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西の街へ

 皆が、一時的に魔法を使えなくなっても気にしていないということで、街を散策せてもらうことにしました。お買い物もできるかな。!お金ない。お小遣いとかあるのかな。商人さんに借りるのはちょっと怖いけど、欲しいものがあったら借金させてもらおう。本当は、現金払いが好きなのだけど。


「おう。頭領、珍しいな陸にいるのか!」

「おうよ」

「本当に珍しい。歩けたのか!」

「歩くくらいできるわっ」


 車からおりて街を歩き始めるとひっきりなしに声をかけられますよ。そこかしこと凄いな。あまりにも人が集まってきてしまうので、抱き上げてくれました。私は楽ちんだけど・・・。


「重くないですか?」

「スウ、お前何歳だ?」

「え?5歳くらい?」

「は?自分の歳を知らないのか?」

「はい。知りませんねー」

「おい」


 少し怒ったような、落ち込んでいるような様子でシウキアードさんがケリーに声を掛けました。言葉も、一応、さっきまでは気を使ってくれていたのですね。こっちの方があっているし、話しやすいのが一番です。


「スウ様はあとひと月で5歳になられます」

「ってことは、誕生日もいつか知らないのか」

「はい」

「六月十日にお生まれです」

「流石、ケリー!」


 私の感嘆の声と、シウキアードさんの溜息が重なりました。


「?」

「いや。あんたら二人に言っても仕方がないか、なんだかな。ケリーは何の名目でスウに付いているんだ?」

「養育係でございます」

「ああ。俺にはかしこまった口調じゃなくていいんだが、じゃあ、スウの教育は?」

「スウ様はまだ五歳前でいらっしゃいますので、教育はまだ。それに、それほど必要としないかと。御自身で学ばれていますから。また、口調は御容赦下さい」

「そっか」

「私は誕生日が分かって良かったです」

「それは良かったが、祝われてはいないんだろう?」

「お祝いもあるんですか!」


 納得していない様子のシウキアードさんに対して、ケリーが沈痛な面持ちで視線を下げます。


「ケリー、気にしていないから大丈夫。ケリーを付けてもらうことが、もうお祝いしてもらって、贈り物を受け取り続けているようなものだから」


 本当に。ケリーには助けてもらってばっかりで。動きや体調、心も。ケリーのこの凪いだような雰囲気のお陰で、心、穏やかにいられますからね。


「両想いならいいけどよ」

「はい。それで、魔法も使えないから重いでしょうし、もうそろそろ大丈夫じゃないですか?」

「はあ。魔法使わなきゃ、抱えていられないような柔な鍛えかたしてねえよ。それに、スウが重いって、ないだろう。歳にしちゃあ、小さめだろう?」

「はい」


 ケリー、そうなの?まあ、小さい方が可愛いよ。そんな訳でそのままの移動となりました。


「シウ!産んだのか?」

「産んでねえよ。俺は産めねえよ」

「それより、なんかあったのか?お前が水なしで陸を歩くなんて!!」

「本当だ。驚いたぜ」

「俺もだ、耄碌したかと思ったぜ」


 よく日に焼けた幅広い層のお兄さんたちがわんさかと押し寄せ、話しかけてきます。あっという間に囲まれて、囲いごと移動しているようです。これ、お店に入れますかね?


「ああ。こまかいことは後日だ。今日は可愛い子と買い物だ。邪魔するな」

「!!!」

「可愛いとか言ったぞ」

「どの口で?」

「あの口か」

「おいおい。まじか」

「やべー。ちっこい子が好きだったのか」

「おら、そこ!」


 集まってきた人たちをにらみまわして、動きを止めると、手を一振りで解散となった。え?これ練習していたの?何かの合図かな。


「わりいな。ここは皆うちの従業員みたいなもんだからよ」

「え?この街はみな、シウキアードさんが雇っているの?」

「ここは商売の街だからな、俺が商会長で、とりまとめているから、スウが街歩きできるってことだ。商人の町は大体が、金で解決できる」

「おお。でも、お高かかったんじゃ」

「はは。実際に金は動いてねーから安心しろ」


 説得力がある。そういう訳か。街歩きできるのは有り難いし、懐が痛んでいないのなら、遠慮なく。楽しみましょう。

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