05 魔力量
早いもので、この世界に転生して5年が経った。
5歳になっても私の生活に大きな変化はなく、相変わらず空間魔法を中心に生きている。
そして、そんな生活が実を結び、空間魔法はレベル4にまで成長していた。
また、毎日収納を使いまくっていたからか、魔力も面白いくらいに増えた。
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アリアンナ
体力∶62/62
魔力∶3200/3200
属性∶―
祝福∶空間魔法 レベル4
『収納』『取り出し』『消去』
『拡張』
特質∶早熟
幼少期の成長度が高い
称号∶異世界からの転生者
あらゆる言語の理解が可能
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レベル4になって、空間魔法は一気に使い勝手が良くなった。新しく覚えた拡張の魔法が、有用すぎるのだ。
これまでは、庭先の土を空間いっぱいに収納して、取り出して。魔力が無くなるまで、この作業の繰り返し。
最初は驚いたものの、今となってはこの単純作業に飽き飽きしていた。
でも、拡張魔法は違う。
毎日一日の終わりに、全魔力を使って拡張をする。それだけ。
多分、魔力10あたり、1cm²くらい拡張できる。魔力が3200ある今なら、1日で3m²くらい?
その結果、始めは段ボール1個分くらいしか無かった(と思われる)空間が、今や測定不能な大きさになってしまった。多分、家一軒くらいは、スッポリ入るんじゃないかな。
これなら、大抵のものは収納できるはず。
でも、今のところ、この大容量収納を使ってやりたいこととかは特に無いんだよね。せっかくだから、何か面白いことができたらいいんだけど。
少し考えて思いついたのは、
・商人に雇ってもらって、荷物持ちとして働く
・収納と消去を活用して、ゴミ処理の仕事をする
という案なんだけど、正直あんまりそそられない。
多分どちらも、人が生活する上ですごく大事な仕事だから、現世でもこのことを生業にしている人がいるはずだ。それを空間魔法持ちの私が興味本意で手をだすことで、その人達の仕事を奪ってしまった。なんてことになるのが嫌なのだと思う。
だから、空間魔法師にしかできないこと、あるいは、前世の記憶持ちだから知っていること、みたいに、この世界には無いことを新規開拓していくのが理想。
口で言うのは簡単だが、実際に形にするのは難しい。でも、ハードルが高い分、暇を持て余しているアリアンナには最適な暇つぶしだった。
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5歳になり、そこそこ話せるようになった私は、アネッサと2人で過ごす時間があれば、「教えて教えて」と積極的にこの世界のことを尋ねていた。
まだ私が小さいからか、アネッサはいつも分かりやすく丁寧に教えてくれるので有難い。
今日も、レオルは仕事で不在。マリとルイは外で友達と遊んでいるから、家に居るのはアネッサと私だけ。
だから今日も、【教えてアネッサ先生】の時間だ。今日は、この世界の魔力について尋ねて聞いてみようと思う。
というのも、私の魔力は5歳としてはどうなんだろう?と、前々から気になっていたのだ。早熟なる特質のおかげなのか、かなり成長スピードが早い気がしているのだけど、実際にそうかは分からない。
ちなみに、自分のステータスを見る要領で、他の人のステータスが見れないか試してみたことがある。
結果、出来なかった。
残念なような、安心したような。完全な個人情報だから、見えても困るというのが本音だ。
「ねぇねぇお母さん。魔術師の人って、だいだいどれくらいの魔力があるの?」
「あら。アリーも魔術師になりたいの?そうね〜、魔術師だと300前後の人が多いわね。名のある魔術師だと1000くらいあるなんて噂も聞くわ」
「せ、せん?」
「多いでしょう?羨ましいわね」
優秀な魔術師でも1000?
······今の私でも3000あるのに。
あれ、おかしいぞ。もしかしてこの世界の人は、あまり魔法の鍛錬をしないのかな。
それともやはり、特質【早熟】のおかげなのか?
だけどこの魔力量の多さって、多分良い側面ばかりじゃないよね。
というのも、前世での有名だった言葉に、こういうものがある。
【出る杭は打たれる】
これは、出過ぎた振る舞いをする者や才能があって目立つものは、とにかく他の者に憎まれる、という意味のことわざだ。
平々凡々だった清子時代には縁の無い言葉だったが、まだ5歳なのに、優秀な魔術師の3倍の魔力があるとなれば、きっと無関係ではいられない。例えば、火魔法が得意で魔力が3000とかだったら、後が怖いとかで大々的に非難されたりはなかったと思うけど。空間魔法なんて、攻撃や防御には一切使えそうもないからなぁ。
よし決めた。折角の魔力量だけど、折を見てレオルとアネッサにだけ伝えて、他にはあんまり言わないようにしよう。
そう決意したアリアンナなのであった。




