表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

36/38

35 事件①

総合ポイント1000ポイント達成!

どうもありがとうございます。大変うれしいです!!


「アリー。今日は何して遊ぶ?」


 石鹸と空間魔法を駆使して綺麗に洗った洗濯物。そのシワをパンパンと伸ばしながら、マリが言った。


「そうだなぁ。私は今日は家でゆっくり過ごすよ」


 同じくシワを伸ばし、洗濯物を物干しに干しつつ返事をした。


 今日は、両親ともに朝早くからダンジョンに出掛けている。夕方には帰ってくると言っていたから、自由に過ごせる時間はあまりない。


 マリには悪いが、アリアンナには、両親、とくにアネッサが居ない間にしておきたいことがあった。



「えぇ。そうなの~? ルイも出掛けちゃったし、暇だなぁ」


 寂しそうなマリに罪悪感を覚えながら、さくっと掃除・洗濯を終え、ひとり部屋に閉じこもる。


 そして自身の空間から、あるものを取り出した。


「食品用ラップに、シリコン風お弁当箱、それからフェイスパックね」


 無価値とされたスライムゼリーの素材で、何か作れないか。そこから始まった新しい製品作り。


 スローライフを目指して地盤固め中のアリアンナは、トラスト商会さんと協力し、化粧水と石鹸の販売をしている。有難いことに、商品の売上は好調だ。


 ただ、この商品だけでアリアンナの理想のスローライフを完成させるのは難しい。

 

 なぜなら、ザコクの精米も、ツバキ油の抽出も、現状アリアンナの空間魔法が不可欠だからだ。精米機等を再現できればいいが、前世で普通の会社員だったアリアンナにそんな知識はない。

 故に、アリアンナが原料を準備して、サングリアさんに錬金を依頼して、トラスト商会に商品を卸す。このサイクルは永遠に続く。収入を得るためには、アリアンナは、この地を離れられないのだ。


 アリアンナが目指すスローライフは、好きな時間に目覚め、一日自由に過ごす。たまにきまぐれにふらっと旅に出て、大自然に触れる。

 そんな自由な生活で、伝書鳩のような多忙な生活ではない。


 そう考えると、目指す収入源は、空間魔法に依存しないものが良い。

 前世でいう、印税やライセンス料のようなものだ。



 誰もが入手できる素材で、何か有用な物を作って、その権利を売る。それがベスト。


 そこで目をつけたのが、簡単に入手できる素材、スライムゼリーだった。


 スライムゼリーの長所は、弾力性の高さ。そして、衝撃にも強く、高い位置から落としても衝撃を吸収することができる。一方、鋭い刺激に弱く、剣先が触れると簡単に破れてしまうという脆さもあるそうだ。


 この特性を前提に、前世の商品を何か再現できないかと考え、新商品のアイデアを十個ほど伝え、その錬金をサングリアさんにお願いしていた。


 何故前世の商品に絞ったかというと、今世で使われているものは、すでに研究しつくされていると考えたからだ。以前ルイも似たようなことを言っていたし。


 それに、今世に存在しない商品を錬金できた方が、より高値で商品が売れて、スローライフにまた一歩近づくのではないか。そんな思惑もあった。


 そしてその結果、納品されたのが、この三点というわけだ。

 


「食品用ラップは、思ったよりかなり分厚いね。ラップというより、蓋みたいな感じだ。でもこれなら乾燥は防げるね」


 意図が上手く伝わっていなかったのか、想定より分厚くなってしまったラップ。ただ、洗って繰り返し使うということを考えたら、分厚く破れずらい方がかえって良かったかもしれない。


「お弁当箱は思ったとおりだ。使い終わったら小さく折りたためるし、荷物が多い冒険者にはうけるかも」


 折りたためるお弁当箱は、見た目は完璧だ。あとは性能に問題がないかの確認。 

 今日のうちに、ごはんとからあげをつめておいて、翌日も美味しく食べられたら大丈夫だろう。



「でも、たとえ問題なかったとしても、トラスト商会さんに売るのは微妙だよね。かといって、他に信頼できる商会さんを探すのも大変だなぁ」


 装飾品をメインに取り扱っているトラスト商会。 

 ラップやお弁当箱は、いくら何でも管轄外すぎる。かといって過去にセコーイ商会と揉めた経験のあるアリアンナにとっては、他の商会を探すという行為も億劫だった。


「食品用ラップとお弁当箱は、しばらくは様子見だね……。さてと」




 最後の商品を見つめる。


 唯一、トラスト商会での販売が見込めそうな商品。

 化粧水が満ちた瓶の中から、真っ白なフェイスパックを取り出す。


「これも思ったより分厚いね。ちゃんと顔に貼りつくかな」


 ラップ同様、厚めな印象。自重で床に落ちてしまわないか、少し気になった。


 しっかりと化粧水を吸収しているようで、持ち上げたフェイスパックから、化粧水が滴り続ける。


「化粧水を入れすぎだね。化粧水は、今の一割くらいにしよう」


 しばらく摘まんだまま待っていると、滴るスピードが落ちたため、床を汚さないよう顔を近づけて、フェイスパックを顔にあてる。


「気持ちいい~」


 実際につけてみると、分厚さも気にならず、また顔に密着してずり落ちることも無かった。

 ただただ、冷たくて気持ちが良い。それだけだった。



 

「アリー? 何しているの?」

「あ、マリ」


 あまりの気持ちよさに少しうとうとしていると、どこかに出掛けていたであろうマリが帰宅した。


「し、死神!? だ、だれか助けて」

「待ってよマリ。どうみても私でしょう?」


 フェイスパックをつけたまま返事をしてしまったからか、アリアンナのことを死神と勘違いして、手に持っていた長ネギを振りかざすマリ。


 にしても死神なんて失礼なと思いつつ、パックを外してマリを落ち着かせる。



「……なんだ。アリーだったんだ。私、びっくりして心臓止まるかと思った」

「こんなところに死神が居るわけないじゃん」

「だって、顔が真っ白だったんだもん」


「そういえば、死神は真っ白な顔をしているって言ってたね」

「うん。だから死神が出たって咄嗟に慌てちゃったの」


 長ネギを振り回すマリを思い出して、アリアンナは「ふふふ」と笑った。顔が真っ赤になるマリ。


「もう! 何で笑うの?」


「ううん。もしかしたらね、実は死神も錬金術師で、フェイスパック貼っているんじゃないかって思ってね。だとしたら死神は、私にとっては商売敵だね」


 笑っては可哀想だと、とっさに話題を変える。


「もうそんなわけないじゃん! それで、それってもしかして、新しい商品?」


 やはり小さくても女の子。マリにとっては、目の前の美容品の方が気になるようだ。



「そうだよ。今確認中だったの。完成したらマリの分も用意するね」

「うん。楽しみ」


 その一言ですっかり機嫌を直したマリに一安心。


「そういえば、食材買ってきてくれたんだよね。一緒にご飯作ろう」

「そうだね。お母さん達が帰ってくる前に、パパっと作っちゃおう」



 無心で料理を作りながら、フェイスパックの改良点を考える。

(とりあえず、分厚さの調整と、適切な化粧水の確認が必要だね)








 自分のことばかりで、やりたいことに無我夢中。

 そんなのんきなアリアンナは気づいていなかった。




「大変よ!  誰か家に居ないの? マリちゃん! ルイ君! アリアンナちゃん!」


「グレイスさん、そんなに慌ててどうしたの? ルイは遊びにいってるよ」


 バタバタと訪れたのはグレイスさん。冒険者ギルドの職員さんだ。

 フラウア祭りの時に、ユーリさんと一緒に、アリアンナ達のご飯を美味しそうに食べてくれた綺麗なお姉さん。そんな皆の憧れの女性が、髪を振り乱してこの家を訪れた。


 アリアンナは、緊張で身体が強張った。



「そう。ふたりとも、落ち着いて聞いてね。……ご両親が、ダンジョンで怪我をしたそうよ」


 自身を取り巻く状況の変化に。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ