第2話 最近のアマズン龍神界事情
真太とイヅはアビが居なくなると、急いで家に帰り、アボパパに報告である。
「パパ。今、アビって奴に会ったよ。すごくアホだった。俺よりアホな龍には初めて会ったな。俺、あいつよりはましだと思う。少し感動した。あいつ、イヅの首を絞めて、いかれた奴だったよ」
「なんだと、あいつめこの辺をうろつきだしたのか。困ったな。龍には、今のママの結界は効かないし。もっと強力にしてほしいな。直ぐママに連絡しよう」
アボパパは、いつもよりもっと気難しい顔になった。
「明日からパパが迎えに行こう。パパが来るまで学校に居ろよ。先に、千佳由佳を家に連れ帰ってからにするからな」
すると、イヅが、
「ぼくらちゃんとじぶんでかえれるよね、しんた。もうおおきいんだし」
と、強気の発言をした。真太は少し笑いたくなったが、それでも、
「そうだね、イヅ。パパ、俺等は自分の面倒は自分で見るよ」
「いやいや、あの出来損ないには出来損ないの仲間が居て、始末が悪い。次は一匹では来ないかもしれない。おそらく、代替わりが近いと噂が立ちだしたから、行動を起こしてきたんだろう。パパも気になっていたんだ。龍だからシン達はタッチしないし、パパ達生きている者だけで対処しなければならない。アバは、出来が悪い奴でも身内だから、手出しするわけにはいかず、自分らの所の縄張りの保持で手一杯だからな。こうなると分かっていたから、イダはミミちゃんを引き取らなかったんだ。最近、事情がパパにも分かった所なんだ」
「ふうん、さっき、ミミちゃんの喉を締め上げたから俺が止めたけど、アバの縄張りでも似たような事をしていたの。だとしたら、イダがしつけ直す訳?アバは手出し出来ないんだろ」
「そこがややこしいんだよ。イダはアバの手下だからな。あいつもアビに手出しできない。制裁を加えることが出来るのは、アバより年上の老龍神だけだが、老衰気味とかボケ気味の老龍しかいなくてね」
「パパはどうなの」
「あは、パパは生憎ママと結婚しちゃってて、あのグループからは抜けたんだ。部外者だからね。パパの身内の安全しか守る立場じゃないんだ。とにかく龍神同士では争いは許されない」
「許されないって言うのは、大神様から許されないって事だよね。大神様はアビの事はどう思っているのかな。あいつこそ許されないんじゃないの」
「それがね、アビは昔、魔王から食われそうになって、自力で逃げて、ずっと北の魔女に匿われていたと分かった。最近の事だがね。そして、そっちの国で人間風に商売かなんかで大儲けして、人間界の会社の社長だそうだ。大神様が哀れに思召して、何かと目を掛けていたらしい結果だな。その会社に親と逸れた龍の子が集まり出し、龍神としての理無しの育ち方の龍がたむろし始めて居る。アビはそのトップだ」
「なんだか、大神様お気に入りって言っているように聞こえるけど、それなら大神様が責任取って何とかするんじゃないの。と言うか、何とかしてもらわないと皆困るのと違う?」
「真太は怖いものなしだな。不敬罪になりそうだな」
真太はアボパパにそう言われても、何だか納得が行かなかった。するとパパは、
「行方不明の龍神の子を探して、連れ戻さなかった責任のつけが、今巡って来たと言う事だな」
「へえ、そうなんだ。皆、放って置いたのか。そりゃ、不味いことしていたんだな。じゃあ、パパは俺らの守りをしながら、様子見って事なんだな。それって、パパは地獄の毒で参っていた間の話なんだろ。そうで無けりゃ、そんな龍の子はパパが探していた筈だよね」
「そう言う事だな。俺は自分の事で精いっぱいだったから、子供を探しには行けなかった。そうだとしても、他の奴に探しに行くべきだと忠告すべきだった件は、何とも言えないけど」
「ふうん、忠告して居れば、完全にパスだったのにね」
大体の事情を理解した真太であるが、何だかややこしい事になっているなと思う。それにしても、あのアホのアビが、アマズンの龍神のトップになるのは、いささか不味いだろうと思えた。
そこへ、香奈ママが慌てて戻って来た。パパはママとはテレパシーで連絡できるらしい。少しは回復してきたのだろうか。
「ただいま、ミミちゃんひどい目に合ったんだって。そいつが出入りできないようにしなくちゃ」
と言いながら、何か念じている感じのママである。
「他の子の結界も補強しておいたわ」
「香奈、いつもすまないね」
何時に無く、パパは香奈ママにお礼なんか言い出した。
「どうしたのよ、水くさい」
ママは眉をひそめてパパを見つめた。真太も少し心配になる。
ママは、
「あまり良い人風にならないでね。柄にもない事言い出したら、先が短いのかと誤解しちゃう」
真太は、
「シンは後百年ぐらいだろうと言っていたよ」
ママの心配を消してやりたかったが、パパは、
「それは、長く見積もってと言っていなかったか」
と凄味を出して言い出すので、かえって不味くなった。ママは涙ぐんだ。それで、パパは慌てて、
「ごめん、ごめん、パパは長生きを頑張るからね。きっとママと同じころさ」
と誤魔化し、ママの機嫌は直ったように見えたが、真太は、あえてパパが真太の言う事を打ち消したのだから、そう言う事なのだと察した。
ミミちゃんがリビングのテーブルに宿題を広げだしたので、ママは、
「ミミちゃんお利口ね、真太も宿題から始めるのよ。テレビは後よ」
といつものように話し出したので、真太もいつもの様な態度でいようと思った。
「ちぇっ」
と言いながら、小声でミミちゃんに、
「今のは、良い取り成しだったな」
と言っておいた。
あのアホのアビが不味い動きをし出して、パパがアバの所に助太刀に行って無理をしたら、それこそ寿命が縮まってしまう。その前に真太が何とかしなくてはならないと思った。
真太は自分で言うのもなんだが、大神様は子供のする事は大目に見てくれるのではないだろうか、と思った。
イヅは真太を見て、口パクで、
『ぼくもあてにしていいよ。いまにもっとつよくなるし』
と言うが、さっきのやられ方を思い出した真太は、当てに出来るのかなと疑問を感じるのだった。




