死後さばきにあう〜とある田舎の変な看板の噂〜
加奈子は一見、優等生。高校生になってからは学級委員や生徒会もこなし、親や教師からも信頼されていた。
「ま、バレ無いよね……」
そんな優等生の加奈子だが、秘密があった。それは万引き常習犯である事だった。今日も放課後、書店へ行き、コミックスや参考書をカバンに入れ、走って逃げた。
見た目も田舎の女子高生らしく芋臭い加奈子だったが、内面は全く違う。クラスの陽キャも嫌いだし、自分より成績が良い者がいるのもストレスを感じる。受験のプレッシャーもしんどい。その発散として万引きを始めてしまった。
「ここまで走ったら、もうバレないはず」
田舎の田んぼ道に入り、加奈子は後ろを振り返る。追って来るものは無く、ホッとした。万引きしたものはフリマアプリで転売し、証拠隠滅するつもり。ストレス解消で始めた事だが、小遣い稼ぎにもなった。嫌な中毒性もあり、辞められない。
「何、この変な看板」
そんな時、田んぼには黒白デザインの変な看板が出ているのに気づく。ホラー風のフォントで「死後さばきにあう 聖書」と書いてあった。夕陽に照らされ、黒光りしていたが。
「は? 宗教きっも〜。聖書なんてファンタジーで神話じゃん。よく真面目に信じてるやつがいるよなぁ」
加奈子はこの変な看板を蹴った。思いの外力が入り、看板に傷が出来たが、無視して家に帰った。前にも蹴られたのか、少し凹んでいたので全く罪悪感も無かった。
翌日、学校であの変な看板の噂を聞いた。あの変な看板を蹴ったクラスメイトが怪我をし、今は病院に運ばれているという。噂では本当に死後さばきにあい、地獄に堕ちるとか。
「ま、まさか〜」
加奈子は笑っていたが、冷や汗も出て来た。元より万引きをしていた為、少しはその罪悪感もあり、気にしないようにしていても、あの変な看板を思い出してしまう。
「死後さばきにあう」
「神を畏れ敬え」
「神への態度を悔い改めよ」
「世の終わりは突然にくる」
「神は心を見る」
「世を正しくさばく」
「キリストは墓からよみがえった」
「私生活も神が見てる」
その上、悪夢も見た。あの変な看板に追い立てられる悪夢を見てしまい、加奈子は罪悪感に耐えられなくなった。
今まで万引きを警察に全て話しに行く事にした。これで優等生の地位は終わる。退学にもなるだろうが、なぜかもう悪い事をするのは怖くなってきた。加奈子にも良心というものがあったらしい。
「まさか、本当に神が見てる? いや、まさかね……」
その途中にまたあの変な看板を見た。「罪を悔い改めなさい」と書いてあった。もう逃げる事は不可能らしい。
この噂が本当かどうかは知らないが、とりあえず、死後さばきにあう前にやる事はありそうだ。