表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

短編小説

散る

作者: 雨宮雨霧
掲載日:2024/07/29

残酷な描写があります。苦手な方はページを閉じてください。

「おねえちゃん!」

「おねーちゃん?」

「おねえちゃん〜!」


行かないで、私の姫。

ずっと私のそばに居て―


目が覚めると白い天井が見えた。

いつのまにか寝てしまっていたらしい。


「はぁ、なんでこんな夢…もうあの子は居ないのに。」


私の妹、姫夏(ひめか)は4年前に死んだ。

まだ10歳だった。

私とは7つ歳が離れていて、それはもうかわいい妹だった。


姫夏は交通事故でこの世を去った。

飲酒運転のひき逃げで。

事故があったのは下校時間で、不幸なことに姫夏以外にも撥ねられた子が居た。

その子は姫夏の友達。

重度の障害が残ってしまったと聞いた。

何の罪もない子が殺されてしまった。

私のかわいい妹はもう二度と帰ってこない。

仏壇で微笑む彼女はもう二度と喋ってくれない。


重い身体を起こす。


「もう死んでいいかな。あの子の元へ行ったほうがきっと幸せなのに。」


カウンセリングを受けても、心の傷は癒えない。

薬を飲んでも、霊安室のあの光景が目に浮かぶ。

姫夏の葬儀が終わったあと、私は身投げをした。

そのせいで右腕が麻痺して動かなくなった。

バカバカしい人生が本当に嫌だ。


仏壇の前に座り、遺影を見つめる。

あの頃はどれだけ幸せだっただろう。

あの頃に戻れたらいいのに。

気付けば涙が溢れてきた。

弱いお姉ちゃんでごめんね。

守れなくてごめんね。


インターホンが鳴り、玄関ドアが開く音がした。


「零夏〜、今日はどう?」

「…」

「今日も暑いね。」


彼女は詩山奏。

高校の時の友達だ。

事故以来、学校にも行けなくなった私の元へわざわざ来てくれている。

有り難いが、もういいのに。そう思ってしまう。


「零夏、パン置いてくから食べれたら食べてね。」


パンを置いて、奏はバイトに行った。

ごめんなさい。

私、今日で終わります。


震える手でパンの袋をこじ開け、3日ぶりに食事を摂る。

美味しいかも分からない。

ただ無心で食べていく。

ゴミを床に放り、その場に寝転ぶ。

白い天井。無機質。

ごめんなさい。


昼下がりになり、身体を起こす。

姫夏の遺影を手に取り家を飛び出した。

これで終わり。終わりなんだ。


ボサボサの髪、汚い身。

道行く人はきっと私をゴミだと思うだろう。

それでいい。

もうそれでいいから。


遠くで響き渡る踏切の警報の音。

それも聞こえないくらい無我夢中に走る。

雨の降る街を走って、踏切の中へ入った。

線路を少し歩いて、横たわって。

雨が身体を濡らしていく。

姫夏、今行くからね。


警報が鳴り始め、遮断器が降りる。

電車の走る音が身体に響いてくる。

怖い。だけどいきたい。


轟音と汽笛が鳴り響き、私は散った。

遺影は粉々に。私はバラバラに。


これでよかった。

姫夏、これでずっと一緒だね。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ