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テラスに着いた私達は夜風に当たりながら、ふうと一息を吐く。少し喉が渇いたなぁと思いながらも、この場所から離れるのがおしくて、留まってしまう。
そんな私に気付いていたように、グラスを二つ手にし、戻ってくるリオンの姿が目に入った。
「何処に行ったのかと思ったわ。自分から誘っておいて、逃げたのかと勘違いしちゃったじゃない」
「そんな事しませんよ、僕は」
「……知ってる」
さっきまでリオンに翻弄されていた私はもういない。
「どちらがいいですか?」
にっこりと微笑みながら目線をグラスに落とす。別々の飲み物を持ってきたようだ。一つは綺麗なブルー、もう一つは情熱のレッド。
私の好みは「ブルー」だ。まるで海を表現しているような美しさに惹かれてしまう。だからそっと、ブルーの色のカクテルに手を伸ばした。
「こちらがいいわ」
「では」
「ありがとう」
レッドのカクテルはリオンの髪色とよく似あっている。私はそんな事を考えながら、コクリと乾ききった喉を潤していく。見た目はドロッとしているのに、アッサリとした口当たり。見た目との違いに驚いてしまうけど。これはこれで素敵。
「同じ種類のものにしてもよかったのですが。シャデリーゼ様が好きそうなカクテルだと思ったので、違う種類をお持ちしてよかったです」
「まるで、私の好みを知っているって言い方ね?」
「ま……まぁ」
「誰から聞いてきたのかしらね」
ほんのりと顔が赤く染まっていくリオン。私は意地悪がしたくて、指摘してみたけど「お酒のせいです」と交わされてしまった。
「そういう事にしておきましょうか」