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第14話:焦燥



ルシ、フ、我は、下手を、打った、よう、だろう ──【真理を嘲る者】 エメト


『ベリアルホープ』って私達が思ってたよりずっと優秀みたいよ ──【機神】 ルシフ


ムササビだ! ──半熟震術師 リース


末恐ろしい…… いや既に恐ろしいか ──王国最強の震術師 スティア・クロイツ・マグナビュート


レグナ 先ずその手を離そうよ? ──怠け者のリトル


ともかくその女を捜そう ──BLADE





 女はとりあえずは追って来なかった。


 酷い火傷を負ったナタクに肩を貸しベルは守備隊の詰所に辿り着いた。同時にナタクは倒れた。

 治癒震術は自分に向けるのが難しい。だけどこれほどの火傷を治せるレベルの震術師はナタク自身しかいない。


「……契約、者」


 と、ナタクが倒れる寸前に呟いたのをベルは聴いた。


「契約者……」


 ベルにはその意味がわからなかった。

 わかる、であろうスティアはいまヴァルクリフに居ない。


 あの男ならば──、


 あの男はゼクゥ様と親しげに話していた。

 ナタク様とも親しいらしかった。


 そもそも王国最強の部隊である『大震』にタメ口をきく人間などそうはいないモノだ。


「……」


 レグナ、と呼ばれていた破壊者(バスター)を探すためにベルは走り出した。


(あの女がもう一度攻めて来ないとは限らない……! なんとかしないと……)



    ◇


「ルシ、フ、我は、下手を、打った、よう、だろう……」


 【第4魔王】エメトは血みどろの身体を引きずっていた。


──…いまどこ? 何があったの?


 魔力による直通の念話魔法で会話している。


「例の、ベリアル、ホープの、場所だ なんとか、行動、不能に、した、が、我も、深い、傷を、負った」


 エメトの傍らには同様に血みどろの細身の剣を持った少年が手足をゴーレムに拘束され血走った目を剥いている。

 拘束が解けた瞬間に少年はエメトを殺すだろう。



──…わかった、《機械仕掛けの大天使》の最高速でそっちに行くわ


「お前の、腕は、まだ、二人分は、支えて、翔べん、だろう?」


──…大丈夫よ、あなたが戻ったら紹介するわ 『ベリアルホープ』って私達が思ってたよりずっと優秀みたいよ


「………?」




    ◇


 スティア・クロイツ・マグナビュートはリースを連れて王都を出て林の中を歩いていた。

 ちなみに行きもそうだったが、震術の理論を教えながら歩いている。



(飲み込みが早い……いや 早すぎる……)


 ゼクゥ・フィアレスは火術に特化した天才だった。逆に言えば炎以外には静電気一つ起こせなかった。


 ナタク・エルステインも同じだ。彼女は無属性の特化という稀有な属性を持つがそれ以外の術はほとんど使えない。


 スティア自身は7歳から震術を学びおよそ20年の年月をかけて練磨し続け、王国最強と呼ばれるまでの使い手となった。

 それでも適正のなかった無属性は使えないし、火術よりも雷術のほうが得意だ。


 だが、リースは違う。


 彼女は属性こそ光だが本来『その他』となるほどの他の属性の才に恵まれ過ぎている。


(そんな者があり得るのか……)


 図書館から【星の隷属者】の名で借りてきた大量の本を抱えて満足気な笑みを浮かべているリースを横目に見る。


(……あり得る、か あの女はそうだった)


 スティアは『四人の王』の中で最も異質だった女を思い浮かべる。

 名前すら名乗らずに自身を『マスター』と称し、スティアを超える震術を軽々と操って見せた女。


 それまで最強の震術師を名乗っていたスティアは初めて人間に一対一で敗北した。


 その日からスティアは王国最強と名乗っている。王国の外には自分より強い震術師が居ると知ったからだ。



 ……死んだ人間のことを考えるのはよそう。


「……さて、先ずはこいつをなんとかするとしようか」


 スティアは潜む悪魔の気配に身構えた。


 ……が、ふと構えを解く。


「リース やれるか?」


「え……?」


「私は手を出さん 一人でやってみろ」


「……ん わかった」


 リースは手の内に短剣を忍ばせた。


「シャッ!」


 木上から猫のような猿のようななんだかよくわからない悪魔が飛びかかってきた。スティアの強さを察したのか、リースに向けての跳躍だった。

 それをリースは身体を捻りかわし短剣を投げる。命中するよりも速く悪魔が真横に跳んだ。腕の下から翼のような物を広げて減速し再び木を蹴る。


「ムササビだ!」


 リースが目を輝かせた。

 (リース曰く)ムササビ悪魔は木を足場に再び跳び上がる。枝や幹を足場に高速で跳ねる。


 リースが短剣を放つ。が、それを潜り抜けるようにして突っ込む。


「!!」


 ザクッ!


 リースの腕に爪痕が走る。地面に足を着くのは一瞬で再び跳躍する。


 リースは2本の短剣を投げた。


 それらは跳び去ったあとの樹に突き刺さる。


 最後に悪魔と逆方向の樹に短剣を投げつけた。


「アトモスフィアは網を吐く」


 詠唱──、一手で戦局は逆転した。


 それぞれ木や地面に突き刺さっていた五本の短剣を無数の雷の糸が繋ぎ、


「ぎゃっ!?」


 高速で木から木へと跳躍を続けていた悪魔は止まれずにそれに突っ込んだ。


(楔を打ち込んでの陣形雷撃による捕獲術式、《紫雷の瀑牢》か……)


「えーっと、周りが林だから攻撃範囲を絞った術式は……《地獄の熱風》じゃなくて、《紅炎》でもなくて、あ そうそう


“その怒りは神をも滅ぼす”」



  《火龍の咆哮》


 完全に威力をコントロールされた炎の砲撃が悪魔を撃ち抜いた。



「……こんなところ?」


「合格、といいたいところだがあの程度の悪魔に手傷を許すのは感心せんな」


「げ……」


 リースはげんなりした。リース達は同種の悪魔の群れに囲まれているらしかった。


「手本を見せてやる」


 スティアは不敵に笑うと、『震術』ではなく『神術』を使うイメージを組み立てる。


(大地に流れるマナを取り込むイメージ……)


  ──降誕


 《激怒する雷神》


 狭い林を無数の雷撃の槍が走り悪魔だけを正確に串刺しにし、電熱がそれを焼いた。


「……あの程度の相手ならば広範囲術式の一撃で捻れるようになれ レグナと並び立ちたいならな」


「うっ……、先は長い」


 リースは嘆くが、スティアはまったく別のことを考えていた。


(つい2週間ほど前までは《火炎の弾丸》と《障壁》しか使えなかった少女が、《紫雷の瀑牢》に《火龍の咆哮》、か……)



  末恐ろしい……


 いや 既に恐ろしいか……





    ◇


「契約者だと? ナタクがそう言ったのか……?!」


 レグナは思わず息を切らしているベルの両肩を握り締めた。


「ナタクに会わせろ そいつは、」


「レグナ 先ずその手を離そうよ?」


 咎められてレグナは慌てて手を離す。


「ナタク様は倒れられた…… 命に別状はないそうだが、かなりの重症だ」


「……っ」


 【裁断者】 ナタク・エルステインはあらゆる戦場から無傷で帰還したことで有名だ。攻め手の派手さはないが、彼女の防壁震術はそれほどまでに強固なのだ。


 王国にとって謂わば『大震』の存在とはジョーカーだ。相手の手札がなんであろうが叩き潰す切り札。

 そのうちの2人を、あの女は軽々と踏み砕いた……


「契約者とは一体なんなのだ……?」


「……言えない」


 レグナが答えた。


「なぜだ……?」


「この国の国家機密だからだ 俺が言えるのはある魔法を使った人間を『契約者』と呼ぶこと、それだけだ


 『かの魔法を知ることを禁ず』

 『かの魔法を学ぶことを禁ず』

 『かの魔法を使うことを禁ず』


俺だって偶然知ったんだよ」


 偶然、か…… とシャルツは思う。


 だけどあれは偶然ではなく必然だった。

 レグナが【BLADE】である以上知らなければならない物だった。


 ベルは納得いかないようだったが、やがて諦めたように小さく息を吐いた。


「契約者とは、私達の敵なのか?」


「……ああ」


 シャルツがレグナの腹をついた。

 喋りすぎだよ、とその目が語っていた。




「ともかくその女を捜そう」







 没キャラ


サロメ・グロスト(178)


外見17〜8歳。ベリアルの娘で純血の悪魔。やる気なかったのに呼び出され魔界に帰る術がなくて仕方なく人間に見つからないように洞穴でひっそりと生活していた。弟がいてブラコンで愛情表現が屈折しまくってる


 氷系魔術の達人


 ・没になった理由


 弟のほうの設定変更に伴い無理がでた



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