森の中
新作始めます。
よろしくお願いします。
木々の生い茂る山の中、樹海と言って差し支えないような場所。
太陽は真上にあるのに、日の光は大木の枝葉によって遮られ薄暗い。
地面は僅かに日が差し込む場所には、草が生い茂り鬱蒼としている。
本来ならば静けさが漂い、鳥達の囀りだけが響くだろう場所に人の声が、それも怒鳴り声が響いた。何かが移動している音も聞こえる。
「おいっ! アレス! さっさとオークを引きつけて離れろっ!」
そう叫んだ一人の少年。
歳の頃は17歳ほどだろうか。
身長は170センチを超えるかどうか。
鍛えられた筋肉を見せつけるような服装の、骨太そうな身体をしている。
左胸の革の胸当てと左腕に装着された革の盾しか防御の装備が無いのは、買う金が無いためだろう。最低限装備である。
金髪の短髪に、青い瞳を持つ、勝気な顔つきの少年だった。
一方、アレスと呼ばれた銀髪で濃い青の瞳の少年。
身長は165センチほどで細身の体型。
先程の少年よりは年下に見える。
「そんな! ブレン! 僕にはオークなんて無理だよ! 僕の脚ではゴブラインで精一杯だよ!」
と言い返したアレス。
アレスの装備は、ボロボロの革の胸当てだけという粗末なものだった。
オークとは身の丈2メートル50センチほどの、いわゆる人型の魔物である。
茶褐色の肌に、分厚い皮下脂肪を持ち、怪力でもある。
頭部は猪の頭部と人の頭部を足して割ったような顔つきであり、下顎から突き出た牙が凶悪さを強調している。
魔物としては中の中の強さといったところだが、少年達にとっては手に負える相手ではない。
倒すなら手練れが数人必要だろう。
多少傷つけたところで、オークは死にはしないからだ。
アレスと呼ばれた少年が言ったが、オークの移動スピードは歩幅が大きいのでそれなりに速度も早く、下草など踏み潰して移動するため、障害にならない。
人が走って逃げ切るには、かなり運が良くなければ無理であろう。
人が頻繁に遭遇する魔物の中では、かなり警戒すべき魔物だ。
そしてゴブラインだが、こちらは身の丈130センチメートルほどだが、筋肉の塊のような身体付きで、すばしっこく動く人型の魔物だ。
緑色の肌をしていて、一目で人では無いと判断できる。
人型の魔物の中では底辺に位置するが、それでも一般の大人の男よりは強いし、何より群れる。
1匹で行動する事はほぼ無い。
多少の知能を有しており、拾った武器を使いこなし仲間と連携をとって獲物を襲う。
このような魔物を殺し、報酬を得る者達の事をハンターと呼び、才能を持つ者が訓練して己を研磨した者のみが、魔物を倒す事ができるようになるのだ。
「ゴブラインはこっちで殺すっつってんだよ!」
アレスにブレンと呼ばれた少年が、大きめの両手剣を振り上げながら言った。
普通の少年には持ち上げる事も不可能であろう大剣を、ゴブラインに目掛けて振るうブレンは、間違いなくハンターとしての能力を持っているだろう。
「ゴブラインは僕が引きつけておくから、オークを倒してよ!」
アレスが提案したのだが、
「うるさい! お前は足の速さしか取り柄の無い引きつけ役なんだから、俺の言う事を黙って聞けばいいんだよっ!」
とブレンがその提案を却下する。
いや、却下せざるを得ないのだ。
ブレンにオークを倒すほどの実力は無いのだから。
アレスに、『俺ならオークだって一撃で倒せる』と普段豪語していたブレンだが、そんな事は出来ないと自分でも分かっている。
さて、ハンターになるには、なんらかの特技が必要である。
魔物と戦える何かが。
それはブレンのような怪力であったり、攻撃魔法であったり。
そもそもハンターとは特殊な人々であるのだ。
天より才能を賜った者達の事をハンターと呼ぶ。
この世界の神が、魔物が蔓延る世界で人々が生きていくために使わした神の力の一部を授けられた人々の事をハンターと呼ぶのだ。
だが、その力は平等に与えられるわけではない。
魔力で自身の体を強化し、武器を持ち魔物を狩る者や、魔力を放出し魔法で魔物を狩る者と大きく二つに分類されるが、その力の強弱には大きな差がある。
いわゆる個人の素養だ。
素養が無ければ発現しないし、素養が有っても少なければ、少し力が強かったり足が速いだけだったり、魔法であれば、指先に蝋燭の炎程度の火が起こせるだけだったりする。
そんな中で、魔物を倒せる者達だけがハンターと呼ばれる。
それは人口でいうならば、千人に一人か二人程度しかいない。
昼にも更新します。