快楽と歪む人間
リオンと一緒にいる事になるなんて考えもしなかった。この年齢になって『人を好きになる』事を突きつけられるなんて、誰も思わないでしょう?
私が一番、そう実感している。そんな事を考えていると、ベッドの上で座る私の頬に手を伸ばし、見つめてきた。
「何を考えているのですか? 僕の事しか考えられないようにしてほしい?」
「なっ」
リオンの言葉はまだ若いのに色気を放ちながら、瞳の奥が光っている。まるで獲物を狙う猛獣のような鋭さ。今なら逃げ出す事が出来る。防衛本能と言うのだろうか、逃げ出したくなる。恐怖心を感じてしまうのに、身体はそれを求めていない。
動く事が出来ない──フリーズしている私。
「可愛いですね。本当に貴女って人は……」
ため息交じりで言葉を放つと、スッと瞼にキスを落としてくる。次第に深くなっていく事に恥ずかしさを感じて、変な声が出てしまう。そんな非現実的な自分を肯定出来ずに、流されてしまう私がいる。
大人の振りをしても、彼には敵わない。自分の中で勝ち負けをつけている気なんてなかったけど、どうしても悔しくて、今の表情を見られたくない一心で顔を隠す。
「隠さないで、僕にもっと見せて」
リオンは私の手を軽く握ると、素の私を、心を直視しようとしてきている。いつもじゃじゃ馬で、気が強い、それが私だったはずなのに、こんな『女』の顔を見せてしまう自分が悔しくて、もどかしくて仕方ない。
「リオ……っ」
続きの言葉を塞ぐように、深く口づけられる。んん、と子供の泣き声のような声を止める事が出来ない、止め方が分からない。
そうやって私とリオンは二人の快楽の世界へと堕ちていく……