04 ハンカチの行方
とにかく早く、母アネッサのハンカチを取り出したい私は、藁にもすがる思いで、毎日収納魔法を使い続けた。
ステータスの空間魔法レベル1という表示が気になって、もしかしたらレベルが上がれば取り出しも出来るようになるかもしれないと希望を持っていたからだ。
そんな鍛錬の甲斐あり、日々右肩上がりの魔力量。まだ生後1ヶ月ちょっとしか経っていないというのに、現在の魔力はなんと189もある。初日は5しかなかったのにね。
この増加スピードは、果たして普通なのかな。それとも、早熟という特質のおかげなのかな。
そんな疑問が頭に浮かびつつ、暇な時間に収納しては寝て、収納しては寝てを繰り返すのだった。
日々の鍛錬の成果は魔力だけではない。
空間魔法のルールで、分かったことが4つある。
1 【収納魔法は、直接触れる必要はない。】
これは、アネッサのハンカチで検証済みの件。あの後も何回か、というより、私はまだ自由に動けないので、基本的には直接触れずに収納するスタイルだ。
2 【直接触れるか、視界で捉えているものしか収納できない。】
糸くずは、手で触れた状態で収納できた。ハンカチは、目で見て収納出来た。じゃあ手が届かない距離にある物を、目を瞑った状態で収納できるのか?試してみたところ、答えはNOだった。
もしこれが出来たら、遥か遠くにあるものを収納したりできたのかな?さすがにそれは、チート過ぎだから、出来なくて順当なのかもね。
3 【生物は収納できない。】
試しに、虫を収納しようとしたけど、ダメだった。ちなみに、私自身の収納も無理だった。
あ〜あ、入ってみたかったのに、異空間。
4 【収納に使う魔力は、物によって異なる。】
糸くずの収納には1、ハンカチの収納には、4の魔力を使った。体積?重さ?何が原因で使う魔力が変わるのかはまだ分からないけれど、異なるのは間違いない。
今のところ分かったのはこれだけ。
他にも、どれくらいの量を収納できるのかとか、異空間の中は時間が経過するのかとか、色々検証していきたい。
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生後2ヶ月経とうかというある日、収納をしていたら、急にカッと身体が熱くなった感覚がした。
もはや日課となった【ステータスオープン】を唱えると······
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アリアンナ
体力∶8/23
魔力∶273/336
属性∶―
祝福∶空間魔法 レベル2
『収納』『取り出し』
特質∶早熟
幼少期の成長度が高い
称号∶異世界からの転生者
あらゆる言語の理解が可能
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なんと空間魔法のレベルが2に上がっていた
それだけじゃない。
【取り出し】の魔法が使えるようになっていた。
これで、アネッサのハンカチを取り出せる!
すぐさまアネッサのハンカチを空間から取り出し、枕元にそっと置いた。そして私は、罪悪感から解放されたら、急に涙腺が緩んで大号泣。
滅多に泣かない私の泣き声を聞きつけ、慌てて様子を見に来たアネッサも、ハンカチを見つけて大号泣。
······やっと見つかったアネッサお気に入りのハンカチは、私とアネッサの涙と鼻水で、その日のうちにグチャグチャになってしまったとさ。
あ、アネッサのハンカチ、糸くずやホコリと一緒に空間に入れてたんだった······。ごめん、アネッサ。