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第6話:ヴァルクリフ攻防戦・上


あら あれって内側からなら意外に簡単に壊れるのよ? ──【Second】を名乗る白い女


日中の世界は私の領域だ ──王国最強の震術師 スティア・クロイツ・マグナビュート


手合わせ願おうか ──【第4魔王】 エメト


守備隊の、ほうに、助けに、いかない、と…… 【限り無き炎】 ゼクゥ・フィアレス


この化け物をなんとかしない限り……?! ──BLADE





「Forth」


 全身を白で包んだ女の声が洞窟に反響する。白い女は自分の声に眉を寄せる。


「相変わらず耳の痛くなる場所に住んでるわね……」


「……日向の世界は我らに似合わぬだろうが」


 暗い洞窟の奥から錫杖を携えた【第4魔王】が姿を現す。

 それは身なりの整った中年の男性の姿をしており、もし彼が街中を歩いていれば悪魔には見えないだろう。


「……それ、人間の服ね」


「なかなか良いものだ」


「端々に血が滲んでなかったらね」


 白い女は興味が無さそうに言う。


「して、我に何用だ?」


「Firstの命令よ 『ドレイクを殺したやつをいぶりだして殺せ』


ドレイクの使い魔に臭いを追わせたけどヴァルクリフって街にいるみたいよ あんたがそこの一番近くにいたからとりあえずあんたに報せたんだけど、どうする?」


「……、グラナも面倒なことを


ヴァルクリフと言えば人間の都市の中でも特に結界が強力なことで知られる街だろう?」


「私なら破れるけど?」


「お前の場合は『破れる』ではなく『受けない』、が正しいだろう」


「あら あれって内側からなら意外に簡単に壊れるのよ?」


「……わかった 策のほうはお前に任せるとしよう


我は、そいつを叩けばいいのだな? お前は迅速にそいつの特徴を教えるといいだろう」





   ◇


 レグナがヴァルクリフに来てから1週間が経過した。

 からかいすぎてナタクに出会う度に逃亡を繰り返すハメになったゼクゥ・フィアレスは、寝転がって空を見ていた。



「……なに、あれ?」


 空を高速で飛翔する点を見つける。

 いまいち掴めないが、周囲の鳥や雲の大きさから察するに人間ぐらいの大きさに羽根がついたような……そんなモノだった気がしたのだ。


(悪魔……かな? まあ悪魔なら結界があるから簡単に街には入れないから別に警報が来てからで構わないか)


 と、点が街に向かって急降下した。


「………?」


 結界があるにも関わらずそれは超速度で街に落下する。


 結界に、ぶつかる──?


 ガキィィッ!!!


「なっ……」


 その飛翔体は結界をすり抜けて、宙に浮かぶ結界の核となっていた機械を翼でぶった切った。


「アストラルっ!」


 無線に向けて半ば叫ぶような声を出す。が、続く言葉を別の音が遮った。


『警戒警報LV5! 結界の破損を確認 警戒警報LV5! 結界の破損を確認


市街地が戦場となる可能性があります、住民は速やかに避難してください

繰り返します 市街地が戦場となる可能性があります、住民は速やかに避難してください』


「っ……」


 単なる見間違いではないことが確定する…… ゼクゥはもう一度アストラルに無線を繋ごうとしたがそれより早く別の信号が割り込む。


『ゼクゥ様っ』


「ベル? 悪いけどあとに『これまでにない数の魔物の大群が城壁の外にっ 見張りからは数はおおよそ2000と報告が……』


「っ…… クソォッ」


『【限り無き(バウンドレス・ファイア)】 聴こえるか?』


「! 【星の隷属者(アストラル)】」


『貴様は外の魔物の掃討にあたれっ ナタクを回す。上手く連携を取れ


市街地に入り込んだ飛翔体には私があたる いいなっ?』


「っ……了解!」


『生き残れよっ』




   ◇



「ゼクゥとナタクは西門に、南門には別動隊を出す 東は1、2、4、5、9 北門には3、6、7、8部隊


全力で死守しろっ!!!」


 返答を待たずに別の回線にまわす。


「レグナ ウルスラグナの使用許可を出す! 行けっ」


『わかった……!』


 王国最強と言われる震術師、スティア・クロイツ・マグナビュートは無線と自身の身体を支えていた杖を投げ捨てた。


「……また会えたな 【Second】」


 銀色に光る巨大な六枚羽根を持つ白い女が、スティアの前に降り立つ。


「懲りないわね あなたたちが『大震(セイバー)』が“二人がかり”で勝てなかった私にあなただけで勝てるとでも?」


「条件が違う」


 スティアは冷静に、昂る。


「あのときは闇夜だった 日中の世界は私の領域だ」


 周辺の光がスティアの術式に呼応し、歪む。


「大陸に3人しか使い手のいない我が光の術──、とくと見よ」


    ◇



 ゼクゥは西門の前にいた。


「……遅刻っ!」


 引き裂かれた魔物の死体が隙間なく転がっている。

 どうやらナタクの方が先に来ていたらしい。


 予定調和のようにナタクが飛び退き、入れ替わるようにゼクゥが飛び出す。


「エルーはそのまま街にいるスティアを捜してっ あいつ、また無茶しようとしてるから!」


「……承認」


 抑えていたナタクが退いたことで迫り来る膨大な数の魔物の群れ──、対してゼクゥは僅かに唇を動かした。


 【垣間見る地獄の業火】 と。


 呪文の詠唱は市街地を走るうちに済ましていた。



 空を染め上げるほどの大火が、刹那と待たずに前方のすべてを薙ぎ払った。




   ◇


 別動隊として、レグナは1人南門に居た。


 『ウルスラグナ』を持ったレグナに並みの魔物など100だろうが1000だろうがまったく影響はない。


 だが42体を斬り伏せたところで南門からは魔物が消え失せた。


「6本の剣を持つ男──なるほど、Secondが言っていたのはお前だろうな」


 代わりに現れたのは、整った身なりの端々に血を染み込ませた中年ほどに見える男だった。


「我は【第4魔王】 エメト 手合わせ願おうか」




   ◇


「ラストォっ!」


 焔が弾けて、800近い数が居た魔物の最後の一体が灰と化す。

 戦闘開始から20分も立たずに、ゼクゥは西門の魔物を殲滅していた。


「ゼェッ……ゼェッ」


 ゼクゥは荒い息を吐く。


 炎を産み出す力はけして無限ではない。【限り無き炎】の異名を持つゼクゥだがその攻撃力に文字通り“限りが無い”と言われるだけであって、別に無限に炎を生み出せる訳ではないのだ。


 敵は殲滅したがもう1つだけゼクゥはこの場で術を使う必要があった。


  炎陣術。


 地面に刻んだ魔方陣が、外部からの侵入しようとした対象を焼き払う術式だ。



「守備隊の、ほうに、助けに、いか、ない、と……」


 ゼクゥは乱れた呼吸を整えようともせず出来る限りの速さで走る。



   ◇



 ズンッ と鈍い音がした。


「っ……!?」


 エメトと名乗った悪魔の前の土が盛り上がり、レグナの5倍近い質量を持つ巨大な土の人形が構築されて行く。



  ゴーレム──?



 正面から突き出されたバカげた大きさの拳をレグナは大きく動いてかわした。


 後方の地面に拳が突き刺さり土が舞う。


(動きは大して速くないクセに、サイズがデカすぎてかわし辛い……)


 伸びきった腕にレグナは一閃する。だが腕の太さはウルスラグナのリーチを軽く上回っており切断まで届かない。


 それどころか、即座に周囲の土を飲み込んで切り口が再生した。


「!?」


 懐にいるレグナに鉱物で出来た硬い膝が突き出される。


(局部に意味がないなら……)


 やや斜めにバックステップしそれを回避し、飛び退き際に鉱物の膝をウルスラグナで叩き割る。が、それも直ぐに再生する。


(っ……間接部まで……!? ゴーレムの相手をしてても埒があかないな…… なら、操ってる魔術師を直接っ)





  居ない……?




「まさかっ……」



 ゴーレムの──、この土の鎧の内側に……?



「おいおい…… この化け物をなんとかしない限り術者にも届かないってか……?」





   ◇



 【星の隷属者(アストラル)】という名にはいくつかの由来がある。


 1つは彼が光の震術を使う際に太陽の光を受けた星が僅かに輝くような淡い光を発すること。

 2つ目は彼の属する王国の掲げる国旗の紋章が『星』を象り、スティアは単体で充分に国家に抗えるだけの力を持ちながらも王国に属し続けていること。

 そして最後に、彼の術はまるで星の重力を借りるかのようにあらゆる術的攻撃を“屈折”させることだ。



「なるほど たしかに弾き切れずにあたった前回とは桁違いのパワーね」


 楽しむような口調で白い女はいくつかの震術と魔術を一気に放つ。それらは例外なくスティアに命中する前に屈折し、地面や住民が既に避難を終えた建物を撃ち破る。


 ──光の術に物理的な破壊力は一切ない。


 スティアは自身がリースに言った言葉を思い出す。

 光の術に『対象を攻撃する術』はほとんど存在しない。もし光が質量を持って対象を攻撃する術があるとすれば、それは理論上無限大のエネルギーを持つことになり一撃で全てを破壊出来る悪夢の術になるだろう。


 屈折。透過。波長。


 これらを操る光の術の本質とは防御だ。とスティアは考える。


 だから、


 スティアはセカンドの放つ術を屈折し回避しながら別の術式を起動する。


 光で攻撃出来ないならば別の術式を使えばいい。


 産み出したのは雷撃。だがスティアはそれを直ぐには発動しない。これは保険だ。


(このまま『屈折』を使い続ければ私の力のほうが先に尽きるな……)


 それがわかっているから白い女は効かないと理解しながら術を放ち続ける。


(だが甘い──!)


 いくつかの攻撃を屈折させずに温存しながら、スティアは術の嵐のあいだに身体を滑り込ませる。


 ズキン と痛みが走る。

 ナタクの治癒震術ですら強力な魔術でつけられた手足を完治させることは出来なかったのだ。



「──!?」


 スティアの身体がまだ無事な建物の陰に隠れた。


(……迂濶に追うのは危険ね)


 Secondは牽制するように放っていた威力の小さい術から術式を莫大な力を持つものに切り換える。


「──消し飛びなさい」


 それは呪文であり同時に宣告だった。


 震術によって発生した強大な炎が、魔術によって操作された風の助力を得て、


 作られた巨大な莫炎と疾風に彩られた震魔の混合の槍が、



「神殺しの(ロンギヌス)



 スティアの居るであろう建物に向かって超速度で突っ込んだ。





「──…阿呆め」


 【星の隷属者】の異名を持つ震術師は、おそらくゼクゥの『垣間見る地獄の業火』をも上回るであろう威力の槍を、嘲笑う。


「屈折が出来るなら『反射』も可能だとなぜ気付かない?」


「っ!?」


 究極に近い『神殺しの槍』はその威力を反転する。








 【大震(セイバー)】の名前の由来:真昼がShiverを素で読み間違えたこと


 BLADEの名前の由来:青山 剛晶の『YAIBA』

 ……や、これは流石に嘘です



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