にも備えて車には最低2人は同乗する事が望ましい。しかし2人の時間を確保するまでにどれほどかかるか…。更に言えばここは別の生存者による襲撃が起きていると言っていた。危険は雨やルーガスだけではない。
「俺が残る」
率先してモヒウスが言った。彼も機械には強い。ヴァネッサほどではないが戦える。無難な選択肢だった。
「それじゃ私も…」
ヴァネッサが言った。彼女なりの責任感からだろう。しかしモヒウスが断る。
「フルチカが起きたらきちんと説明できる人間が必要になる。ヴァネッサ、お前しかいない。タンタ、混乱が起きたら舌と頭の回るお前しか場を収められない。ズィーマ、俺がいない以上はお前がメカニックとして皆を支えるんだ。俺はここで調べ物をしているから皆はゆっくり迎えに来いよ」
「…モヒウス、可能なら襲撃者を生け捕りにしてください。おそらく人数は多くありません」
「まあ、お前ならそう言うよな」
言われなくてもそうつもりだったがやはり手厳しいと内心思うモヒウスだった。ボウガン持ちとは言えこの守りを強行突破して来ないのだから相手は極めて少人数には違いない。話を終えてタンタが車を出そうとするとズィーマが車を降りた。モヒウスは苛立った声でズィーマに言う。
「戻れ。下町にはメカニックがいる」
「ノートリアスがいるよ。それに私もこの廃村に用事がある。タンタ、ヴァネッサ、急いで。秒を争うんだ」
ヴァネッサは複雑な顔をしていたがタンタが何も言わずに車を発進させた。モヒウスは頭を掻いたが今更タンタが戻って来るとも思えず先に保育園へ向かう。ズィーマもモヒウスと一緒に建物の中に入った中で武装を探す。ボウガン、弓矢、ピッチフォーク。中には壊れているが拳銃もあった。
いずれも武器として使うには充分で点検も行き届いている。
「えへへ、ボウガン、撃ってみたかったんだよね」
ズィーマが屈託のない笑みを浮かべる。
「生け捕りにしろっつってたのは聞いてたよね?」
「生きてればいいんでしょ?」
「まあそれもそうだな」
やる事は沢山あるがまずは襲撃に備えなければならない。フルチカの話から得られる生存者の情報はあまりに少ない。襲撃は少なくとも3回あったとの事だ。元より戦いへの備えはあったにせよボウガンを生存者に向ける状況は穏やかではない。しかし死人が1人と病人が1人出た様な状況で水や食料もままならず心身ともに限界が来ている様子だったため本当に生存者に襲撃者がいたのか、敵意があったのかも分からない。
襲撃は3回。少なくとも相手には雨風を防ぐ手段がある。高台から見張っても死角は少なくない。既に廃村に侵入していてもおかしくない。車の出入りは見られただろうか。どこまで見ていただろか。考えごとは尽きない。
モヒウスとズィーマは今後どうするべきかあれこれと知恵を出し合う。
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