能力を解明します
「スウは本当に可愛いな」
「ええ。本当にしかも賢い」
「ああ。本当に」
可愛がられています。凄く。物凄く。これはこのご夫婦子供ができたら、外部から指導を入れてもらった方がいいと思う所まで来てしまっています。目的が達成したら、伝達事項としましょう。
優秀なお二人なのは一応、理解しました。父を含めた晩餐の席で説明を受けたのです。おやつ頃に着いて、この世界は時間も単位も一緒なのですが、こちらのお屋敷ではあまりおやつを食べることはないみたいです。残念。今まではご夫婦だけでしたから、そういう習慣はなかったようです。
「スウと呼んでもいいかな」
「はい」
「こんなに小さいのに受け答えもしっかりしていて素晴らしい」
「私もスウと呼ばせてもらおう」
「はい」
「いや、スウを称賛するだけで晩餐が終わってしまうほどだな」
「ああ。まったくだ。でも、そういう訳にはいくまい」
「確かに。ラック殿もお聞きになりたいだろうしな」
「え?失礼ながら、もう娘のスウの能力の分析ができたのですか?」
「ああ。かなり難しかったが、予測はたった」
「ソタンとも協議しあったからそれほど大きくは外れないと思う」
父がようやく口を挟めましたよ。それにしても、ソタンさん、キイトさんご夫婦は流れるように、淀みなくかつ止まらずに誉め続けることができるようですよ。嬉しくて照れるというよりも、言葉の奔流を浴び続けるので精一杯という感想しか抱けません。このお二人の職場はこれだけの能力がいるのでしょうか。え、怖い。
「スウの能力は人が使用する魔力を無効化しているようだ」
「人が?」
「ああ。注目すべき点は魔道具が使えることだ」
「そう。使えて助かったというべきか。そうでなければ、我々も解析は難しかった。何せ、我々が魔力を使用しようとしてもできなかったのだからね」
「お二人でも難しかったのですか!」
私はそもそもの知識がないので、ただ聞いているだけですがソタンさんとキイトさんはとても魔力を使用するのが上手いようですね。これが通常使用しているという意味なのか、魔力の量なのか質なのかさっぱりですが。まあ、続きを父の相槌を挟みつつ聞きましょう。
「推測だが、魔力自体を動かせなかったと思うのだ」
「私も、魔力が減っている感覚は無かったように思う。魔力を使用できないので、その後の現象が起きなかった。そのため、スウは人が魔力を使用しようとする意思の動きを止めているか、無効化しているのだと思う。意思に対してだ」
「では、魔道具は?」
「魔道具は魔力を使うが、自身の魔力を使用しようとする意志はない。魔道具に貯めてある魔力を使うという意思を持って、魔道具を使ってみたがそれであれば使えたのだ」
「んん?」
「一応、意思とは言っているがそれがそもそも魔力なのか、他の何かなのかは分らないが、魔力を使おうとする前段階で止められているようなのだ」
「分かったような。分らないような・・・」
父よ。確かに。
「我々も正式に研究した訳ではないので、結論と言っても大袈裟だが、魔道具は使える。だが、人はこの家の範囲くらいで魔力を使えない状態になる」
「そうですか」
「様々な、魔力と魔道具を使ってみた結果だ」
「ありがとうございます。それで、これから気を付けることはありますでしょうか」
「今はそう認識する以外にはないな」
「周知させるにしても、もう少し要因を探るべきだと感じるな。年齢とともにどうなっていくかも分らんので、範囲にいるものの共通認識とする以外に無いな」
「分かりました。こんな短時間にも関わらずどうもありがとうございます」
「いや。こちらこそ、協力し頂いている身だ」
「ああ。不明点が多くて申し訳ないが」
とりあえず私は、魔法は目にできない。でも、魔道具は使える。魔道具が使えるだけでも良かったなー。水回り系全滅するところだったよ。移動とかもね。良かった、良かった。
はあ、魔法は遠目からなら見ることだけはできるのかな。あるか分からないけど派手なのだったら、距離があっても見られるかも。それも勉強だな。
あれ?私自身はやっぱり魔法を使えないのかな。その結論はまだだよね。私が周りに与える影響は、理解したけれども。
「はい。私、自身は魔法を使えますか?」
しっかり手を挙げて質問したよ。
ああ~。皆から凄く温かい目で見られたよ。全方向から。ケリーもね。ケリーもいるよ。ずっと一緒だよ。口を開いていないけど。
皆さんの反応で分かりました。
「難しいね」
「かなりね」
「スウ・・・」
ケリーは口を開かなかったけど、ソタンさん、キイトさん、父の順番でした。無理とは言わない優しさが刺さるね。