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「……それで、今日は急にどうしたんだ?」
「いや……な?」
「……そんな、わかるだろ? みたいな顔されても……」
火曜日の放課後、僕と優はマクドナルドの席に座って二人で話していた。何故こんな所にいるのかというと、優が話したいことがあると言ってきたからだ。優が部活を休んでまで話したいと言ってくるなんて珍しいことなので、僕はすぐに了承した。一緒に帰れなくなるので、ひかりにその旨を伝えると、ひかりもリーナとどこかに行くことにしたようだった。
「……実は、俺リーナが好きみたいなんだよな……」
不意打ちだった。僕のポテトに伸ばしていた手が止まる。まさか、その話をされるとは……
「……意外だろ?」
優が少し笑って言う。
「……いや、なんとなく気づいてた」
「……もしかして、顔に出てたか?」
「うん……誰でもわかるくらいは……」
「……まじか」
優は少し顔を歪める。頬が少し赤い。いくら優でも恥ずかしかったようだ。
「……で、それを僕に伝えてどうするつもり? 応援ならするけど……」
そう、このタイミングで僕に言う意図がはっきりしないのだ。
「……応援はありがたいが……かげにはいろいろと悪いことをしたし……」
そこで一度、言葉を切った。
「……俺、リーナに告白しようと思うんだよ」
優はそう言い切った。どこかすっきりしたような顔をしていた。
そして、僕もあることを理解した。
「そうなんだ……」
「……でも、そのために俺自身にハードルを設けようと思うんだ」
「ハードル?」
「ああ」
優は大きく頷いた。
「リーナはお前の目から見ても完璧なやつだと思う」
「……うん」
リーナの趣味を思い出して少し迷ったが、そこを補って余りある良い人だと思う。
「だからな、そんな人に告白するんなら、俺もリーナにふさわしい男になる必要があると思うんだよ」
「なるほどね……それで、そのハードルっていうのは?」
「……前期中間テストで全教科平均点を超える」
「はあ⁉」
俺は、思わず大きな声を出してしまった。
「いや、でも……」
「わかってる。俺は、いつも赤点ぎりぎりだ……でも……だからこそ、意味があるんじゃないか」
そこで優は覚悟を決めたかをでこちらを見た。
「俺が努力しないで、彼女は振り向いてくれるのか?」
この時の優は男の僕でも惚れそうなくらい男前だった。
「……優の思いはわかった」
僕は優の目を見返す。そして、言葉を続ける。
「その話……僕も乗ってもいいかな?」
「……ん?」
「いや……僕も好きな人がいるんだ」
僕は、優にそう伝えた。多分優も驚くだろうと思って……
しかし、現実としては、優は全く驚かなかった。
「……ひかりちゃんだろ?」
驚くほどあっさりと優はその名前を出してきた。周知の事実だとばかりに……
「……もしかして僕も顔に出てた?」
「……いや、顔っていうか……雰囲気からにじみ出てた。周りが甘い空気で満たされるくらいには……」
そう言って優は「気づいてなかったのか……」という感じでため息をつく。
「……お互いさまってことで……」
顔が熱くなるのがわかる。
「……で、かげもひかりちゃんに告白するってことか?」
「……うん。ついこの前からひかりのことが好きっていう気持ちには気づいてたんだけど……その気持ちをどうしたらいいかわかってなくてね」
そう、こないだ美夜に言われて自分の気持ちに気づいてはいたのだが、人を好きになるという経験がなかった僕は、その気持ちの対処法がわかっていなかったのだ。
「……でも、優がリーナに告白するって言ったときに理解したんだよ……僕もひかりにこの気持ちを伝えたいんだってことに」
僕の言葉を優は静かにきいてくれた。そして言ってくれた。
「……いいんじゃないか? 俺も応援するよ」
優が応援してくれるなんて心強い。優は、はじめのころは僕がひかりと関わりすぎることを快く思っていなさそうだったが……何か心境の変化でもあったんだろうか?
「ありがとう」
僕は素直にそういった。
「おう」
優はどこか照れ臭そうだった。
ついに次話から勝負の第6章開始です!
今日の夕方に投稿するのでブクマして待っておいて下さい!
あと、今日作者の誕生日なんですよね〜(ぼそっ)




