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30 再会



「よお坊主達。危なかったな」

「あ、あなたは、あの時の!」


 アリアンナよりも大きな、いかにも重そうな大剣をいとも簡単に肩に担ぐこの大男には見覚えがあった。

 いつだったか、薬草ダンジョン付近で薬草採集をしていた際に出会った、あの四人組の冒険者パーティのうちのひとりだ。



「お嬢ちゃん達、怪我はない?」

「こんなところでサーペントウルフの群れに遭遇するとは。危ないところでしたねぇ」

「うん。でも間一髪間に合って良かった」


 続いて、パーティメンバーであろう、三人の男女も顔を出した。スタイル抜群お色気お姉さん、知的眼鏡の優し気なお兄さん、ロングブーツを履いたボーイッシュな女の子。全員、あの日言葉を交わした冒険者だ。


「助けてくれて、ありがとう」


 ルイが恥ずかしそうに頬をかく。すると、大剣を持った大男が、満面の笑みでルイを頭をわしゃわしゃと撫でながら言った。


「良いってことよ。それに、うちのレイの実力なら、サーペントウルフくらいお茶の子さいさいだからな」


 大男が後ろを指さした。どうやら、あの狼を倒してくれたのは、ボーイッシュな女の子らしい。確かに弓のようなものを背負っている。


「あの弓矢はレイお姉さんだったんだ」

「すごい命中率だなぁ」


 マリとダン君は、目をキラキラとさせながらレイさんの元に駆け寄る。

 眩しい視線を受け取ったレイさんも、満更ではない様子で口を開いた。


「そうでもない。これさえあれば、誰だって……」

「こらレイちゃん、おしゃべりがすぎるわ。もうこんな時間だし、子ども達を家に返してあげなくちゃ」

「そうですよ」


「……そうだな。レイ、また今度にしておけ」

「分かった」


 何かを喋りたそうなレイさんだったが、美女とインテリ男子の制止を受け、最後に大男の意見に素直に従った。



「このサーペントウルフはどうする? お嬢ちゃん達、ギルドまで持っていけるかしら?」

「さすがにこの子らには担げないだろう。と言ってもこのまま放置したら、明日には他の獣達の胃袋に消えてしまうだろうな。よし、これは俺たちが引き受けよう。一体銅貨七枚でどうだ?」


 目の前の五匹のうち、アリアンナ達が倒したのは二匹。どうやらアリアンナ達にはこの二匹は担げないと判断し、代わりに買い取ってくれるらしい。

 子どもたちへの優しさに溢れた大人の対応だ。


「いえ、自分達で持って帰ります。冒険者ランクも上げたいので」


 だがしかし、先程死を覚悟したことで、自重という言葉を捨て去ったアリアンナは、ヒョヒョイと異空間に収納してみせた。


 唖然とする大男たち。


「君が、噂の愛し子ちゃんだったのか」


 目の前にあったものが、パッと空間に消える光景は、ルイ達にはもはや見慣れたものであるが、普通の人にとってはそうではない。

 冒険達は、目をカッと見開き驚いた。


「まぁそうですね」


 淡々と返事をするアリアンナ。

 しかし次の瞬間、ドンッという衝撃を受けた。


「まぁ! こんな所で出会えるなんて幸運だわ! 私達、あなたに会ってみたかったのよ」



 美女がアリアンナに抱きついた衝撃だった。


「そうなんですか?」

「えぇ、だってお嬢ちゃんがあの化粧水の発明者なんでしょう? 私、あの化粧水を使い初めてから、お肌がツルッツルに生まれ変わったのよ」

「あぁ、そういうことですね」


 アリアンナの特製化粧水の愛用者であるというエイミーさん。確かにその肌は、アネッサ同様、艶々ピカピカだ。

 

「ねぇねぇ、他にはどんな商品を作ってるの?」

「ははは」

 

 興味津々のエイミーさんに、はははと愛想笑いをすると、大剣の大男がため息交じりに口を挟んだ。

 

「こらエイミー。子どもたちを早く家に送り届けるんだろ?」

「……そうだったわ」


 さらにグイグイと詰め寄りそうな雰囲気だったエイミーさんを、一言で制止した。

 どうやらこの大剣の大男がリーダー格らしい。



「そういえば、自己紹介がまだだったな。俺たちは隣町を拠点に活動する冒険者パーティ、新緑の番人。冒険者ランクはA。俺はリーダーのブラッドだ」


 と、思っていたら、大男もといブラッドさんの方から自己紹介してくれた。やはり彼がリーダーとのこと。


「私はエイミー。火魔法が使えるわ」

「僕はプロフェス。以後お見知りおきを」

「レイ。よろしく」


 美女の名前がエイミーさん。インテリ男子がプロフェスさん。そしてボーイッシュな弓の人がレイさんだ。


「やっぱり、貴方たちがAランクパーティだったんだ」

「すっげぇ」

「エイミーさん、私魔法が使えるんです。魔法のこと、色々と教えてください!」


 双子とダン君がブラッドさんの所で質問攻めにしている間、残ったアリアンナとシュナは、レイさんに話しかけた。


「あのレイさん、このペンダントって、何か不思議な力があるんですが? さっき光っていた気がするんですよね」

「シュナも見たよ。緑に光ってた」


「へへ、ふたりとも、見る目がある。触ってみる?」

「いいの!?」


 レイさんが首元にぶら下げているペンダント。その中心で存在感を放つ、緑というより、深緑に近い、濃い輝きを放つ宝石。アリアンナとシュナは、思わず手を伸ばした。その瞬間、エイミーの鋭い声が飛んだ。


「レイちゃん!」

 レイさんは肩をすくめた。

「あぁ、ごめん。エイミーが駄目だって」

「そっかぁ、残念」

「ごめんね」


 もう少しで手が触れる。そう思った所で、エイミーさんからの「待った」がかかった。心底残念だが、大人しく手を引っ込めたふたりだった。

 


 そうこうしているうちに、実家に到着。

 ブラッドさんが手を軽く振った。


「じゃあな。坊主たち」

「またね。ブラッドさん!」

 続けてエイミーが笑顔で手を振る。

「お嬢ちゃん達もまたね」

「うん! ありがとうお姉ちゃん」


 すっかりブラッドさん達と仲良くなったルイ達は、最後まで別れを惜しんでいた。


「レイお姉ちゃんの宝石、綺麗だったね。シュナ触ってみたかったなぁ」

「ね、私もだよ」


 一方で、アリアンナとシュナは、レイさんの宝石への未練が募る。

 

 とにかく触ってみたかったシュナ。

 それはアリアンナとて同じだったが、それ以上に気にかかることがあった。


「あのペンダント。どこかで見たことがある気がするんだよね……」


 それは、初めて見たはずなのに、どこかで見た気がするという既視感だった。


 彼女はまだ知らない。近い将来、その既視感の理由に気づくということを。


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