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「どうぞ……」

「お邪魔しま~す」


 日曜日。約束通りひかりは昼前に僕の家に来た。昼前に来たのは、ひかりがお昼ご飯を作ると言ってくれたからだ。一応一度は遠慮しようとしたが、「ごはんを一緒に食べたほうが美夜ちゃんとも仲良くなれると思うし」と言われると僕の胃袋は簡単に折れてしまった。


 ひかりは脱いだ靴をきちんとそろえている。先ほどまでは何も感じなかったのだが、いざその時になると、同じクラスの女子を家にあげるって結構ヤバいんじゃとか今更思い始めている。


「結構綺麗にしてるんだね……」


 ひかりは部屋に入ると、ちらりと部屋を見回した。


「……うん。一応、毎週掃除はするようにしてる」

「かげくんが?」

「うん。美夜はそういうのはやりたがらないから……」


 甘やかしてる自覚は一応あるし、甘やかさないようにしようとも思ってるんだが、気づいたら甘やかしてしまっているのだ。

 そこで周りを見回して初めて美夜が見当たらないことに気づく。


「……美夜、どこ行ったんだ?美夜がひかりに会いたいって言ってたんじゃ……」

「……あそこ」


 ひかりが指差す方向を見ると、目だけを出してこっちを見ている美夜がいた。なんだか、既視感がある。

「じーっ」という音が聞こえてきそうなくらい凝視してきている。


「……美夜……こっちに出てきたらどうだ?」

「……」

「美夜ちゃん……? 私もお話ししたいな?」

「……」


 美夜は僕たちが話しかけても黙ったままだった。

 すると、「ぐるるるるる」という音が鳴った。美夜の顔が少し赤くなっている。


「……美夜、おなかへってるのか?」


 僕が聞いても相変わらず答えない。でも、より一層顔が赤くなったのがわかる。


「じゃあ、とにかくご飯作るよ」

「……来たばかりなのに……ありがとうな」

「うん。任せといて」


 ひかりはそう言って胸を張る。どうしてもそこにある二つの山に目が行ってしまうのは僕も男だということなのだろう。さすがにじっと見るのは失礼だと思ってすぐに目をそらす。


 どうやら、ひかりは気づかないでくれたようだ。すたすたと台所のほうに歩いて行った。


「あ、言われていた材料は買って、冷蔵庫の中に入ってる」

「うん、ありがと。使わせてもらうね」


 僕も台所のほうに行く。


「何か手伝えることはない? 僕もひかりほどじゃないけど料理は得意だし」

「うーん……今日は手の込んだ料理じゃないから大丈夫だけど……手伝ってくれるっていうんなら、卵6個溶いといてくれる?」

「ん。わかった」


 ぼくは卵を取り出して、割る。一時期何となくかっこいいと思って練習した時があったので、片手でだ。そして割った卵をかき混ぜている間に、ひかりもてきぱきと玉ねぎなどを切っていく。その手際は見事の一言で、僕は思わずじっと見てしまう。


「……そんなにじっと見られると、恥ずかしいんだけど……」


 ひかりが真っ白な頬を少し赤く染めてそう言ってくる。いつもの快活な感じとのギャップもあるからか、照れているひかりは可愛い。思わずドキッとしてしまうくらいには。

 僕は、胸が高鳴ったことを気づかれないようにと、もうかなりトロトロになっている卵をさらにかきまぜた。


 美夜は、その様子を見てじっとしていられなくなったのか料理している僕たちの近くに寄ってきて、うろうろしだす。

 ちらちらとこちらを見ている。


「……美夜も手伝いたいのか?」

「……」


 一瞬美夜はこっちを見たが、すぐにぷいっと顔をそらしてしまった。……最近、美夜の意図が読み取れない。

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