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ミシャの心

 ねぇ、あの時の事覚えてる?──


 あたしは貴方の事が大嫌いだった。理由はどんくさいから。いつもあたしの後ろを追いかけてきては、転ぶの繰り返しで、何度振り返って、駆け寄ったか消してしまいたいくらい、心の中に想い出として残っている。


 『嫌い』は『好き』の反対でありイコールなの。

 いつの間にかそんな貴方の事を可愛いと感じるようになった。男の子らしくない貴方と触れ合う度に、優しさが満ちていく感覚がした。


 心が満たされるって言うのかな?


 あたしより年上の貴方の名前は『リオン』

 年齢を重ねれば、重ねる程、彼は大人になり、たくましくもあり美しい男性へと変貌を遂げていく。あたしは昔と何も変わらない、悪く言えば変化がないのかもしれない。人の見方によれば『安心』に結び付くものかもしれない。


 他の女性の影なんて、見えなかった。特別はあたしだけ。他の女性はあたしの立場を超える事なんてないと過信していた……今、考えると幼稚な考え方だったのかもしれない。


 今のあたしはクロウの膝の上で眠っている。暴走なんてしたくなかった。迷惑かけたくなかったのに、どうしても止めれなかった。クロウはこんな情けないあたしでさえも受け入れてくれる人。私とは血が繋がっていない事も、幼少の頃、お父様とお母様の話を盗み聞きしていたあたしは、その事実を聞いて、泣きそうになったのを覚えている。


 「……あたしは一人ぼっち」


 両親もあたしと血の繋がりがない、身近な存在であたしの心を守ってくれているクロウでさえ、他人なのだから、ショックが隠せなかった。一人だけの空間に置き去りにされた感じに、絶望を感じてしまった。


 「もう期待なんてしない」


 そう決めていたはずなのに、リオンの存在があたしの心を癒したの。だから、もう一度『信じて』もいいかもしれないと、淡い気持ちを抱いていた。


 あたしはクロウの膝の上で一筋の雫を零した。

 疲れて、寝てしまったあたしは無意識に泣いているの。


 そんなあたしの頭をクロウが優しく撫でてくれる。その優しさは昔リオンがあたしに与えた優しさに近い。


 もう一度だけ、その温もりが欲しい──



 夢の中のあたしは母親のお腹の中でいた時のように安心している。現実のあたしとはかけ離れているけど、凄く、幸福感を感じれるの。


 もう少しだけ、包まれていたい。

 そう思うのは我儘だろうか──

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