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しばらくしてようやく我に返ったひかりは、顔を真っ赤にしたまま「お昼ご飯作ってあげるからっ!」と言って台所に駆け込んでいった。僕も手伝いを申し出たのだが、「誕生日なんだから座っといて」と断られてしまった。なので僕は今、テーブルについて料理をする光をじっと見ている。
(改めて見ても、ひかりは可愛いよな)
顔は言うまでもなく整っているし、スタイルにも文句の付け所がない。しかも、性格にも嫌味がないのだ。完璧と言えるだろう。美人であるリーナと比べても僕はひかりのほうが可愛いと思う。もちろんリーナも魅力的なのだが、なんというかひかりには守りたくなるような可愛さがある。
「お兄ちゃん、そんなに見るとひかりちゃんが困ってる……」
美夜がもはや呆れたように言ってくる。この一か月くらいで美夜がだいぶ成長したような気がするのは気のせいだろうか? 前までは、僕が美夜を甘やかしていたはずなのに……
だが、美夜の言葉は本当のようだ。ひかりはずっとトマトを洗い続けている。もう数分は同じトマトを洗っているんじゃないだろうか? ひかりの顔がトマトのように赤い。
「……なるべく見ないようにするよ」
僕はそうは言ったが、やはりどうしても目がひかりの姿を追ってしまう。こんなかわいい子が自分の家で料理してくれているんだし仕方ないと思う。ひかりを見ていると幸せなのだ。
「……お兄ちゃん……ちょっと耳を貸してください……」
「ん?」
急に美夜がそんなことを言ってきたので僕は体を傾ける。
「……お兄ちゃん、本当にひかりちゃんのこと何とも思ってないの?」
「何ともってどういうことだ?」
僕が小声で聞き返すとひかりはまた耳元でささやく。
「そりゃ……お兄ちゃんは……ひかりちゃんのことが好きなんじゃないの? ってことだよ……」
少し呆れたように美夜が言ってきた。その言葉に僕は固まる。……ひかりのことを僕が好き? そんなわけ……だってひかりはただの友達で……
「な、なんでそんなことを……」
「いや、さっきからのお兄ちゃんを見てたら誰でもそう思うと思うけど? 逆にこれで好きじゃなかったら逆におかしいと思うけどな……」
「そ、そうなのか?」
僕はちらりとひかりのほうを見る。ひかりは一生懸命料理をしてくれていた。その真剣なまなざし、僕の誕生日のために一生懸命料理してくれている姿に、僕の心の中で何かがはじけた。僕が見ていることに気づいたひかりがこっちにはにかんだ笑みを送ってくる。自分の気持ちは一瞬で理解できた。
「……僕はひかりが好きだ」
この笑顔を守りたいと思った。こんな気持ちは僕にとって初めてだ。この気持ちを妹によって気づかされたのは情けないが……僕らしいかもしれない。
学校のアイドルであるひかりを僕みたいなやつが好きになるなんて傲慢かもしれない。でも、今回ばかりは許してほしい。何事にも消極的な僕が珍しく持った、今この時にしか持ちえない思いなのだから。
もうイチャイチャタイムまで少しですね。
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