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第19話:懐疑



なにあれ おっきな鳥……? ──半熟震術師 リース


慟哭する者 ──【銃の王】シャルツ・ディバイト・アークエッジ


さすれば契約の呪に従いうぬらを伏魔殿まで送り届けようぞ ──【行き渡る者】の異名を持つ神獣 セラフィム


だいたいダメガネとはなんですか?! ──『大震』の下部組織、『雷の槌』の構成員


じゃあ略さずに言ってやるよ ダメメガネ ──『大震』の下部組織、『炎の森』のリーダー カイル・オックス


……疑え ──王国騎士団長 レイム・リーガル・アーカナイト




「ねぇ、どうやって海を渡るの?」


 リースは目の前に広がる大海を前に首を傾げた。


 ちなみにここまで来るのには軍馬を使って睡眠時間を含め1日ほどかかった。


「このへんにアイツがいるはずなんだが……」


「あ、あれじゃない?」


 シャルツが遠くの点にしか見えないを物を指差す。


「……、なにあれ……? おっきな鳥……?」


 こちらに近づいてくるにつれ徐々に鮮明になるそれは、明らかに羽根があるのだが……


「人間……?」


「何してるリース、構えろ」


「え?、え?」


「来るよっ!」


 シャルツが銃を構えたのと同時に、亜音速の翼がレグナ達の真上を飛び、衝撃波を投げつけた。


 それはレグナ達を避ける形で、地面に突き刺さった。


「慟哭する者」


 引き金を引いたシャルツが呟く。


 レグナが翼の主を捕捉して動き出す。


「ちょ、なにっ?!」


「神獣セラフィム やったらプライド高いけど自分を倒した者にだけは従う種族で、ここに縛られてる大陸の橋渡し役だよ」


 通り過ぎたそいつが停止し反転しようとした瞬間にレグナは跳躍しそれに斬りかかる。


「ふむっ……」


 あちこちが破れた青い服をきた、金髪碧眼の人間の女に翼を生やしたような見た目のそいつは、愉しげに口端を吊り上げた。


「たかだか(つるぎ)でわらわに立ち向かおうとする輩は久しいな」


「っ──!」


 片手をレグナに向けた突きだす。


 それだけで突風が発生し、レグナを遥か後方に吹き飛ばす。


 ザッ、と地面が削れた音がして空中で体勢を立て直したレグナが着地する。


 リースはなんだかよくわからないがとりあえず短剣をいくつかひっつかみレグナに駆け寄ろうとするが、シャルツに腕を掴まれ遮られた。


「ダメだよ、僕らにあいつの速度は掴めない 邪魔になるだけだ」


「っ……でも」


「レグナを信じよう?」


 リースは俯いた、が顔を上げると戸惑いながらも頷いた。






「おや? うぬらはいつかの……、あの時の術師はいまは居ぬのか?」


「あいつは死んだってよ」


「そうか あれほどの人間にはやはり2度と会えぬか」


 自ら風を生み出し揚力を得て浮かび上がるセラフィムは、空中に魔方陣を展開する。


「ちぃっ……多いな」


 レグナは苦い笑みを浮かべる。


 増殖を繰り返し教会のステンドガラスのような模様を描く。それに内蔵された魔方陣の数は、108


「あちらの女子2人を範囲の巻き添えにするのは酷かな? うぬら1人これに耐えきれば勝ちとしようか さすれば契約の呪に従い伏魔殿まで送り届けようぞ」


「ありがたいこって」


「ゆくぞ──」



 《神の息吹(ゴッドブレス)


 魔方陣1つ1つから打ち出されたのは、風の矢だ。その一本一本に秘められた魔力がその魔法が神話級の化け物の扱う存在だとレグナに伝えてくる。



 セラフィムという存在は神から『ありとあらゆる風』を吹かせることを許されていると言われる。

 人間に発見されたのは僅か2頭。そのうちの1人が、『行き渡る(ヴィシュヌ)』と呼ばれる彼女だ。


 ベリアルが現れる遥か前、『帝国』と『王国』の冷戦の時代──王国側には1人の強大な震術師がいた。

 彼はいつ暴発するかわからない戦争を止めるためにセラフィムと契約を交わした。帝国の存在する大陸であるパンデモニウムと王国の存在する大陸であるヴァルハラを渡る者を選別せよ、と。


 それ以来2つの大陸はセラフィムの力によって人の行き来はほとんど途絶えさせられた。

 王国に攻め入ろうとした幾多の帝国の船はすべて彼女によって沈められた。それほどまでに圧倒的な力を誇る神獣。



「たしかに、こりゃ化け物だわ」


 だが、セラフィムは震術師との契約をはね除けずに従っている。何故か、別に神獣という存在は人間に友好的な訳ではないのに──


 それはセラフィムが『人間に破れた』からに他ならない



接続(リンク)


 ウルスラグナの片方を投げ出し風の魔封剣を抜く。


「そんな物ではわらわの風は止まらぬぞ」


(んなことわかってるっての……!)


 【風障──鎧神!!!】




「ほぅ……、たしかあの男もそんな術を使ってきおったな」


 土煙に覆われ見え隠れする抉れた地面の傷跡が、剣士の直前で止まっているのを認めた。


「──よかろう わらわの敗けだ」


 剣士とセラフィムは笑みをかわす。




 かつて1人の震術師が神獣セラフィムを破り契約を交わした。

 男はその名をエクセリオンと名乗った。



     ◇


「先に行くぞ 【裁断者】」


 ナタク・エルステインは馬上でそれを聴いていた。

 発したのは徒歩でトホトボと歩いているスティア・クロイツ・マグナビュートだ。


 首を傾げるナタクの隣で、ジジっ…… と、雷が弾ける音がした。


 途端に、スティアが急加速した。ルシフの時に見せた磁力による反発加速術式だ。


「……盗作?」


 遥か遠くで点となったスティアの背中を見てナタクは呟く。





     ◇


「スティアはまだかよ?」


 カイル・オックスはつまらなさそうにたったいまぶっ倒した何人かの人間の中心に立っていた。

 彼は【大震】の下部組織、かつてゼクゥ・フィアレスの所属していた【炎の森】のリーダーであり、クーデターに対する抵抗勢力の中心だっだ。


 赤髪の凶悪そうな目付きをしてピアスのついた口に煙草をくわえた、見るからにヤンキーフェイスなカイルは手のひらに炎を作り出して前方に軽く放った。


「や…やめ……」


「ちっ、雑魚じゃ食い足りねぇ」


 カイルが背を向けて歩き出して約3秒、炎が爆発的に膨張した。


「レイムはどうした、騎士団どもォっ クーデターなんざ起こすなら出し惜しみなんかしてんじゃねーよ!」


「何を言っている……?」


「あぁ?」


「クーデターを起こしたのはお前らだろう 術派め」


 騎士の一人の放った言葉が彼の耳に届いた、瞬間に


「何……?」


 雷撃の槍が彼の背を貫いた。



「テ……メェ……?!」


「おや 一撃では倒れませんか 流石は“炎の森”の長」


「何、しやがる ダメガネ」


「ダッ、ダメガネとはなんですか?!だいたいあなたは」


「じゃあ略さずに言ってやるよ、ダメ、メガネ」


「っ……、あなたと言う人はこれだから 我々の崇高なる目的も理解しようとせずに同士をどったばったと倒しまくって「待て いま同志って言ったな?」


「言いましたが、何か?」


「俺が刈ってたのは騎士団だけ、つまりは【雷の槌】もこいつらの同志でクーデターに一枚噛んでんのか?」


「……!!」


「……やっぱダメガネだわお前」


「ふざけなさいここであなたを倒せばそれで済むことっ!」


「墜ちろ」


 《地に墜ちた焔(プロメテウスの焔)》


「……ハれっ?」


 天空から垂直に落下した火柱がダメガネに直撃した。


「会話に詠唱を交えるなんざ常套手段だろ、バーカ」


 言い終える直前にどこかの空で轟音が起こり雷と炎が交差した。


「ったく、どいつが敵でどいつが味方だぁ……?」


 面倒だから騎士団以外にも雷撃系や無属系の術者に会ったら問答無用で叩きのめしてやろうとカイルは思う。



     ◇


 第一騎士団隊舎の一室。


  “疑え”


 レイム・リーガル・アーカナイトは考える。


 本当にクーデターの首謀者はスティア・クロイツ・マグナビュートか? ならばその目的はなんだ? あいつが“隷属者”などと異名を取り、その不名誉な名を容認するあいつがクーデターを起こすメリットはなんだ? 俺が闘うべきはなんだ? あいつがザックフォードのために戦うのはザックフォードがこの国で最も有能な執政者だからだ。ザックフォードが有能である限りあいつにそれを倒そう働きかける意味はない。いや それすらも疑惑の対象とすべきか? 何か別の要因が、いや 違う。俺がやつを疑うのは半ば嫉妬に近い感情に過ぎない。首謀者として処断するにはまだ早急。別の可能性を疑え。

 単純に政権を狙うやからはどうだ? クロストウェイ、リンドブルム、アガーテ、ダークライ。違う……、やつらに軍を纏め上げる技量はない。騎士団──、可能性は捨てる訳にはいかないが低いだろう。大規模な動きがあれば俺が勘づけるはず。関与があったとしてもおそらくは個人レベル。『大震』はどうだ、スティアでなくとも【裁断者】や【白声】は? いや、クロストウェイ同様、『大震』の本隊は軍としてよりもむしろスティアという一人の長が存在するだけの傭兵団に近い。その戦力にカリスマ性はあれど一団の指揮という能力においては低いだろう。これもノーだ。


 となると残る可能性は──


「近衛兵長 レイ・バークラント……」


 やつならば──、王の側近である近衛兵長に選ばれるはずの人材、当然一団を纏め上げる指揮能力もある。スティアや俺と同様“ザックフォードの秘密”を知る機会もあったのではないか? そして俺達と異なり──、



 レイムは思考を止めた。そして頭の中で自身の信念をもう一度唱える


 “疑え”、と


(確信するな、心に止めろ 何もかもあくまで推論に過ぎん、自分の思考すらも疑う対象の1つ レイ・バークラント、スティア・クロイツ・マグナビュート、アーエイツ・フォン・クロストウェイ、シルバリオ・ガーゼス 可能性がある限りは、全てを疑え……!)



 レイムは剣を取った。抜き、刀身を確認する。長年愛用する自身の武器すらレイムの疑う物の1つ。



「レイム様!」


 レイムは即座に騎士の男に抜き身の剣を向けた。


「お前は誰だ?」


「イックス・レディ「第2騎士団所属 イックス・レディオートには妙な癖があるのだよ ノックの代わりに床を二度と蹴るのだ、必ず な」


「……っ」


「貴様の剣も、鎧も、エスカッションも、たしかにイックスの物だが……


もう一度訊こう、貴様は誰だ?」


 騎士の格好をした男は剣を抜こうとした。刹那──、彼は仰向けに倒れた。


「近衛兵団 フレム・レムオル、か」


 騎士は左胸に圧力を感じた。鎧が踏み砕かれている。彼をほぼ垂直に見下す形でレイムの顔がある。


(蹴り…倒されたのか……? 動きがまるで見えなかった……)



「“それ”はどこで手に入れた?」


「イックス・レディオートを殺して」


「違うな 血痕がない、震術にしても対象の対術鎧の中身だけを壊せる術など存在しない


イックス・レディオートもクーデターに参加した一員か? 大方俺を欺く自信がないから代わりに貴様を行かせた といったところか? 阿呆が」


 フレムは嫌な汗が止まらない。

 全て、レイムの言う通りだった。イックス・レディオートはレイムを欺く自信がない、と言った。

 元々イックスは伝令役ではある。が、第ニ騎士団と第一騎士団は情報のやり取りを余り必要としない。

 そのためレイムとイックスにはほとんど面識がない。過去にたった数度の擦れ違ったことがある程度だ。


 だが、これだ。


「俺とスティア・クロイツ・マグナビュートの、『騎士団』と『大震』の同士討ちが狙い──となると首謀者はやはりレイ・バークラントか」


「さあな」


 フレムの精一杯の虚勢だった。

 見透かしたようにレイムは薄い笑みを作る。


「心拍数が変わったぞ?」






 ・名前の由来その2


 グレイプニル


 作中でも出てるように戦いの神様がフェンリルを縛るときに用いた切れない紐の名前

 むしろ“圧力→身動きを取れなくする→グレイプニル” まで決めて『○○のテスタメント』って方を決めるのに手間取った

 欲望に決めたのは“過ぎた欲望は身動きを取れなくする”みたいなのとフェンリルがなんとなくそれっぽいイメージがあったから



 セラフィム


 熾天使、天使階級の最上位

 ケルビム、ヴァーチャーなんかは響きがそれっぽくないなぁ……、と


 レイム


 サモンナイトの吟遊詩人……かなぁ?





 魔王の大半は感覚でつけました

 まともに考えたのはエメトぐらい



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