32 いざダンジョンへ②
今年最後の投稿となります。
ここまで読んでいただき、ありがとうございます。
また来年も週1回投稿を目標に頑張っていきますので、応援よろしくお願いします!
「えっダンジョンって本当!? でも洗礼式が終わるまでは駄目なんじゃ……?」
アネッサのまさかの提案に驚くアリアンナ。
「普通は洗礼式前は魔法が使えないからね。でも空間魔法にそんな使い方があるのならば問題ないわ。それに、アリーの魔法は未知数だわ。試し打ちするなら、場所を選ぶの。出来るだけ邪魔にならない場所でしなくちゃ」
「それって、ダンジョンだと邪魔にならないってこと?」
「勿論、周囲に人が居ないことを確認したうえで、練習する必要があるわよ。ただ、ダンジョンって不思議なの。たとえば、もしアリーが魔法を暴走させて、間違って床に穴を開けてしまったとしても、三日後には綺麗に穴が塞がっている。まるで、穴なんて初めから無かったみたいに。……それがダンジョンなの」
床に穴を開けるような暴走はしないと思うけど、と苦笑いのアリアンナだったが、ミレーア村は狭い田舎だ。もし何かあれば、アリアンナだけではなく家族までも爪弾きにされるかもしれない。
そう思うと、アネッサの言うことも納得できる。
さすがに、三日で穴が塞がるという不思議空間については、まだ理解が追いつかないけれど。
「よく分からないけど、行くよ、ダンジョン。その代わり、魔物が出たら助けてよね。私、まだ上手く魔法が使えないんだよ」
「勿論だ。アリーには傷ひとつ付けさせないよ」
レオルがそっとアリアンナの頭を撫でた。
「えっ。ダンジョンに行くって?」
「大丈夫なの? アリー」
アリアンナがダンジョンに入ると知ると、ルイとマリは目を丸くして驚いた。
「分からない。でも、その辺で練習して、魔法を暴走させたら危ないからって、お母さんが」
「そうか……」
そう言うと、黙り込むルイ。普段元気すぎるほど元気なルイが考え込むと、何故か自分まで不安になってしまう。
「でも大丈夫だよ。薬草ダンジョンにはね、魔物はスライムしかいないの。スライムはノロマだから、逃げ回っていればその内に父さんが倒してくれるよ」
「へぇ。スライムってノロマなんだ」
マリがくれた新情報に少し安心する。
「いや、逃げるだけじゃ駄目じゃないか? アリーは自分の身は自分で守れるようになりたいんだろ?」
「う、うん」
「そうなんだ。偉いね、アリー」
そうだった。一瞬安心してしまったが、アリアンナの目標は自分の身は自分で守れるようになること。
逃げ回るのではなく、守る術、それから戦う術を身につけなくてはならない。
「あのね、お母さんは、大きな石を収納しておいて、それを上から落とすだけでも充分牽制になるって言ってたの」
「いいじゃん。スライムはノロマだから、牽制どころか倒せるかもな」
「うんうん」
「そうなのかなぁ」
本当にそんな簡単なことでいいのだろうか。もっと、必要な準備があるのではないか。
いまいち納得できないまま、でもいい案も浮かばない。
「心配すんな。何かあったら俺が守ってやるから」
「私も! ずっと隣でアリーを守るよ」
そんな複雑な表情をしていた妹を見て、頼もしい言葉をかける双子。
「ルイ、マリ、ありがとう」
兄姉の優しさに、うるっとくる。
でも甘えてばかりではいけない。家族が準備してくれたこの機会に、まずはスライムに魔法を当てられるようにならないと。
よしっと気合いを入れるアリアンナだった。
そして、ダンジョンアタックの当日。
とりあえずアネッサの助言通り、大小様々な石を大量に空間に収納済み。出来る準備はしてきたつもりだ。
「近くまでは何度か来た事もあるけど、いざ入るとなると緊張するね」
ただ、いざダンジョンの前に立ってみると、緊張で呼吸が浅くなる。
「大丈夫だよ。一階層はスライムも居ないからな」
激励のつもりか、レオルがアリアンナの背中をポンと強めに叩く。
「そうなの? じゃあフラウアも取り放題?」
痛てて、と顔を歪めながら、アリアンナが尋ねる。
「まぁな。でもその分取り合いだからな。フラウアが残っていることはほとんどないよ」
「そっかぁ」
そんな上手い話はないかと頭を掻いていると、背中を押された。
「行くぞ」
「うん」
力強いレオルの声とともに、一歩踏み出した。
中に入ると、そこは普通の洞窟のような空間だった。前世で一度観光で訪れた鍾乳洞に近い。ただ、鍾乳洞と違うのは、このダンジョンは足元がしっかりしている。
これから沢山歩くであろうアリアンナにとっては、その方が都合がいい。
「さぁ、スライムが出るまで、どんどん下に降りるわよ」
レオルの言葉のとおり、一階層はスライムもフラウアも刈りつくされていたので、アネッサの掛け声で地下に降りた。
「地下といっても、一階とあまり変わらないね」
「あぁ。地下十一階層までは、見た目はほとんど変わらないよ」
階層ごとに景色が変わることを期待していたアリアンナは、あからさまにがっかりした。
「なんだ、つまらないの。ねえお父さん、十一階層はどんなところなの?」
「あたり一面、草原だ」
「草原かぁ」
これまた期待はずれ。だって、草原なんて、ミレーア村にはいたる所に存在する。どうせなら、ダンジョンならではの景色が見たいアリアンナは、再び肩を落とした。
「ただ、あたり一面草原というのも、結構大変なんだぞ。下層への階段の場所を覚えるのが大変なんだ」
「え? 目印を置けばいいじゃない」
何を当たり前のことを、ときょとんとする。
「アネッサが言っていただろう。たとえアリーが穴を開けても、ダンジョンは三日で元通りだって」
「そういえばそうだった。じゃあ看板とかを置くこともできないんだ」
「あぁ。三日で消えてなくなる」
「そりゃ大変だね」
見慣れた風景なのに、攻略は難しいとは。早くも薬草ダンジョンの不人気の理由を見つけ気がした。
「でも問題はない。アリーをそこまで連れていくつもりはないからな」
「ふ~ん」
草原という風景に文句を言いつつ、でも多少は気になる気持ちがあるアリアンナは、なんとも言えない返事を返した。
「さぁ、アリー。おしゃべりはここまでだ。前を見ろ」
「うわぁ」
レオルに言われて前を見ると、そこには……。
「スライムだ」
「で、でっかい!」
なんと、アリアンナよりも大きい巨大な生物が、ウニョウニョと近づいてきたのだ。
「こんなに大きいだなんて、聞いてないよ~!」
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水瀬潮




