表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

2/17

01 転生



 ここはどこだろう。病院?にしては、天井が高い気がする。


 まさか天国?



 ······そっか。じゃあ本当に余命3ヶ月だったんだ。



 私は3ヶ月前、主治医から宣告された。

 胃がんで余命3ヶ月だと。


 まさか、まだこんなに元気なのにと思っていたけど、そうか、本当に余命3ヶ月だったんだ。



 ······やりたいことも、まだまだあったのに。


 まさか20代で急に死ぬだなんて。



 いや、若かったからこそ、この早さだったのだろう。両親より早く旅立つとは。とんだ親不孝者になってしまった。ごめんね、お父さん、お母さん。







「おぎゃー」



 その瞬間、自分の口から出た言葉に驚く。だって私は、ごめんねと言ったつもりだった。



「おぎゃー?おぎゃー?」



 どうして。


 思った通りに声が出せない。おぎゃーだなんて、まるで生まれたての赤ちゃんみたいじゃない。



 まるで赤ちゃんみたい?


 自分の言葉を反芻(はんすう)する。



 まさか、天国に来たんじゃなくて、赤ちゃんに転生しちゃったとかじゃないよね?




 念のため、もう一度、発声してみよう。


「······おぎゃぁ」



 イ、ヤ、だー!



「おっぎゃー!」



 その日、家の中いっぱいに、元気な赤ちゃんの声が響き渡った。








 それから数日間過ごしてみたけれど、状況は変わらず、私は赤ちゃん姿のまま。


 夢なら早く覚めてくれ、と願ったけれど、ど全く覚める気配はない。


 どうやらこれは、夢ではなく現実の話のようだ。



 そう悟った私は、潔く新たな人生を前向きに過ごすことにした。




 そしてそれと同時に、私は新しい人生における、ある目標を掲げた。



【ゆるく生きる】



 前世では遊ぶ暇なく真面目に学びすぎて、結果身体を壊し早死してしまった。



 そこから教訓を得て、現世では、頑張る時間はほどほどにして、その分ゆるく生きることにしようと思う。



 目指せ、スローライフ!






◆◇◆◇◆





 あ〜、寝ても寝ても眠い。


 幼児とはこうなのか、毎日飽きるほど寝ているのに、眠くて眠くて仕方がない。

 そんな中で、かろうじ出来ることといえば、発声練習と、情報収集くらいしかなかった。  


 発声練習の方は、正直順調とは言い難く、まだまだ「おぎゃあ」と「おぎゃー」としか言えないけれど、情報収集の方は成果があった。



 情報収集の方法は、観察と、会話の盗み聞き。そしてその結果、分かったことが2つある。



 分かったことその一、私の家族の構成。

 

 現世の家族は、私を含めて恐らく5人。父、母、兄、姉、私の5人家族だと思う。


 父レオルは、あまり家に居ないのか、まだ2回しか見ていない。印象としては、とにかく体格がいいクマみたいな人。


 兄のルイと姉のマリは、双子らしい。会話から察するに、私が生まれる半年程前に5歳になったようだ。


 二卵性双生児なのか、ルイはやや父親似、マリは髪の毛の色や瞳の色等、明確に母親似だった。


 


 分かったことその二、魔法の存在。



「アリー。アリアンナ。お腹はすいていませんか〜?」


 この柔らかい深緑色の髪をしたグラマラスな女性が、私の最後の家族である母親だ。


 名前はアネッサ。


 年齢は、見た目から推測するに、20代後半〜30代前半くらいな気がする。


 23歳だった清子との年齢差があまりなく、なんとなく()()()()とは呼びづらい。だから、心の中ではアネッサと呼ぶことにした。


 勿論、心の中以外では、きちんとお母さん呼びするつもり。

 

 けど、いつか、本心からお母さんと呼べる日がくればいいなと思う。




 話を戻して、何とこのアネッサ、驚くべきことに、魔法が使えるらしいのだ。



 ある日、沢山の睡眠と充分なミルクを飲んで、準備万端の状態で発声の練習をしていたら、私が暑がって泣いているのだと勘違いしたのだろう。


 彼女は、何か呪文を唱え、涼しくて気持ちいい風を作り出してくれた。


 その出来事がきっかけで、私は少なくとも日本ではない、魔法が存在するどこか別の場所に転生したことを知ったのだ。


 私が見たアネッサの魔法は、この心地よい風が吹く魔法だけだけど、もしかしたら他にも使える魔法があるのかもしれない。


 そして、まだ見ていないだけで、レオルやルイ、マリも使えるのかもしれない。

 

 そう考えるだけで、とてもワクワクした。



 その日から、私の関心は専ら魔法のこと。


 もし幼児である私にも魔法使えたら、格好の暇つぶしになると思ったからだ。


 そうして、引き続き家族の、主に母アネッサのことを観察しながら、どうにか私にも魔法が使えないかと日々願望が募るようになった。



 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
初めまして、失礼します・・・ 神様の願いと主人公のゆるく生きる目標が交錯する展開に惹かれました。赤ちゃんに転生した主人公が懸命に情報収集する姿や母親が魔法を使う場面にワクワクする様子が微笑ましいです笑…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ