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エレベーターベット

作者: Hora

僕は小学2年生。団地の5階に住んでいます。赤ん坊の頃にこの団地に引っ越して来ました。

「団地にエレベーターがあるのは珍しいから」

という理由でお父さんが入居を決めたんだって。

小さい頃はジャンプしないとエレベーターの⑤のボタンが押せなかったけど、今では背伸びしなくても押せるようになりました。そのエレベーター内でさっき不思議な事がありました。


いつものように学校から帰ってきた僕はエレベーターで⑤のボタンを押しました。ドアが閉まり、

ガタン…ヴゥゥゥゥーーーン

と上がっていきます。すると外が見える窓のところが白くなり見えなくなります。そしてエレベーターがいつもなら10秒かからないぐらいで5階に着くのに、もう20秒ぐらい上がり続けています。

「今日はエレベーター遅いのかな?」

と思っていたら近くから声が聞こえてきました。

「うわぁぁぁぁぁ!凄ぉぉぉぉい!!!本当にぃぃ!???」

よく分からないけど何かに感動していてテンションが高い男性の声でした。

「君、凄いよぉぉぉぉ!!こんなこと本当にあるんだぁぁぁ!!」

何だかよく分からないけど怖い感じでは無かったので返事してみることにしました。依然(いぜん)エレベーターは上昇し続けています。

「お兄さん誰?どこにいるの?何にそんなに感動しているの?」

「あぁぁぁ。おっと、ごめんね!君を放っておいて勝手に盛り上がってしまって。」

「ううん。僕なら大丈夫。」

「ありがとうね。私は君からは見えないだろうけどここにいるよ。お化けじゃないよ。うーん…宇宙人だと思ってくれて良いよ。」

「へー。宇宙人さんには初めて会ったよ。お父さんも宇宙人はいるって言ってたから今度紹介したいな。」

「はは。宇宙人では無いんだけどね。」

「え?宇宙人じゃないの?じゃお父さんは嘘を()いていたの?」

「いや!宇宙人はいるよ!ごめんごめん。紛らわしくなっちゃった。とにかく、今エレベーターがどうなってるかの説明をさせてよ。説明しても良い?」

「うん。いいよ。」

「ありがとう。君が今エレベーターの⑤のボタンを押したのが最後の奇跡だったんだ。最近、えっと、人間ではない私達の間で賭け事が流行っていてね。人間が作ったエレベーターのボタン。どこのボタンを・いつ・だれが押すかの向こう10年間をすべて当てるというゲームをしていたんだ。」

「…それは楽しいの?」

「はは。坊やには賭け事の楽しさはまだ分からないだろうね。私はこの10年間、心臓バックバクだったのさ。坊やはまだ学校で習っていないだろうけど分かるかな?確率。確率で言えばもう0だからね。どこのボタンは①~⑤、開ける、閉めるの7択だけど、いつという項目は誤差0.5秒だし、誰がという項目は年齢と性別を当てないといけないからね。猿にタイプライターを渡して一言一句間違えずにシェークスピアのハムレット13万2680文字を書き上げるような確率だよ。」

「ふーん。何か凄いね。僕には難しくて分からないや。」

「………。まぁ。とにかく私はもちろん、君にも素晴らしい副賞が与えられるんだ。なんとなんと!今から1日の間、私達の生活している世界に招待してあげられるよ。あちらの世界ではエレベット初めての当選が出たってことでお祭り騒ぎさ。私は人生1000回分でも使いきれない程お金をもらえるから、この世界に無いものを何でもいくらでも君に買ってあげるよ。」

「ううん。僕行かない。」

「え、えっと?何で?」

「だって、知らない人にはついていっちゃダメって言われてるから。」

「あ~~……。そうかぁ…。でもなぁ~。是非君には一緒に来て欲しいんだけどなぁ。ダメかな~?お父さんとお母さんにもすっごく喜んでもらえるお土産を沢山持って帰っていいからさぁ。」

「ううん。家に帰る。」

「…」

そして、エレベーターは上昇を辞め止まり、今度は下降を始めました。

「そっか。喜んでもらえるかなと思ってたから、すっごく。すぅ~~っごく残念だけど、強制はできないよね。ごめんね。実はもう連れて行く前提で操作してたけど、やっぱりエレベーターは戻すよ。」

「うん。こっちこそごめん。でも僕はお父さんとお母さんといるのが幸せだから今のままがいいの。」

「そうだよね。君の事はこれからも私の救世主でありヒーローとして応援してるから。これからも幸せにね。」

そしてエレベーターの扉が5階の位置で開きます。

「うん。じゃあね。お兄さん。」


僕はエレベーターから出て駆け出します。自分家(じぶんち)の玄関を勢いよく開けて、

「たっだいま~っ!お母さ~ん!」

「おかえり。あらあら今日はいつもより元気いっぱいね。」

「あのね。あのね。今日ね。給食で余った冷凍みかんのじゃんけんでね。10人もいたんだけど初めて僕じゃんけんに勝ったんだよ!」

「うふふふ。良かったわね。ずっと余り物のじゃんけんで負け続けてたものね。」


僕が早く帰りたかった本当の理由はこの話をいち早くお母さんにしたかったからです。

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