第32話:原罪
あーあー、おい セベル これスイッチ入ってるか? ──【炎の森】のリーダー カイル・オックス
いえ カイル先輩はやっぱり変です…… ──【炎の森】の構成員でさる顧問震術師の息子 セベル・フォン・クロストウェイ
騒動を納めようともせずにこんなところをフラフラしてるお前じゃないのか? ──王 ザックフォード・WS・エクセリオン
ご冗談を、ちゃんと第2騎士団を鎮圧に回していますとも ──王国第二騎士団長 シルバリオ・ガーゼス
『あーあー、おい セベル これスイッチ入ってるか?』
『入ってるよ ってか王都中の人が聴いてるんだから真面目にやってくださいよカイル先輩』
『俺こういうの苦手なんだよ やっぱスティアか誰かにやらせようぜ めんどくせぇ』
『もういいから早くしてください!』
『わかったよ ったく……、あーこちら【炎の森】のリーダー カイル・オックスだ
聴こえてっか?、ハゲ共』
『ちょっとカイルさん?!』
『黙れ 俺にやらせたお前らが悪い
あークーデターだとかで戦ってるやつら いますぐ喧嘩やめろ
ついさっき結界型の《地に墜ちた焔》の術式を設置した
効果範囲は王都の中全部
反応するのは一定以上の周波数の金属音と震術の発生音
チャリ乗ってるやつら、ブレーキ音で焼けるかもしれねーから今すぐ降りて押していけ
ちなみに術式の威力の程は、』
カイルは片腕を振り上げた。
そこに、
ドゴォォン!!
直径20m程の火柱が天井を突き破って墜ちた。
カイルはそれを受け止め片手で握り潰す。
『と、まあこんなところだ
見えなかったやつら
君たちのことは非常に残念だが、焼け死んでくれ ちなみに【炎の森】諸君も攻撃対象に入ってるから注意しとけよ
この放送の終了直後に結界を起動させる、俺からは以上だ ではセベルくん』
『え そんなセベルくんからは何かあるみたいなフリの終わり方しないでくださいよ?! え、えっとじゃあこれにて放送終了します』
それから数分も立たずに、
ドゴォォン
何処かで爆発が起こった。
ドゴォォン
ドゴォォン
ドゴォォン
「【炎の森】……ってか俺のことなめてやがるな 騎士団のアホ共」
カイルはつまらなさそうに欠伸をする。
「え どうしていまのが騎士だってわかったんですか?」
「は? 鎧の擦れる音がしただろうが?」
「……無属性の拾音震術ですか…?」
「そうだが……その顔なんだよ?」
「……いえ カイル先輩はやっぱり変です」
王国に三人しか居ない光属性の震術師、セベル・フォン・クロストウェイは思いっきり嘆息した。
拾音震術とは、その名の通り特定の音の振動を拾って術者に届ける術だ。
だがその効果範囲は本来そう広くない。火柱が落ちた場所はセベルの目算でザッと3kmぐらいだろうか。
「ほんとはスティア・クロイツ・マグナビュートより強いんじゃないですか? 先輩って」
少なくとも王都を丸ごと包み込める規模の結界を、一撃必殺の威力を持たせて維持出来る術師などセベルは彼しか知らない。
「ありえねーよ ありゃ化け物だぜ」
「……そうですか?」
化け物──ゼクゥ・フィアレスを思い出して、カイルはふと空を見上げた。
あの空さえ赤く染める震術──、
「《垣間見る地獄の業火(One moment flare・イフリート)》 か……」
「え なんですか?」
「なんでもねー」
◇
「……シルバリオ・ガーゼスか?」
「ええ この有り様は如何致しました?」
シルバリオ・ガーゼスは室内を見渡して少しだけ楽しそうに言った。
雷撃に焼かれた痕のあるレイム・リーガル・アーカナイトの死体、刀傷と火傷の混在する近衛兵長 レイ・バークラントの死体、虫の息で横たわる王国最強の震術師 スティア・クロイツ・マグナビュート
そして、片腕のないザックフォード
「とりあえずスティアを医務室へ運んでくれ
「相討ちですか よくもまあ……」
「……なんだ?」
「いえ ただこの状況でも表情1つ変えない貴方に少しだけ恐怖しただけです」
スティアの腰を掴み自身の肩に引っかける。
「ふむ、それでクーデターの首謀者とやらはどちらですか?」
「騒動を納めようともせずにこんなところをフラフラしてるお前じゃないのか? シルバ」
「ご冗談を、ちゃんと第2騎士団を鎮圧に回していますとも
カイル・オックスも動いたようですし暴動も時期に納まるでしょう」
「だといいがな」
「……レイムのやつは死んだのですか?」
「ああ」
「加えてレイ・バークラントまでも……? ククク…… 素晴らしい 上の席が一度に2つも空くとは……!」
「……野心旺盛なのは結構だが、俺様の前で堂々とそういう宣言するのはどうかと思うぞ 王国第2騎士団長シルバリオ・ガーゼス」
「失礼 こうも簡単に第一騎士団長の座が手に入るのかと思うとつい嬉しくてね」
「俺様はお前にやると言った覚えはないが?」
「では他に誰か候補が?」
「そうだな…… レグナ・ゼオングスなんてどうだ?」
シルバの顔から笑みが消えた。
「ご冗談を あのような獣を王の懐に置くわけには行きますまい なにせあれは…──」
「それ以上言うなよ シルバ」
全てはあのときから始まったのだ。
死なない獣は追憶し、思い立ったように一人にしか聴こえない声で僅かに吼えた。
「殺してやる……」
放たれた声を聞き取って、レイ・バークラントは涙する。
それは悔恨か、慟哭か、自身にも区別はつかない。
「殺してやるっ!!!」
逃がされたベリアルホープは、ただ吼えた。
──…
「行けよ」、と自身の片腕を切り落としたザックフォードは言った。
落ちた腕が膨張し、レイ・バークラントの姿と同じモノになる。
「ここにあるのはDNAレベルでお前と同一の死体だ お前が姿を見せない限り生存を疑われる可能性はほぼないだろう
なにせ現物(死体)があるんだからな」
「情けを……かけるつもりか……?」
「慈悲、と言って貰いたいね 神獣ってのは本来神の従者だからな
とはいえ神獣の根本は無干渉だ
俺様のやったことは“契約”って度を超えてる…… ま、この腕は謂わばその罰だな
許せとは言わんし、俺様は死ねん、というか死なん 一先ずこれで手を打ってくれや」
ほぼ直ぐに投稿出来る状態のストックが切れました
明日からは多分に更新ペースが落ちると思われますm(_ _)m




