泥人形と魔女
「お母さん!見て見て!やっとできたよ!」
少女は立ち上がると泥だらけの両手をめいいっぱい振って母親を呼んだ。
母親は少女の元へ行くと出来上がった泥人形をまじまじと見つめる。
「上手に出来たじゃない、アンナ。さすが、私の娘ね。才能あるわ。」
「名前、どうしようかな。これから長い付き合いになるんだもん。素敵な名前を付けたいな。」
「あらあら、長い付き合いになるかはまだ分からないでしょ。この前みたいにすぐ壊れちゃうかも。」
母親が意地悪な調子でからかうと、アンナは頬を膨らました。
「そんなことないもん!今度のはほんとに上手くできたのよ!それに、今回は特別なおまじないをかけたんだから。」
アンナの足元で土の塊が淡い光を放っている。
見たことの無い不思議な光だ、と母親は思った。
「どんなおまじないをかけたの?」
「んー、秘密!」
アンナはいたずらっぽい笑みでそう答えると、またしゃがみこみ、土の塊を見つめる。
「この子はね、きっとすごい魔法人形になるわ。名前はそうね…」
その時、魔法人形の目が開き、その瞳に満天の星空が写った。アンナははっとして空を見上げる。夢中で作業しているうちにもうすっかり夜になっていた。
その時、空の頂点に輝く1つの星がアンナの目に入った。
「決めた。あなたの名前は北極星よ!空の頂点にあるあの星のように、私と魔法使いの頂点を目指しましょう!」
ポラリスと名づけられた魔法人形はゆっくり立ち上がってアンナを見上げた。