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『ほっといて』



 そう送られてきたのを見た瞬間、ある記憶が僕の頭の中を駆け巡った。













 つい2年前のことだ。母さんがまた入院した。


 元から病弱だった母さんはよく病院に入院していた。

「大丈夫よ。いつものことだから」

 そう母さんは言っていた。


 本当に優しい母さんだった。いつも僕たちを見てにこにこと笑っていてくれた。料理もうまく、僕たちも母さんの味が好きだった。


 母さんが言うなら今回も大丈夫だろう。

 僕たちはそう思っていた。


 でも、その時はいつもとは違った。

 いつまでたっても退院できず、病院に行くたびに母さんがやせ細っていくのが目に見えてわかった。


 父さんは何か気丈な顔で母さんに笑いかけていた。父さんは、母さんを本当に大切にしていた。そして、おそらく母さんの状況を完全に知っていたのだろう。だからこそのあの笑みだったに違いない。

 母さんを不安にさせないための。




 そして、ちょうど今と同じくらいの時期に……




 母さんは死んだ。




 僕はもちろん悲しみ、泣きじゃくった。


 父さんも、気丈な表情を浮かべながらも目には涙を浮かべていた。


 でも、美夜は泣くことすらしなかった。

 いや、できなかったのか。美夜は能面のような顔をして自分の部屋に閉じこもった。


 ただでさえ、思春期精神的に不安定な時期であることに加えて、中学にも入りたてでまだ学校にも慣れていなかった美夜の心は母さんの死であまりにも簡単に崩れ去ったのだ。


 もちろん僕はすぐに美夜を元気付けようとした。扉の外から何度も何度も話しかけた。だが、美夜はただ一言その能面のような顔でこう言い放ったのだ。


「ほっといて」


 と。












 過去の記憶がまざまざと蘇る。


 気づいた時には僕は通話ボタンを押していた。美夜のときと比べて心への負荷の大きさの大小こそあるかもしれない。


 でも、日野さんは苦しんでいるのだろう。そう思うと、スマホを握る手に力が入った。


 電話の発信音が鳴り続ける。


 長い。


 もしかすると、日野さんは出てくれないんじゃないかと思ってしまう。


 でも、ここで電話を切ってはいけない。

 僕は、そう思った。


 何度も発信音が鳴る。


 もう数十回はなっただろう。


 その時、発信音が途切れた。




「……何?」




 少し怒ったような、それでいて安心したようなそんな二つの相反する感情が共存できてしまう程儚い、今にも崩れそうな声で日野さんは言った。

あぁ、お母さん死んじゃったんだと、美夜に同情してあげる人は下の星をポチッとお願いしますm(._.)m

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