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第21話:疾走

走れっ!!! ──BLADE


行って ──【銃の王】シャルツ・ディバイト・アークエッジ


休ませてはくれない訳ね ──半熟震術師 リース


おや お前はバルバローネがやけに執心していた……そうか、我の相手はお前か ──【EMETHの魔術師】エメト


こいつは俺っちに任せるサ ──“半神” シーク・ツェイベル




 砂浜に上がった3人はざっと服を乾かして歩き出す。

 浜を抜けるとそこは草原だった。


 伏魔殿──、名前から連想されるイメージとは違って人の手の入っていない自然な美しさがあるとリースは思う。

 どこまでも続くような広い草原でレグナとシャルツはおもむろに周囲を見渡した。


「さて、やるか シャルツ」


「うん」


 そして2人は同時にリースの手を引っ付かんだ。


「……、何?」


「そうだな……とりあえずは……


 走れっ!!!」


 レグナ達が駆け出し一瞬遅れて無数の魔術が大地に突き刺さる。


「え…ぇえっ?!」


「ざっと100体ぐらいか まともに相手をしてたら陽が暮れる」


「あのときと同じだよ 退魔術式の働いてる城内まで駆け込めばこのレベルのやつらは撒ける…… 一先ず全力で逃げるよ!」


 回避されたことを認識した不可視の悪魔の群れが2撃目を放つ。


「……、行けっ」


 レグナが立ち止まり、振り返る。立ち止まろうとしたリースをシャルツが引き摺るように強く手を引いた。


「……っ」


「レグナは大丈夫、直ぐに追いつくよ」


 回避不可能な数の全方位からの魔術に対しレグナは魔封剣と鞘をベルトから外し、納めたままのウルスラグナを構える。


「ハァッ!!!」


 空中の魔封剣を弾き魔術にぶつける。


 弾く。弾く。弾く。



「……どうした もう終わりか?」


 ぶちっ


 誰かが自分の唇を噛み切った。


 《海底の轟覇王(リヴァイアサン)


「よしっ……!」


 水属性の極大魔術、津波のような水壁が他の魔術を呑み込んで押し寄せる。


 ダンッ! とレグナは強く地を蹴った。


 直前までレグナが居たくっきりと残る靴跡を魔術が呑み込んだ。







「見えた……!」


 シャルツ・ディバイト・アークエッジは見覚えのある城と、その手前に存在する1人の背の低い悪魔を認めた。


「ラーシャルは退屈なの 誰かに遊んで欲しいの」


「魔王クラスかっ……!」


「どうする気?!」


「そうだね……飛び越そうか」


 シャルツはラーシャルに向けて跳躍した。

 言葉と裏腹にほぼラーシャルの真上に落下する。


 カイン&アベルの発砲音が空気を破裂させた。

 ラーシャルの長い刀から超速の一閃が走る。


 ズバァンっ!!!


 居合いによる一閃は震力の弾丸を消し飛ばしシャルツ自身に向かった。


 ガキィッ


「!」


 それをシャルツはカイン&アベルの銃口そのもので受け止める。


「──行って」


 たんッ と軽い音がして刀にかかる負荷が倍増した。曲芸のように刀の上で逆立ちに近い形を取るシャルツが上空に跳ねあげられるまでの一瞬にリースがその上に飛び乗ったのだ。

 刀の圧力により2人分の体重が浮き上がり、リースはそこから更に跳躍。シャルツはその足場となるようにリースを蹴り飛ばした。


(1匹、逃がしたの……!)


 即座に刀を納め半歩下がり再び居合いの構えを作り落下するシャルツを狙う。


 シャルツも空中でカイン&アベルを構える。


 引き金を引いた。

 抜き手を加速させた。


 パァンッ!!!


「なっ……?!」


 ラーシャルの身体が刀ごと、震力弾に弾かれた。

 着地したシャルツがラーシャルを無視して視認出来る距離にある城に向かって走る。



(1撃目は本気じゃなかったの……あれは仲間を先に行かせるためにわざと弱く撃ったの……)


 その背中に向けて抜き身の刀を放り投げた。

 それはシャルツより手前の地面に突き刺さる。


「……やられたの」



「いいのか? 武器を手放して」


 ──ラーシャルの首筋を目掛けてウルスラグナが飛んだ。






「はぁ……はぁ……」


 リースは転がるようにして城に飛び込んだ。白を基調とした整った造りをした、帝国アグリードの残骸。


「おや お前はバルバローネがやけに執心していた……そうか、我の相手はお前か」


 石材で出来た杖を持つ血濡れの服を着た、“銀の髪を持つ若い男”


 Fourth エメト


「っ……休ませてはくれない訳ね」


「我ではなく後ろの【銃の王】にでも頼めばどうだ?」


「……バレてるか」


 リースの背後から弾丸が飛んだ。


 エメトはそれを真横に鋭く動いて回避する。


 標的の位置を修正し次弾を放、シャルツは吹き飛んだ。


(っ……、風の魔術か!)


「こいつは俺っちに任せるサ」


「シーク?!」


「……さっさと行くサ」


「そうするとしよう」


 『空 間 操 作』


「シャルツ、その人を殺さな──」


 突如現れた奇怪な“箱”に呑まれてエメトとリースの姿がこの場から書き消えた。



「?! どこへ「そんなこと気にしてる余裕は」


 ──システム、オールグリーン

 トランス グレートソード


 エネルギー充電率120%、最大出力──《偉大なる剣》発動


「あんたにはないサっ!!!」


 翡翠の刃が真一文字に空間を薙ぎ払う。








 ネタギレ

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