プロローグ
「おぎゃー?おぎゃー?」
今この時、ワシの管理下にある世界に、ある1人の女の子が誕生日した。
名前はアリアンナ。
両親と同じ、グレーの瞳をした子じゃ。
きっと将来は、母親に似た美人に育つことじゃろう。
そして、このアリアンナ。またの名を豊田清子といった。
清子というのは、彼女の前世での名前だ。
彼女は、本当にかわいそうな子じゃった。
真面目な良い子だったにも関わらず、高校卒業後に始めた仕事で無理をして、身体を壊し、20代のうちに天界に来ようとしよった。
だが、わしはそれを拒否した。
来世でも人として生を受けられるのかは、わしにも分からんからな。
だから、彼女に一度でも、幸せな人生を体験させてあげたいと思ったのじゃ。
驕った考えかのう。
でも、彼女には、幸せになってほしい。そう思わせる何かがあったんじゃから、仕方ないのう。
清子を気に入ったわしは、わしの持つある権限を、ここで使用することにした。
300年に1 度、世界の発展のために行う、異世界人の転生。
今回の300年間での転生者を、清子に決めたのじゃ。
他の神からは、もっと知識や才能がある子を選んだ方がいいと言われたが、わしの気持ちは変わらんかった。
それに、清子ならきっと世界の発展に貢献してくれるという確かな自信もあった。
清子がこれから転生する世界は、いわゆる剣と魔法の世界じゃ。
危険生物である魔物なんかがうじゃうじゃ存在するうえに、文化レベルだって、はっきり言って、彼女が元いた世界よりも数段劣る。
しかし、その代わりに、魔法という技術ではどうにもできないことを可能にする手段がある。
なかなか厳しい世界だが、清子ならきっと上手くやってくれるだろう。
ただ、さすがに、ポーンと放り出すのは酷すぎるか?
そうじゃ。新たな人生の門出として、彼女に何か祝福を送ろう。
人生を楽しめるような、そんな祝福。
さて、何をしたら喜んでくれるだろうか。
思い出してみよう。前世での彼女を。
あぁそうだ。そういえば、彼女は、実に綺麗好きだった。
暇な時間があれば、掃除をしたり、部屋の整理整頓をしていたのう。
なんでも器用にこなす子じゃったが、中でも、収納テクニックには、目を見張るものがあった。
見せる収納、スペースを有効利用する収納、何でもござれといった感じだった。
関連の資格も取っていたし、もしかして本当は、その道の仕事に就きたかったのではなかろうか。
よし、決まりだ。今世では、空間魔法が使えるようにしておこう。
きっと新たな人生で、役立つ日が来るじゃろう。
おっと、どうやら時間がきたみたいじゃ。
これ以上、わしが清子の助けになることはできなさそうじゃ。
後は、清子の新しい人生が、より良いものになるよう祈りつつ、清子······、いや、アリアンナの活躍を、空から見守ることにしようかの。




