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14 再び冒険者ギルドへ




「収納って、手で触れなくても出来るんだね!」

「そうなの。さすがに、目で見える範囲のものしかできないけどね」


 空間魔法のルールについては、自分なりには検証してみた。といっても、まだアリアンナが幼児だった頃の話なので、今思えば、誰にもそのルールを話していなかった気がする。  


「じゃあ俺を収納することもできるのか? 俺も空間に入ってみたいぞ」

「ううん。前に虫が収納できるか試したけど駄目だったから、ルイもできないと思う」

「そっかぁ」


 ルイの残念そうな顔を見て、アリアンナは「ルイを収納できるか試してみようか」と提案しようと口を開きかけて、止めた。

 ルイの許可さえあれば、収納できるか試してもいいかなと思わないでもないが、もし収納だけできて取り出しができない、なんてことになったら取返しがつかないことになってしまう。


「もしできるようになったら、一番にルイに伝えるね」

「ほんとか!」


 本当に嬉しそうに笑うルイが可愛いくて、いつか本当にルイを異空間に案内できるように、空間魔法のレベル上げを頑張ろう。目標ができたアリアンナだった。




◆◇◆◇◆




「それで、この大量な薬草はどうするの?」

 

 大量といっても、アリアンナの持つ空間に比べれば大した容量ではないけれど。

 ただいつまでも空間にいれっぱなしにしてしまうと、鮮度が落ちかねない。心配したアリアンナは、マリに尋ねた。


「あぁ。アリーは初めてだったね。これはその日のうちに売りに行くんだよ」

「あ、そういえばさっきダン君が教えてくれたっけ。冒険者ギルドと錬金術店で買い取ってもらえるんだよね?」


「そうだよ。まぁ本当はそのふたつだけじゃないけどね。それで今から行くのは、冒険者ギルド。アリーも一緒に来て!」


 そのふたつだけじゃない、と言ったマリだったが、一般的にはやはり冒険者ギルドと錬金術師の店のどちらかに売りにいくとのこと。

 他には、薬草を求めている冒険者パーティに直接売るという手もあるようだが、私達のような子どもに声がかかることはまず無いらしい。


 声が掛かるとしたら、きっと今日会ったような、荷馬車なんかの運搬手段を持っている人達なんだろうな、とアリアンナは想像した。


 ちなみに、まだ冒険者登録をしていないダン君は、普段は錬金術師のお店に持ち込んでいるのだとか。



「あれ? じゃあ冒険者登録していない私も、冒険者ギルドじゃ買い取ってもらえないってこと?」


「······そうなるね。ごめん、アリー」

「珍しくマリのうっかりが出たな」


 冒険者登録をしていないのはアリアンナも一緒だ。

 そのため、今日はまず冒険者ギルドに行って、マリとルイの分を納品し、その後、錬金術師のお店でダン君とアリアンナの分を売るということになった。



 

「ユーリさん、こんにちは」

 冒険者ギルドに到着すると、ルイが元気に挨拶した。レオルの教えを、忠実に守っているらしい。


「おおルイ君こんにちは。マリちゃんと、え~と君は確かアリアンナちゃんだったね。そして後ろの僕は初めましてかな?」


  

 対応してくれたのは、マリとルイの冒険者登録時に対応してくれた受付のお兄さん。名前はユーリさんと言うらしい。

 アリアンナが冒険者ギルドに来たのはこれで2回目だが、名前まで覚えてくれていた。


「ダンです。冒険者ギルドへの登録を目指してます」

「おぉ。それは頼もしい。ルイも友達ができて良かったな」

「う、うるせぇやい」


 照れくさそうに頬をかくルイ。


「ルイの友達ってことは、もう洗礼は終わったんでしょ? 今日登録していくか?」

「いや、まだお金が足りなくて······。今、薬草採集でコツコツ頑張っているところなので、登録料が貯まればその時はお願いします」


「なるほどな。ダン君だっけ? 君は偉いね。一応、冒険者ギルドは会員以外からでも薬草買い取れるから、何かあれば相談してよ」

「はい! ありがとうございます!!」


 憧れ? の冒険者ギルドの職員に励まされてか、嬉しそうなダン君。

 

 ······じゃなくて、今ユーリさんなんて言ってた? 

 冒険者ギルドは、会員以外からでも薬草買い取れるって?


「ん? じゃあ私も買い取ってもらえるってこと?」

「そうなるね」


「······ごめんアリー」


 さきほどから二転三転しているが、登録していなくても買い取ってもらえるのであれば、ダン君の分もアリーの分も含めて、全部ギルドにおろそうということになった。この後錬金術師のお店をはしごするのも大変だしね。



「アリー。薬草だせるか?」


 ルイの問いかけに、少し困った顔をするアリアンナ。周囲を見渡すと、数組の冒険者パーティが受付や掲示板付近でたむろっている。


 この村で、アリーが空間魔法を使えることを知らないものはもういないだろう。

 人口五百人程の小さな村だから、噂が回るのは早い。それこそ音速だ。


 でも、アリーの持つ空間の大きさを知るものは、アリアンナ以外にはいない。

 

 この村の人を疑うわけではないが、もしアリアンナの空間魔法が薬草採集に使えると知れば、悪いことを考える人もいるかもしれない。

 だからこそ、アリアンナはこれまで、自身の空間の大きさを小さめに申告してきた。


「出せる。けど、ここじゃちょっと」


 そんなアリーのわずかな表情の変化に気づいたのは、ユーリさん。

 膝を曲げ、アリアンナと目線を合わせてこういった。


「あぁ。アリアンナちゃんは、愛し子(そう)だったね。じゃあ奥の部屋を案内するよ」


 

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