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 クベルト伯爵は怒りに飲まれないように、毒素を吐くように小さくため息を吐いた。その様子を青ざめた表情で見ているクロウ、そしてまだ状況を把握出来ていないミシャ、三人が三様、おもおもの感情を含んでいる。


 「クロウ、どうしてここ(・・)にいる……の?」

 

 ミシャからはクロウがどんな顔をしているのか分からない、見えないからだ。クロウは自分の感情を隠すように、ミシャに対して『怒り』を見せないように、背中しか見せていない。


 バサリと羽織の音が静かな空間の中で響く──


 「それはこちらの話だよ、ミシャ。あれだけ待っていろと言っていたはずだが?」


 クルリと彼女の方へと向けた表情には色がない。無機質に創られた目つきからは怪しさと美しささえも感じてしまう程だった。


 ゾクリ──


 今までこんなクロウなんて見た事ない、ミシャは彼の様子を見て、初めて自分がしてしまった事へと後悔し始める。ただ純粋にリアンに会いたかっただけだったのに、その気持ちさえも、もう許される立場ではないのだ。


 他に婚約者がいるリアンの立場を考えれば、クベルト伯爵がこのような状況を創り出すのも理解出来るだろう。クロウが怒るのも無理はない。


 純粋に人を想う事でも、過度に抱く感情は残酷な色を輝かし、黒く染めていく。これが希望が絶望へと変わる瞬間なのだろう。


 「あた……しは、ただ、リアンと……」


 振り絞るような声を出すので精一杯。クロウの冷酷さとクベルト伯爵の重圧で押しつぶされそうで、怖くて怖くて仕方がないミシャ。


 「リアンにはシャデリーゼ嬢と言う『婚約者』がいる。それはミシャ、君も知っているはずだが?」

 「……」


 今まで傍観者側にいたクベルト伯爵は言葉を挟み、続ける。


 「君はリアンには相応しくない。昔のように恋愛ごっこをする年齢でもないだろう。君には他に選ぶ人間がいるはずだ」

 「そ……んな」

 「さぁ、クロウ。その出来損ないを連れて帰ってくれないか。これ以上、私達に迷惑などかけたくないだろう?」

 「……申し訳ありません」


 現実を受け入れる事が出来ないミシャを抱き上げ、クベルト伯爵から逃げるように、その場を去った……

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