第20話:風
神獣ってやつの力はとんでもないな ──BLADE
なんでこの揺れと上下動で二人共平気なの……? ──半熟震術師 リース
あァら ケダモノでもやれば出来るじゃないのォ? ──“契約者”シファ・バルバローネ
吐いた唾は飲めぬぞ、人間っ! ──【行き渡る者】セラフィム
流石は賢君 駆け引きのしがいがありませんねぇ ──近衛兵長 レイ・バークラント
俺様の正体…… か ──ザックフォード・WS・エクセリオン
「用意はいいか? 飛ばすぞ」
「ああ」
「うん」
「ちょっと恐いかも……」
ありとあらゆる風を吹かせるセラフィムの魔術は攻撃のためとは限らない。
レグナ達を包み込むように複雑にベクトルを絡み合わせた球体型の風の流れ。そして、元々大陸間を吹いていた貿易風。
「ゆけっ……!」
“風の船”に守られながらレグナ達は大陸間を吹き飛んだ。
「前の時も思ったが、神獣ってやつの力はとんでもないな……」
「前は“あいつ”が《神の息吹き》を正面からねじ伏せたんだよね……、たしか」
寂々と会話を交わす二人の隣で、
「なんでこの揺れと上下動で二人共平気なの……?」
リースが全力でぐったりしていた……
「大丈夫?」
「むしろそっちがなんで大丈夫なの……? それとあいつって誰?」
「……《本の王》だよ」
「スティアより強い震術師ってあのとき初めて見たよね」
「……?」
「後に【四人の王】なんて呼ばれるベリアルの討伐チームを組むときにね、僕と《拳の王》はあっさり決まったんだけどレグナと《本の王》の位置はかなり揉めたんだよ」
「俺と揉めたのは王国騎士団長レイム・リーガル 結局シャルツとの連携が取れることが決め手になって俺に決まったんだが、スティアの方は直接戦って決めたんだ」
「負け……たんだ、あのスティアが……」
二人が頷く。
「んーでバルナ・ブラックレイ、アグリア・オックス、ナタク・エルステイン、スティア・クロイツの四人が大規模な破壊震術を用いて悪魔の主力を叩いて【黒鉄の翼】、【掃除屋】なんかの破壊者が残りを各個撃破
隙を衝いて俺達がベリアルを強襲した
奇襲に近い動きに出る以上大人数での行動は危険だったんだ」
「ん……スティア・クロイツ?」
「“マグナビュート”、ってのはその時の活躍を評されて与えられた名前なんだよ」
「ヘェ……」
「さて、無駄話は終わりだ もう着くぞ」
陸地を目前にして、
突然風が止んだ。
「「「!!?」」」
球形の風も消えてレグナ達は落下を始める。水面までは30m強。例え下が水だろうが即死をまのがれない距離だ。
「っ……、なにこれ?!」
「前はもっとゆっくり落ちた……よなぁ?」
「ってかこの高さ……死ぬよ!」
「二人共掴まって!」
「どうする気だ?」
「いーから早く!」
《地獄の熱風》
(熱による気流制御術式……?! でも……)
いまの僕らには高温の熱風を回避する術が、ない……!
……、れ?
上昇気流が落下の速度を落とす。気流を残して“熱”だけが逸れた。
(光属性の屈折術式、スティアの術式複数同時制御……この子……?!)
ドポンっ
「ぷはっ」
着水した3人はほぼ同時に水面から顔を上げた。
「けほっ…生きてる?」
「あぁ 助かった」
「でもどうしたんだろ 前はもっとちゃんと着地したのに……」
───対岸
「なァんだ “ありとあらゆる風”なんて言っても所詮はこんなもんなのねェ」
《神へ還す火》
「人間が“神”の冠詞を持つ術を使うか……!」
ヴィシュヌがレグナ達への風を解いた理由は至極単純な物だった。
それどころでは無くなったのだ。
「……やむを得ぬか」
『ありとあらゆる風』を持ってヴィシュヌは酸素を断絶した。青い炎がヴィシュヌの目前で断たれる。
「あァら ケダモノでもやれば出来るじゃないのォ?」
「覚悟せよ」
108の魔方陣が超高速で展開される。
「吐いた唾は飲めぬぞ、人間っ!」
《神の息吹き》
レグナに放った物とは明らかに違う、ありとあらゆる風を最大限に発動した全力の魔術。
魔方陣の周囲の空気が極度に圧縮され濃度差が生じて歪む。
「……脆弱ねェ」
《万色を排除する閃光》
「っ……、白色炎じゃと!!?」
「やっぱり神獣クラスを消し飛ばすにはこの身体でもちょっと足りないわねェ」
焼け残ったヴィシュヌに背を向けてシファ・バルバローネは海を切り裂いて歩き出す。
「クーデターか……」
ザックフォード・WS・エクセリオンはいつもと変わらず玉座に居た。
「大震側か騎士団側か…… クーデターを起こしたのはどちらなんでしょうね」
傍らには近衛兵長レイ・バークラント。
「だな……ところでよォ レイ
俺様この前、ちっとおかしな話を小耳に挟んだんだよ」
「? なんですか」
「騎士団側には大震がクーデターを画策してる、大震側には騎士団がクーデターを画策してる って情報が飛んでる」
「! それは……どちらかが真実でどちらかが相手の撹乱を狙って、でしょうか」
「……んでよ たしか仲の悪い両者の情報の伝達役ってのは、『近衛兵団』が請け負ってたよなぁ?」
横目に見たザックフォードの視線はすくむほどに鋭かった。レイは大きく嘆息する。
「流石は賢君 駆け引きのしがいがありませんねぇ」
「やっぱ、首謀者はお前か 近衛兵長レイ・バークラント」
「……ええ」
「にしても、どうやって反乱分子なんか捜しだした? 言っちゃなんだが俺様の現政権でクーデターなんざあり得ねぇと思ってたんだが」
「たしかに、レイムさんはあなたが“ミスをしない”限りはあなたの側にいるでしょうし、【星の隷属者】もあなた以上の執政者が現れない限りはあなたを守るでしょうね
あの二人はあなたが優秀で民のためにありさえあれば『何者でも構わない』と思っているようですので」
「──、」
「騎士と大震の下部組織──、その両方を取り込める情報 あなたならもうわかりますよね?」
ザックフォードは苦い顔で舌打ちする。
「俺様の正体── か どうしてわかった?」
「わかりますよ だって、俺も“特別”ですから」
「!」
ガゴォンっ
物理的な施錠に加えて術的にも閉ざされていた扉が大剣による一撃で砕け散った。
「レイ・バークラント……!」
「まったく、嫌な方々だ うんざりしますよ……レイム・リーガル・アーカナイト」
最近、暇だからアニメ見てる
ちゃんと通してアニメ見るのって実は初めてだったりする
とりあえず蟲師おもしろい
エヴァンゲリオンの最終回で残念な気分になった
更新停滞の理由はそんくらい(蹴




