第15話:【First】
あーあーつまり何か? お前は性善説でも主張してんのか? ──王 ザックフォード・WS・エクセリオン
あらァ 引きこもりちゃんが遂におでましィ? ──青い炎の震術師 シファ・バルバローネ
っ……魔王、か?! ──BLADE
俺の能力は《反魔法》 震力、魔力を用いた攻撃は俺の前に全て平伏す ──【最強の魔王】グラナ
最、強…… ──【銃の王】シャルツ・ディバイト・アークエッジ
っ……!! ──王国最強の震術師 スティア・クロイツ・マグナビュート
私が治す! ──半熟震術師 リース
ザックフォード・WS・エクセリオンはガリガリと頭を掻いた。
「あーあーつまりあれか お前は性善説でも主張してんのか?」
ザックフォードの前にはいま『本の国』から来た、と主張する男がいる。
ヴァルクリフでナタクを襲った女の話は既にザックフォードに届いていて王国にあるライムラントの高位震術師のリストから『シファ・バルバローネ』という人物だと割れていたのだが、男はそれを『シファ・バルバローネ』ではないと言い張るのだ。
「顔も、使う震術系統も完全一致、指紋やらなんやら含めて疑う余地はまっったくなし お前の話をどうやって信じろってんだ?」
「死んでるんです」
「……はぁ?」
「シファ・バルバローネは数年前から“生きた死体”なんです
身体こそ生きてますがある術式に失敗して魂が存在しない
そのシファ・バルバローネが動き出すなんてことは絶対にあり得ません」
(魂が消える術式だと……?!)
ザックフォードはいままでに読んだ1万冊近い魔法書から知識を引きずり出す。
「っ……、人間の天使化か!?」
「……、はい」
「マナの干渉による人体変化の類いの術式は国家協定違犯だろ? それを俺に話してただで済むと思っているのか」
「関係ありませんよ」
「何?」
「ライムラントは、もう滅びましたから」
◇
「お前もその女を見たのか? 容姿はどんなだった?」
「15歳ぐらいの少女だ 背は……こいつよりも少し低かった」
と、シャルツを指す。
「なっ……?!」
激怒するシャルツを放ってベルは説明を続ける。
「髪は黒、瞳は少し赤みがかった茶色でパッと見は普通の服に見える白い法衣を着ていた そうそう、丁度あれぐら……」
通りの人混みの中で子供を見つけてベルは急に言葉を止めた。
「あれだっ!」
叫んだ。
「バカッ」
レグナが言うのと同時にこちらに気づいた女が街の外に向けて駆け出す。
(この先は……、南門か 閉鎖、は意味がない 門の強度なんかナタクの障壁に比べたら全然脆い)
クソッ 人混みが邪魔で全力で走れない……!
焦燥するレグナの隣でベルがシャルツの腰から銃を抜き取った。
「伏せろ! 撃つぞ!」
!!!
一瞬、パッと場が静まり返り人の波が左右に割れる。
「ナイスっ……」
レグナが加速した。
「速い……!」
弾丸のような速度で駆けるレグナと女の距離は少しずつしか縮まらない。
「ちぃっ……」
門の手前まで来た。
凄まじい速度で疾走する女とレグナを見て門番が門を閉め始める。基本的に出国証がないと出られないシステムになっているヴァルクリフでは2人の姿は脱国者にしか見えないのだろう。
「……の……に……」
風に乗って微かに届く詠唱の声──、
「閉めるな!」
レグナは咄嗟に叫んだ。その程度で閉門が止まるとは思っていなかったが予想外に門番はその声に、一瞬動きを止めた。
《神へ還す火》
青い炎が門に突き刺さり、対魔法障壁を施された門が溶けた。
(あらァ? まだ追って来てるわねェ)
女はレグナの姿を見ていない。追撃者の気配だけで逃げていた。
(《神へ還す火》を見ても引かないってことは少なくとも『大震』クラスの強さは持ってる訳ねェ せっかく【星の隷属者】撒いたのに、めんどくさいわァ)
唖然とする門番の横をすり抜けて門の外に飛び出す。
想定外の人物がそこにいた。
「あ? なにやってんだ? お前」
「あらァ 引きこもりちゃんが遂におでましィ?」
すれ違う寸前にそんな会話を二人はした。
鎌の一閃と青い炎が交差する刹那に、
「ちぃっ……」
鎌の男が舌打ちする。女は既に射程圏から遠く離れていた。
「まあいい 遊び相手はまだいるからな……、『BLADE』」
「っ……魔王、か?!」
ウルスラグナを抜く。
「【First】 グラナだ、よろしくな」
言葉を発するのとほぼ同時に、グラナの鎌がピクリと動いた。
レグナがウルスラグナを構える。
、とグラナが鎌を下ろした。
「……、何のつもりだ?」
「はぁ? お前、まだ戦えるつもりでいるのか」
途端にレグナは足元に激痛を感じた。
「つぅあああああっ!?」
右足の膝関節の付近がバッサリと切断されていた。
「くだらねぇ バオウもドレイクもエメトもこんなやつ相手に何を手こずってたんだ?」
つまらなさそうに呟くとグラナはレグナに興味を無くした。
直後に、閃光の弾丸が飛来した。
許されざる者──、だがそれは命中の寸前で突然砕けた。
「?!」
『許されざる者』を放ったのは言うまでもなくシャルツだ。そして『許されざる者』は『刃神』に匹敵する威力を持つ彼女の、【銃の王】の最大の一撃。
(何を、した……?)
焦るシャルツと裏腹にグラナはニヤリと笑みを浮かべる。
「俺は自分の力を誇示したがるタイプだからな、木偶の棒のお前らにわざわざ解説してやるよ」
侮蔑に満ちた口調でグラナは言う。
「俺の能力は《反魔法》 震力、魔力を用いた攻撃は俺の前に全て平伏する」
「?!」
スティア・クロイツ・マグナビュートも、【銃の王】である自身も、おそらくナタク・エルステインの《分解震》でさえも、こいつには通用しない……?
そして【刃の王】であるレグナをこいつは一撃で沈めて見せた。
勝てない──、とシャルツは思う。
例えベリアルを打ち倒した『四人の王』でも、『大震』を含めた王国の全戦力を引っ張ってきても、この男1人に勝てない。
(最、強……)
しかし同時に疑問が浮かぶ。
なぜこの男はいままで動かなかった……?
単体で王国を凌駕する戦力ゆ持ちながら……
そういえばベリアルも伏魔殿から動かなかった。あの時は当時の『大震』が道を抉じ開け『四人の王』と『黒鉄の翼』がそこへ乗り込んだ。
(伏魔殿には……何がある……?)
帝国の残骸、死都アグリード、
「マナの穴か?!」
「ほぅ……、人間にマナの知識があるか」
伏魔殿がそう呼ばれ始めたのはベリアルが現れる以前だ。
それ以前から圧倒的に悪魔の出現率が高かったことからそう呼ばれていた。その理由は大地のマナの量が少ないからだ。
帝国には結界の技術が無かったのではなく、結界を構築出来るほどのマナがなかったのだ。
「魔王なんて呼ばれる連中はマナの中では著しく活動を制限される 力を蓄えてようやく《反魔法》を維持したままこっちに出てきたんだが、肝心の獲物がこれじゃ興醒めもいいとこだ」
「ならどうして他の魔王は……?」
「俺に比べりゃ力が小さいのと、負担を俺が引き受けてるからだ」
グラナは鎌を振り上げる。
「もういいだろ、殺すぜ」
ざくっ
「あ……?」
「レグナっ……」
千切れた足の代わりにくくりつけた魔封剣を支えにしてレグナは立ち上がった。
「レグナ……だと?」
「オ……」
フラフラとよろめきながら、しかし
「オォォォォッ!!!」
レグナは吼えた。同時に地面を蹴る。ほぼ片足であるにも関わらずその速度は変わらず弾速を思い描くほどだ。
「……」
グラナは鎌を動かした。不可視の刃はレグナの腕に向かって振るわれる。
しかしそれは弾かれた。
「鎧神……?!」
いつ発動したのか傍目のシャルツにすらわからなかった。
レグナは構え、一閃する。
『刃神』
──それはいままでにない異様だった。
(青い、刃神……?!)
いままではあまりの破壊力に空気が裂けて歪んで見えることはあったが、クッキリとその刃が色を持ったのは【銃の王】として共に戦ってきたシャルツでさえ見たことがなかった。
「……、ちっ」
グラナは片手で振るっていた鎌を両手でしっかりと握り締めた。
『魂を刈る者』
鎌がドス黒い力を纏い、黒と青の刃が激突した。
双方の“力”がぶつかって、砕けた。
「……、そうか 『青の断罪』か」
崩れるレグナにぽつりと呟くとグラナはそのまま背を向けた。
「何を……?」
「見てわかんねぇか? 帰んだよ」
振り返ったグラナの目にはなぜか涙があった。
◇
スティアはヴァルクリフに帰還した。
「……、何だ?」
着いた途端に守備隊に取り囲まれて口々にいろいろと説明されたが、混乱しているのか要領を得ずに話の整理に苦労した。なんとなく伝わった事柄を纏めるとどうやら南門が内側から破られたらしい。
ナタクの負傷、そして『旅の破壊者』の負傷──
スティアとリースは病室へ急いでいた。
(不味いな…… いまあの二人を失う訳にはいかない)
ほとんど蹴破る同然に病室の扉を開けた。
「っ……!!」
全身に膿の滲む包帯を巻いたナタクと、右足をザックリと切断されたレグナが居た。
その隣に力無く項垂れてレグナの右足の“残り”を抱えるシャルツ。
スティアは咄嗟にリースの目を覆い隠そうとしたが、それよりも先にリースは二人の姿をしっかりと見据えていた。
不意にスティアの横をすり抜けたリースはナタクの手を取った。
「話せる?」
「……可」
ナタクが辛そうに唇を動かす。
「治癒震術の術式を教えて 私が治す!」
力強くリースは言った。そこには微塵の動揺もなかった。
ヴァルクリフ攻防戦の東門での没シーン
『(怠け者のリトル……か)
いままさに街に踏み込もうとしている魔物の大群を前に、【銃の王】は思う。
『四人の王』──六年前の大戦を終わらせた英雄。彼女にとってその名は重荷でしかなかった。
彼女は血みどろの自分を捨てたかった。
だから彼女は手始めに自分の名前を捨てた。
銃を握ることを止めた。
誰かを守ることを止めた。
代わりに直すことを仕事に選んだ。
『怠け者のリトル』
彼女はそう呼ばれているいまの自分が好きだった』
ほんとはもうちょい続くけど、没になった能力が絡むからカットしときます
ここ自分では結構気に入ってるから別の形で書き直したいなぁ




