恋だった
気持ちよく晴れた水曜日。
たまった有休があることに気付いて、上司に連絡をする
「本日、体調不良のためお休みします。」
テレワーク主体となっているので、特に問題なく休めた。
ベランダに出て、久しぶりに大きく深呼吸をしてみた。
こんなご時世だから仕方がないが、外出もままならず、家にいることが多い。
元々、家にいることが好きだから、苦ではないが
こんなに続くと、流石に気が滅入っているのも事実としてある。
平日の昼間の晴天。
たまった家事には目を瞑り、近所の公園に散歩に出ることにした。
季節は、春に終わりを告げていた。
新緑が力強くひろがっている。
公園のベンチに座り、イヤホンを着ける。
シャッフルで流れた曲に懐かしさを感じた。
あれは、高校一年のこのくらいの時期だった。
失恋とも言い難いような気持ちを思い出した。
中学の卒業式の卒業式の時だった。
後輩から大人気だった男友達がいた。
今、思えばかっこいい男の子だった。
でも、当時の私にはどうしてこんなに人気があるのか、わからなかった。
いつもからかわれるし、男子でやってる遊びにも平気で誘ってくる。
私も、それが普通だと想っていた。
卒業式の最後のHRの時、彼の学ランのボタンは全部なかった。
どうやら、後輩たちにせがまれてあげたようだ。
周りの友達にからかわれている彼は、すごく恥ずかしそうだった。
私も
「ボタン、完売ですねー」
と言ってからかった。
「ほしかったか?」
「はぁ?いんらよ、てかもうないやん」
まじまじと見ると、本当に制服のボタンも校章も襟のカラーもない…
改めて人気があるんだなぁーって思った。
教室に入り、先生が来るのを待つ。
最後の自分の席に座りはしてるけど、席の近い友達と尽きない話をする。
私の場合だけど、口を噤むと涙が出そうだった…
隣の席の彼から呼ばれた
「んっ…」
私の前には、彼の拳が差し出された。
「なによ!じゃんけん?…何のじゃんけんー?」
笑いながら彼の顔を見た
いつもと違う、少し真剣な顔…
「ほら!やるよ!」
彼の拳がさらに私の近くに差し出された
「なにー?」
私から手を差し出すと、掌にコロンとのったのはボタンだった
「え?」
「やる。お前に残しておいた。…ほしかっただろ?」
びっくりした。
今まで、男子として意識をしてなかったわけではない。
でも、今まで女子として扱って貰ったこともないし、そんな素振りもなかった。
だから、私もいつの間にか意識することをやめた。
そんな彼が私にボタンをくれた。
「あ…ありがとう…でも・・・」
なんで?と聞きたかったけど、なぜか聞けなかった。
なんか、そこからの記憶が途切れてしまってる。
彼の事を思い出す時、次に思い出すのは
高校一年の夏休み前のこと。
学校帰りにばったり逢った。
ついこの前まで、知ってる制服だったのにお互いに違う制服を来て
ちょっと、大人びて見えて気恥ずかしかった
「久しぶり!元気にしてた?」
いつもの調子で話しかけたけど、きちんと出来ているのか自信はなかった。
「おぉ…うん。元気…お前は?」
彼も気恥ずかしいのか、ちょっと様子が違った
よく見ると、彼の隣には見知らぬ女の子。
女の子の制服を見ると、彼と同じ学校のようだ。
あ…
そっか・・・
彼女だよね。
ごめん。
「う…うん。元気だよ。じゃ・・・ね・・・」
なんと声をかけていいか、そこから足早に立ち去った。
彼の制服から、なんか甘い香った。
多分、あの女の子の香りなんだろうと…そんなことを思うと
喉の奥から、熱いかたまりのようなモノが押し上がってくる感覚があった
あ…
私…多分泣きそう・・・
私は、ずっと彼に恋していたことに
ショック療法という最悪な方法で気付いたのかもしれない
一緒に笑い合っていた、懐かしい日々
私は、確実に彼に恋をしていた。
あの日、泣きながら帰ったけど
今日のように晴れた日だったな・・・
ぴゅっと吹く強い風、ふわっと自分の髪からシャンプーの匂いがした。
あと時香った女の子の匂いよりもずっと大人の匂いがする。
私も、すっかり大人になったんだな…




