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スケッチブック

作者: ナイン


絵を描くのが好きだった。


特に絵が上手い訳では無い。普通より少し描ける程度だし、賞を取ったことも無い。


ただただ、自分が残しておきたい思い出を自分の絵で表現したい。そういった理由だった。


僕は高校時代の時に使用していたスケッチブックを見返していた。


懐かしい絵が多かったり、今見返すと酷い絵ばかりだった。


そんな中、最後の1ページに女の人の絵があった。


今でも思い出す。高校時代に付き合っていた彼女を描いたものだった。


他のどの絵よりも上手く描けており、自分の本気度が今でも伝わってくる。


この絵のように今でも彼女は笑っていてくれるだろうか。


彼女は優しかった。僕が何をしても笑っていてくれる。間違っていたら怒らないで優しく注意してくれる。お世辞抜きにしても優しい人だった。


でも、僕は彼女の手を離してしまった。


大学が離れると知って、遠距離恋愛出来る自信が僕には無かった。


今でも後悔している。彼女の手をもし離していなかったら。僕の人生はまた変わっていただろうか。


彼女は僕の事をどう思っていたのだろう。別れてもうすぐ1年。僕の事なんて忘れてしまったのだろうか。


僕はまだ忘れられないだろう。これからも、ずっと。


彼女の優しさを、僕以外の誰かが好きになったとしても、隣で見守っているのは僕だけでいたかった。彼女の隣は僕だけの特等席でいたかった。


僕は選択肢を間違えたのかもしれない。それに気付いてももう遅いのだけれど。


僕はいつの間にかスケッチブックに絵を描き始めていた。


最後にするから。彼女との思い出はこれで最後。


だから、1つだけ。僕が描いていた未来を描かせて。


彼女と共に、幸せな朝を迎えたかった。


朝、目が覚めたら隣には彼女がいる。それだけで僕は幸せに感じるだろうから。


視界がぼやける。僕は目を拭って描き続ける。


僕の描いた未来は、未完成のまま終わったんだ。


彼女と綺麗な朝を迎えたかったけど、もう遅いから。


彼女が綺麗な朝を、迎えられるように。


僕が綺麗な朝を描くよ。




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