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「暑い……」
「うん、暑い……もう、本格的な夏だね……」
「……」
「……」
会話が途切れてしまう。ひかりと帰るときに会話が途切れることはあるが、それにしても今日は多い気がする。僕が会話どころではない精神状態だからというのも大きいだろう。
(……どうしよう)
僕の頭の中は、どのように告白するかでいっぱいだった。
一応、いろいろ告白のシチュエーションなども考えてはみたのだが、どれもしっくりとこず、当日になっても告白の仕方を決められずにいたのだ。
「……かげくん大丈夫? 今日いつもと雰囲気が違うけど……?」
ひかりが髪をかき上げてこちらを覗き込んできた。髪が耳の後ろにかけられ、露出した耳が少し色っぽい。
「……大丈夫」
「ふーん? 何か悩んでるんなら言ってね?」
そして「相談に乗るから」とひかりは目をくりくりさせて微笑んでくる。
(やっぱりひかりは可愛いな……)
初めて隣の席になった日もかわいいと思ったが、最近は特にかわいくなったと思う。何か少し大人っぽい可愛さ? 的なものが出てきているように感じるのだ。
(ああ、やっぱり僕はひかりが好きなんだ……)
僕は改めてそう感じる。最近は、僕の中にひかりを独占したいという気持ちが生まれてきている。独占欲というやつだ。僕も、まさか自分の中にそのような感情が生まれるとは考えていなかった。むしろ、独占欲を持つなんて傲慢だとすら思っていた。
(……そう、告白するしかないんだ)
僕の気持ちを満たすためには、この気持ちをひかりに吐き出すしかない。
(でも……それをすることで、ひかりを傷つけてしまうことになるかもしれないし……)
ひかりはおそらく僕のことをただの友達と思っているだろう。害など何もないただの友達と。そんな相手が急に告白してきたら、裏切られたような気持になるんじゃないだろうか? そう思うと、告白する決心が揺らいでしまう。
「……本当に大丈夫?」
ひかりが心配そうな顔で再び覗き込んでくる。
「……いったんそこの公園で休んだほうがいいんじゃない?」
「……うん」
どりらにせよ、このままだと家にたどり着いてしまう。僕は頷いてひかりと公園の中に入った。
「そこのベンチに座ろ」
ひかりに従って僕もベンチに腰を下ろす。ベンチの上には僕たちを日差しから守るように大樹が枝を広げていた。
「ひかり……」
「ん? 何?」
僕は意を決して話しかけた。
「……ひかりは人を好きになったことってある?」
「……ふぇ⁉ きゅ、急にどうしてそんなことを?」
ひかりは何故かきょろきょろと目をさまよわせる。
「……僕、好きな人ができたみたいなんだ」
「……え?」
僕の言葉にひかりが固まる。しかしすぐに動き出した。しかしどこか動きがかくかくしている。
「ふ、ふーんそうなんだ……? だから今日、雰囲気がいつもと違ったんだ?」
「うん……その人に告白したいと思ったんだけど……」
「こ、告白!」
告白という言葉に反応してひかりが飛び跳ねる。
「こ、告白ねぇ~」
「うん……だけど……なんていうか……その相手は僕のことを友達だと思っているんだよね……だから、急に告白したら嫌なんじゃないかと思って……」
「な、なるほど……それでどうすればいいかを私に相談したいと?」
「好きでもない相手から告白されて嫌じゃないのかな? と思って……」
ひかりは複雑そうな顔をする。そしてしばらく黙り込んでしまった。
数分は沈黙が続いたんじゃないだろうか? 沈黙を破ってひかりが言った。
「……告白、したらいいと思うよ」
少し泣きそうな顔で気丈に彼女は言った。
「好きという気持ちを伝えられて嫌な人なんていないと思う。特にかげくんみたいに純粋にやさしくしてくれる人ならなおさらだよ……例えかげくんが告白する人に他に好きな人がいたとしても、かげくんの好意はうれしいと思う」
そう言ってひかりは再び黙り込んだ。
「……私は、告白するなんて勇気出せないし……かげくんはやっぱりすごいなあ」
ひかりはそう言って上を向いた。
「……ありがとう」
ひかりが僕にそんなことを言ってくれるなんて……
僕もひかりと同じように木を見上げる。大樹は僕たちを包み込んでくれているようだった。
「……ひかり。好きだよ」
僕は、それだけ言った。それだけがただ伝えたかった。美夜に気づかされ、優に進む道を教えてもらい、ひかり自身に勇気をもらってようやくその言葉が口から出た。
ひかりが、驚いた顔をしてこちらを見る。
「僕は、ひかりが好きだ」
もう一度だ。この気持ちをただひたすらに届けたかった。
「わ、私? え? だってかげくんは……」
「さっき相談した友達って言うのは、ひかりのこと……」
ひかりは現状が呑み込めていないような顔をしていたが、僕の言葉に顔をくしゃりとして笑った。
「……じゃあ、かげくんは間違ってるよ……」
「……?」
ひかりの言葉に僕は戸惑った。ひかりが、顔を無理やりといった感じで真顔にする。
「だって、私はかげくんのことが好きなんだもん」
そう言ってひかりは微笑む。
「かげくんが私のことを好きになってくれたずーっと前から私はかげくんが好きなんだよ?」
木漏れ日がやさしく差し込んだ。
「……ふぇ⁉」
ひかりが可愛い声を上げる。
僕は思わずひかりを抱きしめていた。
どうでしたでしょうか?
楽しんでいただけたのなら幸いです。
ともかく、これで第一部は終了です。
これからは夏休み編を書こうと思います。二組の甘々カップル……そして、美夜……さてさて、そうなることやら。
報告です。
大学受験との両立の関係や高校の再開などの理由で不定期投稿に切り替えます。申し訳ありません。
今後ともよろしくお願いします。
もし、もっと読みたい方は『国宝級イケメン俳優の正体はカースト最底辺インキャです』も連載していますので是非お読みください。
まだまだ続くのでどうか応援よろしくお願いします!




