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「なんで、そんなに速くなってるんだよ?」
優が苦々しい顔で聞いてくる。
「いや……ここ一か月くらい朝に走ってたからだと思うけど……」
「それだけでそんなに速くなるのかよ……まあ、中学の時はかげのほうが速かったからな……」
「でも、もう一回走ったら、優が勝つと思うけど……」
「……そうかもしれないが……」
そう言っているうちにクラスメイトたちが集まっている場所に戻ってきた。クラスメイト達が僕と優をねぎらってくれる。今回は、珍しく、僕もクラスメイトにねぎらってもらえた。みんな俺が一位をとれるくらい速くなっていたことに驚いているらしい。
(まあ、確かにこの一か月で大分足が速くなった気がする。いや、中学の頃のタイムに戻ったといったほうが正しいか?)
実際、中学で真剣に部活をしていた時は、足は学年トップレベルで速かった。けれど、部活に高校では入らなかったのでタイムはだいぶ落ちてきていたのだが……一か月走りこんだだけでここまでもどるなんて僕自身も驚きだ。
「かげくん」
ようやく飲み物を置いている場所にたどり着き、水分を補給した俺にひかりが声をかけてきた。
「かげくん、一位すごいね」
「ひかりも一位おめでとう」
ひかりが僕の前に走って一番にゴールしていたのを僕はしっかりとみていた。
「それにしても、前よりもかなり速くなってたね?」
「うん。ひかりに足速いねって褒められてから、もっと早くなろうと思って走るようにしてたんだ」
「えっ⁉」
「だから、今回の僕の一位はひかりのおかげだよ」
ひかりは日に焼かれたのか、少し顔が赤くなっている。
「ひかりは、まだリレーもあるんだよね? 応援してるから」
「……う、うん。ありがと」
ひかりはそれっきりぼっーとしてしまったので僕は周りを見回す。すると、座り込んでいる優が目に入った。一位をとれなくて悔しがっているのかもしれない。声をかけようかと迷うが、一位をとった僕が声をかけても嫌味になってしまうかもしれない。それに、もっと適任の人が声をかけようとしている。
「優くん」
「リーナか……なんだ?」
声をかけてきたリーナに優が顔を上げる。
「優くん100m走お疲れさまでした」
「……でも、一位は取れなかった」
「でも、速かったですよ」
「それでも、今回は一位を取らなきゃダメだったんだ」
そう言って優は目を伏せた。
「そうですか……」
「……みんなのためにも俺は一位にならないといけなかったんだ」
優は顔を上げない。さすがに僕もフォローをしようかと思った。だが、リーナが真剣な顔をしていたので、一度やめておく。
「大丈夫です」
リーナが優の横に座り込んだ。そして、優のほうをじっと見た。そして、口を開く。
「……ワタシの中では優くんはいつも一番ですから」
リーナのきれいな金髪が風になびいた。
優が伏せていた眼を見開いてリーナのほうを見る。
「そ、それはどういう……」
優の言葉にリーナは軽く微笑むだけだった。
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明日から新章突入です!




