第17話:宣戦布告
いいえ、後悔してるのよ ──とある酒場の店主 アグリア・オックス
私が出る、案内しろ ──王国最強の震術師 スティア・クロイツ・マグナビュート
僕的にはこーいうやり方はあんまり好きじゃないんだけどなぁ…… ──FIFTH エヴァンス
気をつけて、スティア あいつ……レグナより速いよ ──半熟震術師 リース
あのとき、俺は血が沸くのを感じた ──BLADE
ベル・バークラントは酔っ払っていた。誰がなんと言おうと酔っ払っていた。むしろ酔い潰れてテーブルに突っ伏していた。そうでなければ隣から──、アグリア・オックスからこんな不穏な会話が聴こえてくるはずがなかった。
「この子? もう潰れてるわよ、大丈夫 話を進めましょう」
「ええ 報酬は2000万よ、助け出して欲しいのは『カイゼル・グランローグ』と『シーク・ツェイベル』 2人とも【半神】よ」
もう1人の声は低く小さくて酷く聞き取り辛いが、どうやら男性のようだ。横目に覗き見ると黄色の髪と淡い琥珀色のサングラスをしている。耳にはピアスが光っていた。
「気前がいい?、切羽詰まってるの いいえ、後悔してるのよ」
「だってあの子達にも普通の幸せを選ぶ権利ぐらいあるはずでしょ……」
「『ベリアルホープ』なんてモノを──、人間兵器なんて産み出してしまったことを、ね」
(ベリアルホープ……? 人間兵器だと……)
「大丈夫よ あいつにつけた盗聴機によるとプロトタイプももう時期動くみたい、隙を伺って頂戴」
「あら、そう機嫌悪くしないでよ どうせなら久々にチームでも組んでみたらどうかしら? ねぇ【拳の王】」
◇
ドゴォォンッ!!!
町中に轟音が響いた。
「!!」
『警戒警報LV4 結界の外壁部に魔王級の悪魔の存在を確認、攻撃を受けています 繰り返します、警戒警報LV4 結界の外壁部に魔王級の悪魔の存在を確認、攻撃を受けています』
「バカな……なぜ連絡より先に警報が鳴る……」
LV1の警報。これは比較的力の大きい悪魔が近くを通過した時に鳴る物で守備隊にだけ伝わる程度の物だ。
LV2の警報。これは悪魔が魔物の軍団を率いて攻めてきた時に鳴る。
LV3の警報。これは複数の悪魔が攻めてきた時に鳴る。
そして、LV4。これは実際に結界が破損する恐れのあるレベルの攻撃を受けた時になる物。
「スティア様っ!」
守備隊の1人がレグナ達の病室に飛び込んでくる。
「何があった?」
「魔王級の悪魔が「警報は聴いた、なぜ無線を使わない?」
「それが……無線の電波がなぜか『遅れて』て使い物にならないんですっ!」
「ッ……、エヴァンスかっ!」
立ち上がろうとしたレグナを──、リースが制した。
「レグナは寝てて どうせエヴァンスの『遅延』と戦えるのは震術師だけ……足手まといよ」
1つの確信。『火炎の弾丸』、かつてリースがエヴァンスに放ったそれをエヴァンスは咄嗟にとはいえかわせなかった。
おそらくエヴァンスの『遅延』は震術には──他人の隷属下にある魔法に対しては無力なのだ。
「行こう、スティア」
「──、ああ」
頷くとスティアは守備隊の若い男に視線を向けた。
「私が出る、案内しろ」
「はいっ!」
「僕的にはこーいうやり方はあんまり好きじゃないんだけどなぁ……」
『騎士団』と『守備隊』には明確な差がある。
騎士団とは『悪魔を殺す』ために作られた部隊だ。かつての大戦では何人もの上位悪魔を葬った。
『偉大なる剣』と呼ばれた大戦時の大悪魔と王国第一騎士団長 レイム・リーガル・アーカナイトの一騎討ちは1つの伝説となっている。
だが『守備隊』はそうではない。彼らの目的はあくまで時間稼ぎだ。『大震』という大量破壊兵器を持つ彼らは対象を殺害せずとも生存するだけで勝利することが出来る。
当然、両者のあいだには戦闘能力に大きな隔たりがある。
王国第三騎士団を全滅させたエヴァンスに守備隊の相手など赤子の手を捻るような物だった。
「早く大震かBLADEかどっちか出てこないかなぁ……」
エヴァンスは大きく欠伸する。
無数の屍が転がる、その丁度真ん中で……
◇
スティア・クロイツ・マグナビュートは強く奥歯を噛んだ。
地面に転がる人間は明らかに事切れている。戦闘能力こそ『騎士団』や『破壊者』には劣るが彼らは1人1人が並の戦人程度ならば凌駕できる戦力は備えているはずなのだ。
(第8守備隊は……全滅か……)
足元に転がる部隊長のレックス・サークレットが無念そうにスティアに手を伸ばして、死んだ。
「ああ、やっと来ました?」
屍の中心に立つ嘲笑するような薄い笑みの魔王──
「あれ そっちの子は見覚えありますね? たしか【刃の王】と一緒に居た……」
「リースよ」
「ってことは【刃の王】も中に? よかったぁ、居なかったらどうしようかと思いました」
「気をつけて、スティア あいつ……レグナより速いよ」
「わかった……」
スティアは両手の手のひらを向かい合わせに構え、電力を練る。
「来い……!」
「……、意気込まれても、僕は別に戦争しにきた訳じゃないんですよねぇ」
「何?」
「【刃の王】に伝えてください 宣戦布告です」
◇
「早、かったな?」
スティアとリースは無傷で戻ってきた。
しかしその表情は重く、暗い。
「エヴァンスとやらの言葉だけをそのまま伝えてやる」
3日後──、Secondの超広域破壊魔術が王国の貿易ルートにある国を全て破壊します
なんでも『神罰』とかいう特殊な術式らしくて、街として原型が残るのは“最強の結界”のあるヴァルクリフぐらいでしょう
術式の規模は完成すればこの星の1/5ぐらい、ってSecondは言ってましたね たしか
この術式を止める方法は、Secondを殺すことだけです
Secondは伏魔殿にある帝国アグリードの地下神殿に居ます もちろん他の魔王も
どうするかはあなた方に任せますよ
では、あなた方の足掻きに期待してます
「それだけ言うとさっさと消えやがった……ふざけたやつだ」
スティアは苛立ちを隠さなかった。
スティアはエヴァンスを殺そうとした。逃げられたのだ。どうやったのかはわからないがエヴァンスは文字通り消えた。
「……時間がない直ぐに伏魔殿に攻め入る 王国には私が通「無理だよ……」
張り付けたような無表情のシャルツが言う。
「少なくともいまのままじゃ僕達はあいつには勝てない 乗り込んでも無駄死にだよ……」
【First】 グラナの能力は《反魔法》
元より『震術』に頼りきった人間の勝てる相手ではないのだ。
そもそも悪魔とまともに肉弾戦を出来る人間などレグナ“しか”存在しない。
根本的な身体能力が違い過ぎるのだ。
「勝てない、ではなく勝たねばならない」
スティアが断定的に言い放つ。
それは普段合理的で論理的なスティアらしかぬ言葉だ。とシャルツは思う。
「これ以上後手に回るわけにはいかん、少なくとも敵の一人は結界の破壊が可能なことが割れている
神罰術式の使い手もこいつだ、最低でもこいつだけは消さねばなるまい」
罪無き民を守るために
それがスティアが焦る、そして多くの騎士団や守備隊の面々が戦う理由。
かつてはシャルツもそうだった。
「僕は……賭けられないよ 出来るなら【銃の王】なんて辞めたいんだ」
シャルツの出身は『帝国』だ。圧倒的な悪魔の力で滅びる帝国からたった1人逃げ延びた。
屍の群れ、瓦礫の山、血まみれで笑みを浮かべる悪魔──虐殺。地獄のような光景にシャルツは慟哭するだけだった。
そして大戦、6年前まだ少女だったシャルツの耳には彼らの、彼女らの悲鳴が克明に刻み込まれている。
その記憶が彼女に叫ぶ。
戦うのは、嫌だ……
「流されるままに戦ってきたけど、勝ち目のない戦いなんて僕はしたくない……」
「勝算は、あるだろ」
レグナが右足を地面に突いた。
治りきっていない傷口が悲鳴を挙げるがレグナはそれを無視する。
「《反魔法》では『刃神』は止められない……そうだろ?」
「たしかにそうだろうけど……」
「あのとき──、俺は血が沸くのを感じた」
それは確信だった。
「俺はまだ強くなれる 必ずあいつを超えてみせる だからお前の力を貸してくれ……、リトル」
「……ズルいよ」
リトル──そう呼ばれたシャルツがいまにも泣き出しそうな顔になる。
「恐いんだよ 誰かを失うのが…… それでも何も感じなくなっていくのが…… 自分が人間じゃなくなっていくみたいで だって僕……ゼクゥが死んだときだって涙も流れなかった……」
レグナはシャルツの肩に手を回し、そっと彼女を抱き寄せる。
「──…」
そうして耳元で何かを囁いた。
「え……?」
シャルツを放して、レグナが笑む。
「大丈夫、お前が居れば俺は死なないさ」
「え、それって、あの……えと……」
ぼんっ、とシャルツが湯だったように頬を赤く染め上げた。
((何?! レグナは何を言ったの!?!?))
リースとナタクが内心で叫んだ。
キャラやら武器の名前の由来
・ウルスラグナ
どっかの神話の戦いの神かなんか “勝利”の武器だった名残
・カイン&アベル
まんま旧約聖書のカインとアベル
けどデヒルメイクライの『エボリー&アイボリー』って名前に惚れて○○&○○で違和感のないやつで考えたから厳密にはこれかな?
・レグナ
ドラッグオンドラグーンの青い龍、この名前かっけぇと思った
そのうちアンヘルも出てくるかも、あれ? アンヘルであってたっけ?
・リース
なんかあった気がするけど忘れた
・シャルツ
TODのシャルティエ、リオンがシャルって呼んでたのから“ツ”つけたらなんとなく貴族っぽい名前になるなぁと
・アグリア
FFTのあの人ってたしかアグリアス・オークスだったっけ? まんまだねぇ……
・スティア
特に由来なしかな?
そのうちガフガリオンとかアルガスも出てくるかねぇ
ええ、タクティクス大好きですww




