明日に備えて
そうして俺たちは、ギルドに併設されている酒場へと移動し、空いているテーブルを見つけて腰を下ろす。
「アレス、何食う?」
ジンさんが聞いてきたので、
「ジンさんと同じものを」
と言っておく。
奢ってもらうならばメニューも決めてもらった方が良い。
変に安いのを頼むと、相手に金ないだろう?と言っているようなもんだし、高いものだと遠慮を知らない奴だと思われるかもしれないからな。
「じゃあ、蒸し鶏の香草ダレだな。おーい、蒸し鶏のセット二つね〜」
ジンさんが声を上げると、
「あいよ〜」
と厨房の奥から声が帰ってきた。
そして俺の方に向き直り、
「いいかアレス。毒草は薬草に本当に似てるやつが多いから、マジで気をつけろ。自分が怪我した時に、慌てて薬草だと思って取った草が毒草だと、あの世にまっしぐらだ」
「ですよね」
「毒草には色々あってな。少しお腹が痛くなる程度のものから、即死するような強い毒草もあるんだ。草の毒はだいたい熱を通せば無害化するがな。だがこれはキノコには当てはまらないから、よく覚えておけ。とりあえず知らないキノコは食べるなよ」
ずっと笑いっばなしになると言う有名なやつがあるもんな。あれは鍋で煮込んだ後でもヤバイらしいからな。
「あの笑いが止まらなくなるキノコってやつですか?」
「お、そういうのは覚えてるのか?」
「なんか、覚えてるのと覚えて無いのが入り混ざってるんですよ」
あぶねえ、少し記憶が戻ってるのがバレるところだった。
「早く記憶が戻るといいな。で、話を続けるけど、オーサーって草は傷によく効く薬草だが、タイサーって草は幻覚を見る危険な毒草だ。次に……」
ジンの薬草毒草講座が続く。
俺はそれを聞き逃さまいと、聞き取るのに必死だった。
「だいたい分かったか?」
「はい、後は森で実際に見てみないとなんとも……」
話で聞くのと見るのでは、結構違うこともあるからな。
そう思っていると、ウエイターが、
「はい、蒸し鶏セット二つねぇ〜銅貨18枚ね」
と料理をテーブルに置く。
ジンさんが銅貨20枚を手渡し、
「ほいきた。残りの銅貨で冷えた水も頼むよ」
と言う。
冷えた水がコップ一杯で銅貨一枚もするのだ。
「はいよ!」
とウエイターが急いて水の入ったコップを二つ持ってきた。
「よし、とりあえず食おうぜアレス」
「はい。頂きます」
そうして食事を終えたアレスは、明日ジンのパーティーと一緒に行動する事を約束し、安宿を紹介してもらった。
俺はその日、素泊まりの銅貨30枚の安宿で、夕食の時にジンから聞いた事を思い出していたのだが、一人での魔物退治で疲れていたのだろう。
数分後には意識があやしくなってきた。
なので諦めて眠りにつくことにした。
明日が楽しみだな。




