毒草
そう俺に声をかけて来た二十代後半の青年、金髪の短髪で青い瞳をしている。
鍛えられた肉体であろう事は、服の上からでも分かる。
身長180センチぐらいだろう、悔しいくらいのイケメンだ。
確か名前はジンだったような気がするのだが、
「はい、体の方は問題無いですが、記憶の方はまだです。えっと……」
答え合わせのために、言葉を濁してみると、
「ああ、記憶が無いんだったな。話は聞いてる。お前と仲良くしてたジンって者だ。何か困ったことがあれば言ってくれよ。記憶が戻るまでは大変そうだし力になるぜ」
爽やか笑顔を俺に向けてくる男。
やはりジンで合ってたな。
「ジンさんですね。覚えてなくて申し訳ないです。ありがとうございます。何かあれば頼らせて貰います」
俺は丁寧に答えた。
友好的な人には丁寧に接しておく方が良い。
「良いってことよ。自分の名前すら覚えてなかったんだろう? てか、どれくらいの事を覚えてるんだ?」
ジンが問いかけてきたのだが、どう答えようかね?
「えっと、人に関する記憶はほぼありません。社会の仕組みとかその辺の事はなんとなく覚えている気がしますが、それが合ってるのかどうかが分からないんです」
このくらいの曖昧さでいいかな?
「大変そうだな。マジで力になるから、本当に言ってくれよ? まあ、お前に力を貸してくれるヤツは多いと思うけどな」
ジンが心配そうな顔で、俺にそう言う。
ほんと良いやつだ。
ところで、俺を助けてくれる人はそんなに居るのか?
「私、知り合いが多いのでしょうか?」
「ギルドの職員や中堅ハンター達に可愛がられてたから、多いと思うぜ? まあ、ブレン達は嫌われてたがな」
やはりあのカスは嫌われてるんだなぁ。
「同じパーティーなのに、何故私だけ?」
「ブレン達って、腕は大した事ねぇ癖に偉そうだし、先輩の意見は聞かねえしでよ。その点お前は腰は低いし、意見や忠告はちゃんと聞くし、それで成果が出ればお礼を言ってくるし、好かれてたよ」
役立つ情報貰えたなら、礼くらい言うだろ?
「それ、普通の事ですよね?」
「それを普通と言えるお前だから、好かれてるのさ」
とジンが言った時、
「あらジンさん」
と、ショタコンがジンに話しかけた。
「よっ!アンナちゃん」
「今日はどうしたんです? 依頼受けてましたっけ?」
「いんや。夕飯食いに来ただけ」
「メンバーさん達は?」
「今日は全員休養日だから、行動もバラバラなのさ。たまには個人の自由時間も作らないと、毎日一緒じゃ息が詰まるぜ?」
「なるほど。あ、アレス君査定が終わったよ。一角兎が一羽銅貨20枚、五羽で銅貨100枚だけど、薬草のほうが半分毒草だったから、銅貨25枚ね」
銅貨100枚ってことは、銀貨一枚か。てか毒草ってなんだ?
「毒草?」
おかしいな、唯一覚えてたヨモギーっていう薬草だけを取って来たつもりだったが。
「このヨモギーは血止めの薬草だけど、こっちのよく似た草は、ドモギーって言う毒草なのよ。裏に黒い点々があるでしょう? こっちが毒草。よく似てるから気をつけてね」
「本当だ。よく似てる」
これは知らなかったな。忘れてるだけなのかもしれないが、しっかり覚えておかないとな。
「間違えてドモギーを食うと、息が苦しくなるから気をつけろよ。ヨモギーだと思って傷口に擦り込んだら汁が直接体内に入ると、暫く動けなくなるような毒だからな」
ジンが捕捉してくれた。なるほど覚えておこう。
「分かりました。ありがとうございます。他に気をつけなければならない毒草ってありますか?」
ついでに聞いておくとしよう。
「色々あるぞ。飯まだだろう? 飯食いながら話そうか。奢ってやるから」
正直飯代浮くのは有難い!
「いいんですか? ありがとうございます」
俺は丁寧にお辞儀して、そう答える。




