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西へ

 自分の家よりもある程度距離がある他の家の方が落ち着くというか、心が波立たなくていいですね。両親との距離は以前からあったのですが、一緒にいなかったことでさらに開くということもなかったことが、引っかかっているのでしょうか。多分、私が子供としての立ち位置なんてものを考えてしまうからでしょう。難しいことを考えずに大人同士で付き合えるほどまで成長してしまった方が、お互い楽かもしれません。それならば、子宝を授ける幸運のお守りとしてあちこちへ行きますよ。そうして自分の特性を活かし、将来の仕事についても考えましょう。


「スウ・・・」

「次はどちらへ?」


 父がすまなそうにする前に、聞いてみました。父はぐっと口を引き絞ると続けました。母はもう説明の場にも一緒にいられないほどに、申し訳ないと思ってくれているようです。そんなものですかね。


「西へ向かうよ。大きな商売をしているお家だそうだよ」

「はい」


 初めにお邪魔したのが中央で、家とそんなに離れていなかったそうです。次は交易が盛んで水運が発展している西に向かうそうです。勿論、ケリーも一緒です。


「ラック殿。初めまして。シウキアードだ。そして、妻の」

「モーリカハイと申しますわ」


 今度は海賊っぽいシウキアードさんと、お嬢様風なモーリカハイさんのお家です。お店と家が一体化した建物です。お店に住んでいるというよりも、商業ビルに住んでいるという感じに近いでしょうか。三階建ての建物とのことです。


「スウ。今回は晩餐も一緒にできなくなってしまった」

「はい。お父さん。いってらっしゃい」

「・・・スウ」


 まあ、仕方がないですよね。シウキアードさんとモーリカハイさんも申し訳なさそうに眉を下げています。大丈夫。中身は大人ですから。それに、家にいた時も晩御飯を一緒に食べることは少なかったですし。


「スウ。ようこそ。君の特性を期待させてもらっている。その見返りと言ってはなんだか、商売の基本や、商品について遠慮なく聞いてくれ」

「ええ。折角、来て下さったのですから、お口にあえば、海の幸も楽しんで、お舟にも乗ってみて下さいな」

「はい。ありがとうございます」


 流石、商売人のご夫婦です。海の幸は楽しみですし、魔道具について更に詳しく知れそうです。流通や社会情勢とかも学んだ方がいいかなー。きっと、こちらのご夫婦はそういう情報も押さえてますね。

 そんな、こんなで生活の面倒を見てもらいつつ、今日は近くの街を見て回るのに連れてきてもらっています。私とケリーだけ。モーリカハイさんとは一緒にいなくていいのかな?何か実験かなー。ソタンさんとキイトさんも可愛がってくれつつ、色々探ってくれていたみたいだし、今はお守りだから、大人にお任せしちゃいましょう。


「スウ。この車を家だと思って暫くくつろいでくれ」

「?はい。でも、私が外出して大丈夫なのですか?」


 確かに、父の車よりも空間が広くてくつろげそうな車です。靴を脱いで寝転がれますからね。街を見て回れるなんて楽しみです。でも、心配は周りの人が急に魔法を使えなくなったら、危険じゃないかってことですよ。


「ああ。それも含めての実験だ。本当に、賢いんだな。じゃあ、言わないのもあれか。なるべく魔法を使わないというか、抑える気持ちでいてくれるか?」

「やってはみますが・・・」

「重いものを魔法で持ち上げていたりして、急に魔法が切れると危ないからな。今日は街の皆には魔道具を使うように言ってはあるが」

「ご迷惑をお掛けしています」

「いや。皆、面白がっているから構わないさ」

「それならいいのですが」

「なかなか体験できないからなー。商人は新しいことに貪欲なのさ。何が得になるのか、全ては表裏一体だ」

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