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 ルビーとの気まずい空間が続き、変に疲れてしまった。何を言っても丁寧に返されてしまうから、何も言えなくなった私は無言でいるしかなかった。ルビーも何か考え事をしていたようで、会話を続ける気がないようにも見えた。


 私は癒しを求めるようにフラリと自室を出た。お茶が欲しい。そこまで知識はないけど、私はお茶好きで有名。自分でも理解している。それほどお茶を愛しているのだ。


 「フランス……いないかしら」


 フランスは、執事だ。お茶を入れるのが上手くて、何かある事に彼の元へ行くのが習慣になっていた。呼び鈴を鳴らしてくれれば、こちらから行きますと何度も言われたが、それじゃ意味がない。


 屋敷を歩くのも癒しの一つになっているから、楽しめる。まるで逃げているフランスを見つけるゲームをしているよう。彼はいつも上手く隠れているから、中々の暇つぶしになる。


 「おや。どうした? シャデリーゼ」

 「げっ……お父様」


 一番会いたくない人に遭遇してしまう事もある。それは運が悪かったと思うしかないのだが、どうしても言葉や態度に出てしまうのだ。


 「「げっ」とは何だ。父に言う言葉か?」

 「いえ。そのような事はありませんわ。お父様がお屋敷にいるとは思わなかったので……」


 忙しいお父様が屋敷にいる事自体が珍しい。それもまだ昼間。何かあったのかしらと首を傾げてしまったが、ハッと我に返り、体制を元に戻した。


 「今日は来客があるのでな。お前こそ何をしている」

 「……フランスのお茶が飲みたくて彼を探しているのです」


 フランスに用事があると言う事はまた(・・)気に入らない事があったと言う事。それに気づいたお父様は頭を抱えながら、言葉を落とした。


 「何か嫌な事があったのだな。お前は……少しは自分と言うものを理解す──」

 「説教は夜にしてください。私はフランスに用事があるのですから」

 

 私はお父様の言葉を遮って、自分の言葉を無理矢理被せた。今説教を受けるのなら、いつものように夜受ける方がいい。昨日は私があんな状態だったから説教はま逃れたが、毎日の日課になっている。


 「ところでフランスは何処にいますか?」

 「はぁ……私の書斎だ」

 「探しても見つからない訳ですわ」

 「私が呼んでこよう」

 「いえ。お父様のお手を煩わせ訳にはいきませんから、自分で行きます」

 「そう……か」


 いつもの私ならお父様の説教を受けていたかもしれない。私の様子が変わったと実感したお父様は、私の背中を試すように見つめている。


 

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