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4:街へ

 少し早い夕食をすませると、改まって父親と母親が俺をリビングに呼び出した。


「喜べフィル! 明日街の教会で洗礼の儀を受けて、魔法の適正を確認できるぞ!」

「これでフィルも魔法を使えるようになるのね!」


 家のリビングに行くと、父親と母親が嬉しそうに声をかけてきた。

 そういえば10歳になってから魔法適正が判明するとは言ってたが、どうやら教会で行われるらしい。

 母親から聞いた話だが、10歳になるまで魔法が使えなかったとしても、自分の属性を認識してから使えるようになった人は多いそうだ。

 ま、俺の横には神童がいることだし、そんなに大したことないとは思うけどさ。

 それでも……魔法が使えるようになるなら、それに越したことはない!


「父上、母上。明日は何時から行くのですか?」

「まぁそうはやるな。昼からだが、フィルと同じように受ける子も多いからな。街の観光がてらゆっくり行こう」


 俺の住んでいる村は周りに何もない。住居も10棟ぐらいしかなく、同い年の子も少ないのだ。

 もっぱら遊び相手は妹のマナで、たまーに近所のお兄ちゃんが遊んでくれる。そのお兄ちゃんも魔法を使えるし、一度感覚を聞いてみて試したが俺には出来なかった。

 そんな魔法を使えない俺にも優しい村の人達。ご近所さんと言うよりも家族に近い人達だ。

 だから俺は同年代の子たちを知らない。もしかすると、無詠唱などは今の時代普通の可能性すらある。

 俺だけ取り残されるなんてことにならなければいいが……。


「ふふ、心配しなくてもいいのよ? 私とシモンの子ですもの。立派な魔法使いになれるわ」


 どうやら顔に出てしまっていたらしい。

 こんな人のいい両親を心配させるわけにはいかないので、笑顔を作り微笑みかけた。

 もちろん心配なのは間違いないが、どんな結果になろうとも俺は俺で親孝行がしたい。

 前世では子孫どころか恋人も作れなかったんだ。俺は本気で人生を変えてやる。


 とは言っても、実はそこまで心配はしていない。

 父親は王国の魔術団に所属していたらしく、属性は少ないけど特化型。センスも高くて上位魔法も唱えられたそうだ。

 さらに母親はその魔術団で一個隊を任されていた程。属性も多くセンスも高い。魔術団の中でも数える程しかいない有名人だったらしい。

 この情報はたまに来る王国の兵士から盗み聞きした情報だ。

 なんでも最近物騒なナニカが起きているとかいないとか……ま、俺には関係ないだろうけどな。


 だから偉大な両親を持った俺は、今回の洗礼は一切怖くない。むしろ自分の属性がわかってからが本番だ。

 今までもやり続けてる剣術の修行に加えて魔法の修行。魔法戦士……くぅカッコいい!

 これならモテモテのハーレム作って最高のーー


「ん? 今度はニヤけだしてどうした?」


 しまった……! 無双ハーレム状態を妄想していたら顔が緩んでしまった!

 俺はすぐさまキリっとした顔に直すと、父親と母親におやすみの挨拶をして部屋を出た。

 不思議そうな顔で見ているマナが印象的だったが仕方ない。こんな妄想してるなんてバレたら酷い目で見られるだろう。


 俺は明日、魔法使いへの第一歩を踏み出すんだ。

 ワクワクしながらベットに入り眠りについた。



 ◇



 次の日の昼過ぎには街へと到着した。

 移動は村唯一の交通手段である馬車。馬車と言っても馬の脚は6本あり、俺が知っている馬とは若干違う。

 だが大人しくて人参が好きな事は変わりないらしい。

 村には定期便としてやってきて、色んな人が利用している。今回は俺たち4人が乗って街へと向かったわけだ。


 到着した街は非常に大きかった。自分の身長が大人の頃と比べると小さくなっているだけかもしれないが、見るもの全てが大きく感じた。

 道幅は広いし、色んな人間が歩いている。路面店も非常に多く、色々な格好をした男女が楽しそうに会話したり物色したりなど。

 もちろん食べ物なども置いてあり、喰い歩きも出来そうだ。


「父上! 母上! ここは凄いですね!」

「ふっふーん。そうだろうそうだろう。王都はもっと凄いけどな!」


 何故か鼻の高い父親が色々と説明してくれる。街には冒険者として活動できる冒険者ギルドや、街や国を渡りながら商売をする商人ギルド、そして一番人気なのは魔法研究ギルドだ。

 冒険者ギルドには誰でも登録ができる。世界中を冒険し、お宝や未知の場所を探しに行くフリーランスだ。商人ギルドも誰でも登録はできるが、毎月の売り上げや利益の報告が必要で、それを怠ってしまうと許可証を剥奪されるらしい。


 そして魔法研究ギルドは一定の功績を残したり魔力値が高くないと入る事すら不可能だそうだ。

 父親も母親も魔法研究ギルドには籍を置いてあるらしく、魔術団に入る条件にもなっているそうだ。

 様々な魔法を基礎から見直し新たな魔法を作り出したり、スクロールと呼ばれる用紙に魔法陣を書き込んで自分が扱えない属性の魔法を発動できるようになったりなど、生活にも役立てるように日々研究が行われている。

 今回の洗礼の儀の結果によっては、魔法技術育成学院への推薦もあるらしい。

 そうなるとエリート街道をまっしぐらで、食いっぱぐれも無くなるそうだ。


「ふあー、凄いねー! 俺も魔法研究とかしてみたいなぁ」

「はははは! それなら俺みたいに立派な魔法使いにならないとな!」


 父親が俺の頭をわしゃわしゃと撫でて来る。精神的には悟りの境地に入ってた俺だが、この瞬間はなんとも心地よく思える。

 家族とはいいものだ。

 (よこしま)な考えを持っていたのは事実だが、立派な大人になって家族を持ち親孝行もしたい。

 俄然やる気が出てくるってもんだ


「おにーちゃん、マナ向こうも見てみたいー!」

「はいはい、後で一緒に行こうね」


 マナは自由だ。目に入るもの全てが新鮮なんだろう。

 俺の手を引っ張って色々な場所へ向かおうとするが、なんとか手を握って引き止める。

 街を見て回りたい気持ちは俺も同じだが、早く俺の魔法適性が知りたい方が強い。

 ここはマナに我慢してもらおう。


 暫く歩いていると、青い屋根をした大きな建物が見えてきた。

 白を基調としているのか、他の建物とは雰囲気が違う。

 入り口の近くには、俺たちのような家族連れが列を成して並んでいた。


「フィル、教会が見えてきたぞ」


 やはりあそこが教会らしい。

 俺は期待を胸に、教会の列へと並んだ。


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