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「……これから幹部ミーティングを開始しようと思う」


 毎週木曜日の定例ミーティングが始まった。


「一週間で何か案が浮かんだ者はいるか?」


 優が周りを見回す。そして、一人手を挙げているのを見てなんとも言えない表情を浮かべる。その顔はまるで案が出ないことを望んでいたようだった。


「……18782番……言ってみろ」


 そう言われてメガネの男は口を開く。


「来週の火曜日、体育祭があります。それは皆さんご存知ですよね?」


 周りの男たちが頷く。


「では、月野が100m走に出場することは?」

「……知らなかったが、だからなんだと言うのだ?」


 幹部の一人がそう言う。


「月野が100m走に出るのを利用するのです。100m走で月野が圧倒的最下位を取るように仕向ければいい。これで、ひかりちゃんの月野に対する好感度を削ぐのです」

「……そんな地味な方法で大丈夫なのか?」

「最近のひかりちゃんと月野の関わり方は普通ではありません……ここまできてしまっては、地道に好感度を削いでいくしかないと思います」

「……確かに、18782番の言っていることは正しいのかもしれない。だが……月野を圧倒的最下位にすることなどできるのか?」


 メガネは質問に対して迷いなく答える。


「はい。幸いこのファンクラブには短距離走学年トップの議長に加えて、5秒台を叩き出せる猛者が数人存在しています。こいつらを月野にぶつければ所詮6秒台の月野は手も足も出ないでしょう」


 優の方をちらりと見る。


「あまりかげを侮らない方がいいと思うが……」

「議長……手は抜かないでくださいね?」


 釘をさすようにメガネの男は言ってくる。


「わかっている……元から俺は負けるのは嫌いだ……」


 そう言って優は幹部の顔を見回す。


「この案に反対の者は……いないな……」


 そう言って優は加齢臭なさそうな男を見る。


「……あとは教師の方で走順の調整を頼みます」


 幹部の一部が頷く。


 それからしばらくして、その日の幹部ミーティングは終わった。


 議長である優は、やはり、幹部ミーティングが終わってからもしばらくは会議室から出て行かず考え込んでいた。その顔は数回前の幹部ミーティングの後に見せた表情の数倍悩んでいる様子だった。

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