アンナと
「アレス君、雰囲気変わったね」
どこか寂しそうにいう受付の女。
名前はたしかアンナだったと思う。
まあ、寂しそうにしている理由は分かっている。
俺が別人のように見えるからだろう。
たしかこのアンナって女、俺の童貞を数年前に奪ったショタコンだったはずだ。
そう、アレはたしか2年前だ。
思い出してきたぞ。
その時の俺は13歳。
今よりもさらに線が細く、本当にか弱い男の子だったはずだ。
ああ、しっかり思い出した。
ブレン達にこき使われ疲れ果て、金もあまりないからパンだけ買って帰ろうとしていた時、商店の前で声をかけられたんだ。
受付嬢だったから面識どころか会話もしていたし、優しい雰囲気で癒されるとか思ってたんだよな。
で、食事に誘われて、飲んだことのない酒を飲まされて、よろける俺を自分の部屋に連れ込んで、キスしながら俺をベッドに押さえこんだんだよなぁ。
俺の純潔を返せとは言わんけどさ。
まあ気持ち良かったし。
それに、その翌日からは、いい仕事回してくれるようになったからいいけどさ。
「以前はどんな感じだったんです?」
と、あの時のことなど覚えてない風に、丁寧に聞いてみたら、
「なんて言うか、真面目で角が立たないように話を纏める感じだったんだけど」
まあ、そうだったよな。
「八方美人のお人好しですかね?」
揉め事が嫌いだったからなぁ。
「ちょっと言い方が悪いけど」
「それで使い捨てにされちゃ、元も子もないんですよね。多分ですけど、アイツら私をオトリにして逃げたんだと思いますよ。また利用してやるって思いが、透けて見えましたから」
奴らはクズだしな。
「あの子達が言ってたオークの群れも、確認出来ていないからね。あの森にアレス君をオトリにして逃げるような強い魔物は本来居ないはずだけど」
そうは言うが、オークは居たがな。
「居ないなら居ないでいいんです。ただ、利用されるのはまっぴらゴメンです。さて、治療費だなんだで貯めてたらしきお金も底をついたようだし、宿代も無くなってしまったので寝るところもない。なので、とりあえずお金を稼ぎたいから、仕事紹介してください。私に出来るやつを」
とりあえず今夜の宿代だけでも確保しないとな。
「一人で出来る仕事って、常時依頼の一角兎の納入か、薬草採取しかないわよ?」
「それでいいです。とりあえず一から説明をお願いします」
俺は受付カウンターに向かいながら、アンナにそう声をかけた。




