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オリュンピュアは今日も平和

世界が欲しい、切実に。

作者: 朝木 花音



「よぉ、目が覚めたか?」


 鈴の音の様な声が聞こえて、俺の脳は覚醒した。ただ、視界は白くぼんやりとしている。


『ここは、どこ?』


「そうだな、生者と死者の世界の狭間って言や判るか?」


『そっか、俺はあの事故で死んだんっすね』


「ああそうだ。ただ、それはウチの死神のミスで、ホントは死ぬ予定じゃなかった」


『死神のミス・・・』


 ってか、この人誰?死神の上司?そもそも男?女?


「あぁ、わりぃ。視覚を戻すの忘れてた。ほら、どうよ。俺が見えるか?」


 俺の目の前には女神が居た。それはそれは美しい顔のロリ巨乳の女神様が。


「ちゃんと見えたみてぇだな。俺は転生神サミーニャ。まぁ、二度と会うことは無いから忘れてくれて構わねぇ」


『転生神って事はアレっすね』


「ああ。お前の予想通りだ。ウチのミスで死なせた侘びに異世界へ転生させてやる」


『ヒャッホーイ!マジっすか!!チートとか貰えるんすか!?』


「俺が与えたものをチートと思うかはお前次第だな。さて、どんな転生をご所望だ?」


  ***


 はぁ、かったりぃ。なんだってあんな食い気味で要望を言って来るかね。ちったぁ自分で努力しろ。


 サミーニャが異世界転生の作業を終え、椅子でぐったりとしていると、部下がやって来た。


「サミーニャ様、魂の浄化が終わりました。輪廻転生の作業をお願いします」


「あぁ、分かった。お前はそろそろ昼休憩の時間だろ?後はやっとくから休んでくれ」


「いえ、お手伝いをさせて頂きます」


「あのなぁ、お前達天使には食事と睡眠が不要とは言え、休憩はしっかり取って貰わねぇと午後の仕事に差し支える。解ったらとっとと休め」


 サミーニャは言い募る部下をどうにか休ませ、浄化の済んだ魂の輪廻転生作業を始める。

 こちらの転生は、天寿を全うした魂を浄化し新たな命として元の世界に生まれさせる作業で、異世界転生とは根本的に違う。


  ***


 もうこんな時間か。さて、飯でも食いに行くかな。


 サミーニャはぐいっと伸びると、作業室を出た。彼女が部屋から出ると、廊下の角を曲がってきたヘスティアに呼び止められる。


「サミーニャ!あの転生者どうにかしてちょうだい!」


「はぁ、またかよ。ヘスティアさん、今度はどうしたんだ」


 サミーニャはヘスティアの世界で暴れていた転生者を拘束し、魂を抜き出して浄化作業待ちの箱に投げ入れた。

 神々からの転生者へのクレーム対応もサミーニャの仕事である。


  ***


 はぁ、やっと飯だ。なんだってこんな忙しいんだよ。ぜってぇ死神(デスラン)のせいだ。今度こそ半殺しにしてやる。


 サミーニャは黒い決意を胸に昼食と言うには遅い食事をとる。

 ちなみに彼女はいつもデスランの返り討ちに合って強制的に気絶させられる。彼に絡む時点で彼女の精神はすでに病んでいるので仕方がない。


 食後も転生作業、クレーム対応に追われて一日が終わる。


  ***


 異世界転生の数を減らすのもそうだけど、クレーム対応もどうにかならねぇかなぁ。


 サミーニャは輪廻転生の作業をやりながら、この忙しさについて考えている。


 転生者の要望がその世界と合ってねぇのが原因ってのは判ってんだよ。

 なら、どうすりゃいい?

 うーん。あ、転生者専用の世界が有ればいいんじゃね?


 サミーニャは解決策を閃くと、手早く作業を終わらせ、別棟に居るゼウスの元に赴いた。


  ***


 サミーニャは別棟に行くと、館内図から目的の人物を探す。


 今日はどこに居んだ?あー、じゃぱんの部屋か。


「ゼウスのじっちゃん」


「なんじゃ、サミーニャ。こっちに来るのは珍しいのぅ」


 ゼウスは畳の部屋で盆栽の手入れをしていた。そこに最高神の面影は無く、完全に余生を楽しむ老人である。


「ちょっと頼みがあってさ。転生者用の世界を一つ作ってくれねぇ?アテナさんとこのコピーで良いから」


「なんじゃなんじゃ。お前が世界を欲しいなんて、どうしたんじゃ?」


 ゼウスは自分を頼ってきた孫にデレッデレになっている。


「デスランの馬鹿が間違えて殺しすぎなんだよ。転生者が増えすぎて管理が大変だから、専用の世界が欲しいんだ。

 設定はとーちゃんとアポロンのおっちゃん辺りに頼むからさ。ダメ?」


 サミーニャは目をウルウルさせ、己の容姿を最大限に発揮したお強請(ねだ)りを発動した。


「よし、分かった。ワシがサミーニャの要望通りの世界を用意してやろう」


「っしゃ!じっちゃん、ありがとう!」


「ほっほっほっ可愛い孫の頼みじゃからのぅ。久し振りに頑張ろうかのぅ」


 ゼウスはサミーニャの満面の笑みを向けられ、デレデレお爺ちゃんからやる気満々お爺ちゃんに進化した。きっとサミーニャは心のなかでチョロいと思っているだろう。


「ところで、最近アフロディーテに会ったかのぅ?」


「かーちゃんには最近会ってねぇな。とーちゃんはあっちでたまに会うけど。なんかあったん?」


「この前の15柱会議後の晩餐でのぅ。アフロディーテが、サミーニャに会えないのはデスランのせいだ!とハーデスに絡んで大変だったのじゃ。その上アレスまで絡みに行ってのぅ。まぁ、アレスは父親だからこその絡み方だったのじゃが。あやつらに酒を飲ませては駄目じゃな」


「かーちゃんだけじゃなくとーちゃんまで・・・。ごめんよ、ハーデスのおっちゃん」


「たまにはアフロディーテに会ってやっておくれ」


「分かった。後で寄ってく」


 帰り際、サミーニャはアフロディーテの部屋へ寄る。サミーニャは母にギュウギュウに抱き締められ、一瞬冥界で手招きするペルセポネが見えたとか見えなかったとか・・・。


  ***


 サミーニャは時間を見付けては、貰える世界についてゼウスと色々な打ち合わせを始めた。俺の苦労を思い知れ!と諸悪の根源であるデスランを彼女は毎回呼びつけている。今日彼は少し遅れて来るらしい。


 大まかな世界はアテナの世界からガイアをコピー。

 転生者は冒険だの勇者だの魔王だのと煩いので、世界設定はファンタジー。

 レベル、ステータスは勿論の事、スキルやら魔法やらの要素をふんだんに盛り込んでいく。

 時代はガイアの中世辺りをメインに、少々の改良を加えた。

 生物は人間だけでなく、ありとあらゆる種を誕生させる。

 乙女ゲームや美少女ゲームという良く解らないものも搭載しておく。


「よし、こんなんかな。じっちゃん、後は何が必要だと思う?」


「そうじゃのぅ」


 その時、部屋の戸口から甘ったるい声がした。


「わぁ♪こんなところにサミーニャがいるぅ♪」


「げ!エロース兄!!」


 エロースは座布団に座るサミーニャに背後からガバッと抱き着いた。


「つぅかまえたぁ♪僕の可愛いサミーニャ♡スンスン。はぁ、サミーニャの良い匂いがするぅ♡」


「ひぃっ!気持ちわりぃんだよ!」


「そんな事言ってぇ、ほらぁ♪」


 エロースが右手でサミーニャの耳を撫でる。


「やっ!こんのエロ兄貴!俺に触んな!」


 サミーニャはエロースの右手からどうにか逃れようと身を捩るが、胡座の状態で後ろから抱き着かれている為殆ど動けない。

 性愛神であるエロースの右手は、相手の生命力が強い程に効く。転生神であるサミーニャの天敵と言っても過言ではない。


「これ、エロース。止めなさい。サミーニャが嫌がってるじゃろ」


「えー?逆々、喜んでるじゃん♪」


「ひゃん!みみ、さ、わんな、ボケ!あっ、やだぁ」


 サミーニャは涙目になりながらも必死に抵抗している。


「俺のサミーニャに触るな。この変態野郎」


 エロースの背後から地を這う様な声が聞こえると共に、サミーニャは解放された。エロースは殴り飛ばされ気絶している。結構えげつない音が聞こえたが、神なので外的ダメージはほぼ無い様だ。


「はぁ、デスランの、ばかぁ、遅せぇんだよぉ」


「そんな物欲しそうな顔で言われても説得力が無いですよ」


 デスランはふっと表情を緩めると、立てなくなってしまったサミーニャを横抱きにする。


「ゼウス爺様、サミーニャは連れて帰りますね」


「ああ、サミーニャは任せたわい。エロースの事は心配要らぬよ」


 サミーニャは助けを求める様にデスランの上着を引っ張り彼を見上げた。デスランは未だ顔が火照り目の潤んでいる彼女を見ると、額に一つキスを落す。途端に彼女は気を失った。


  ***


 サミーニャがいつものように輪廻転生作業をしていると、珍しく来客があった。


「サミーニャ、元気かい?」


「あれ?ヘラばーちゃん、急にどうしたん?」


「最近、ゼウスがお前達と世界を作ってる事を自慢してきてね。なんでも、転生者専用の世界だって言うじゃないか」


「例の世界のせいだよ。さすがのデスランでも間違えてまだ死なねぇ魂を連れてくるから異世界転生させんだけど、既存の世界だと厳しいんだ」


 サミーニャはゼウスとデスランと共に考えた世界について語る。


「なるほど。考えたじゃないか。サミーニャはやっぱり賢いね」


「えへへ。ありがと」


 ヘラはサミーニャの頭を優しく撫でた。サミーニャはによによと顔を緩める。

 ちなみにサミーニャはお婆ちゃん子である。ゼウスどんまい。


  ***


 サミーニャ、デスラン、ゼウスは円卓(ちゃぶ台)を囲み溜め息を吐く。


「じっちゃん、それは俺が世界の管理者になったら不味いって事だよな」


「そうなのじゃ。転生神はサミーニャの他に居らぬからのぅ。すっかり失念しておったわい」


「誰かに兼務・・・は今更お願い出来ないですね」


「子供らは皆20以上の世界を管理しているからのぅ。もう手一杯じゃ」


「はぁ。そもそもデスランが間違えて殺すのがわりぃんだよ」


 サミーニャの一言にデスランのこめかみがピクリと震え、彼の顔から表情が抜け落ちた。背後からは冷気が立ち込める。


「ほぉー。お前が忙しいのは俺のせいだと?」


「ぁあん?お前以外に誰が居る?」


 対するサミーニャは憤怒の顔でデスランを見返す。彼女の背後からは熱気が立ち昇る。


「これ、止めんか二人とも。サミーニャもデスランのせいで無いことは判っておるじゃろ?あの世界は特殊なのじゃから」


 ゼウスによって、冷気と熱気は発散された。それにより二人も元に戻る。


「判ってる!判ってるけど!!」


「はぁ。どうしてあんな世界が有るんでしょうね」


 デスランがある世界から連れていく魂を間違えまくっている原因は、その世界に管理者が不在の為。管理者が居れば個人の特定が容易な指示が出るが、管理者不在では杜撰な指示しか出ないらしい。デスランは細心の注意を払って対処するが、どうしても間違える事案が多くなる。

 更にその世界は既に大成している為、後から管理者を任命する事が出来ないのも原因の一つと言える。

 その世界はいつの間にかオリュンピアに連なり、誰がどのような目的で作った世界かも未だ解っていない。


  ***


 暫くサミーニャは大人しくしていたが、転生者専用の世界を諦めきれなかった。彼女はとりあえず管理者について確認する事にした。


「なぁ、ゼウスのじっちゃん。誰であれ管理者がいれば問題ないんだよな?」


「そうじゃ。ただ、サミーニャは唯一の転生神じゃから管理者にはなれん」


「デスランでもダメなんだよな?」


「ああ。死神もデスランしか居らぬから駄目じゃ」


「俺とデスランが二人で管理者になるのもダメか?」


「そうじゃのぅ。孫世代が神業と兼務で管理者になるならば最低三人は必要じゃ」


「三人か。分かった。ありがと」


 サミーニャはもう一人の生け贄を探す事にした。ちなみにデスランを生け贄にするのは決定事項である。


  ***


 サミーニャはデスランを伴いエロースの元にやってきた。彼女はデスランの後ろから顔を覗かせエロースに話し掛ける。


「エ、エロースおにいちゃんっ」


 サミーニャは可愛い妹を演じて籠絡しようという作戦の様だ。


「どうしたのぉ?僕の可愛いサミーニャ♡」


 エロースは蕩けきった顔でサミーニャに近付く。


「う゛、サ、サミーニャ、おにいちゃんにお願いがあるのっ」


「なんだい?僕、サミーニャのお願いなら何でも聞くよぉ♪」


 エロースは更に一歩近付いた。


「ひっ、わ、私の世界の共同管理者になって欲しいなっ!」


「可愛いサミーニャのお願いなら良いよって言うに決まってるじゃん♪さぁ、僕の胸に飛び込んでおいで♪てか、デスラン邪魔」


 サミーニャはどんどん近付いてくるエロースに耐えきれず、完全にデスランの後ろに隠れてしまった。


「エロース、俺のサミーニャが怯えるので近付かないでください」


「はぁあ!?いつからてめぇのもんになったんだ!?」


「いつって、物心がついてからずっとですよ?ねぇ。サミーニャ」


 サミーニャはデスランの問に彼の後ろでコクコクと頷く。


「だぁー!クソッ!なんだってこんな生命力がマイナスに振り切れてるヤツに取られんだ!!」


 デスランの纏う空気が急激に冷えた。


「はっ、何を今更。俺は生命力溢れるサミーニャだから惹かれるんだ。てか、そもそもお前にはセレーネが居るだろうが」


「あいつの愛は純心(おも)すぎんだよ!」


「なぁ、デスラン。早くじっちゃんのとこ行かね?兄貴の相手は時間の無駄」


 サミーニャはデスランをぐいぐい引っ張り、早くその場から離れようとする。


「そうだな。変態野郎の相手は時間の無駄だな」


「サミーニャ!僕との甘い時間が無駄だなんて言わないでぇ!!」


「じゃあな、兄貴。共同管理者になってくれてありがと。デスラン、先行ってるな」


 サミーニャはタタッと走ってその場を後にした。


「ふっ」


「あ゛ぁぁぁーー・・・」


 エロースはデスランの勝ち誇った顔を見て泣き崩れた。


  ***


 サミーニャは念願の世界を手に入れた。世界を安定して運用出来るには、もう少し時間がかかるらしい。


 今日のサミーニャはデスランと共に事務作業をしている。

 それぞれの世界での死因や年齢などをグラフ化したり、出生率や平均寿命などの数値化を行い管理者に提出する事は二人の仕事だ。


「デスランはなんでエロース兄並みに俺の所有権を主張すんだ?あ、それとって」


「所有権だなんて心外ですね。ただ俺の恋人(サミーニャ)って言ってるだけじゃないですか。変態野郎と一緒にしないでください。はい、どうぞ」


「ありがと。変態って、あれでも一応俺の兄貴だからな?」


「サミーニャの兄でなければ、さっさと冥界送りにするんですけどね。あ、ここ違いますよ」


「ははっ。また随分と物騒だなぁ。どれ?あー、勇者は天災だからこれで合ってんだよ」


「あの歩く卑猥の象徴など、滅びてしまえばいいんです」


 デスランの酷い物言いにサミーニャの手は止まる。


「うーん、複雑だが否定は出来ねぇな。でもほら、人間にとっては必要な神だからな?一応愛のキューピッドってやつなんだから」


「あんなもの、部下にやらせてるだけじゃないですか」


「まぁまぁ、そう言うなって」


 デスランの周りの空気が一気に冷える。


「なぁ、サミーニャ。お前は俺のモノだよな?」


「ちょ、急に裏デスランになるな!!」


「お前が悪いんだぞ?他の男の擁護ばかりするから」


「だ、だって、あれでも一応兄貴だからっ」


「そっか。サミーニャにはお仕置きが必要みたいだな」


 怯えるサミーニャを見ながら、デスランは舌舐めずりをする。


「ひぃー!おたすけー!!」


 サミーニャは慌てて部屋を出ようとする。しかし、デスランは一息でサミーニャとの距離を詰め彼女を壁際に追いやった。そして手袋に包まれていても分かる細長く綺麗な形の指を彼女の顎に掛ける。


「ちょっ、デスランっ!」


「ふふっ」


 デスランは妖しく笑うとサミーニャのプックリとした可愛らしい口をカプリと咥える。そして一気に生命力を吸い取った。


「ぷはっ。やっぱりサミーニャは甘いな。ってあれ?あー、もう気絶してる。最近は一段と忙しかったからな」


 デスランは気絶したサミーニャをソファへ寝かせ机に戻った。サミーニャが起きるまで黙々と作業を進めたのは、彼なりの贖罪だろう。


  ***


 サミーニャは今日から止めていた異世界転生の作業を再開する。転生先は新しく作った世界だ。


 サミーニャは記念すべき一人目となる目の前の魂を揺り起こした。


「おい、起きろ」


『うーん。ここはどこですか?貴女は誰?』


「俺は転生神サミーニャ。ここは生者と死者の狭間の世界だ」


『そっか。私、助からなかったんですね』


「いや、本当は助かる予定だったんだが、死神が間違えて連れてきちまった」


『え?』


「侘びとは言ってはなんだが、転生させてやる。お前は違う世界でもう一度人生をやり直せる」


『ぇえ!?いいんですか!?』


「あぁ。お前はどんな転生をご所望だ?」


 サミーニャはそう言いながら、転生作業用の操作画面を出現させた。


『私、女神様みたいな美少女に生まれ変わりたいです!あ、でも色味は今のままが良いです!』


「なんだ。そんな事でいいのか?」


『はい!』


「よし。汝の願い、聞き届けた」


 サミーニャは必要事項を画面に入力し、確定ボタンに触れる。すると魂は眩く光り、異世界へと転生された。


 サミーニャは転生を見届けると、操作画面を消し、次の異世界転生の準備を始めた。


  ***


 サミーニャは世界を作ってから溜めていた魂達をどんどん異世界転生させていく。


「テンプレ転生?なら勇者でいいよな」

「はぁ?右手に宿るの闇の力だぁ?んじゃお前、魔王な」

「俺TUEEEだと!?しゃあねぇ、ほぼ全部の適正値をマックスにしといてやるよ」

「権力者になりたい?いいよな権力。とりあえず王族でいいか」

「生産系チート?なんじゃそりゃ。あー、鍛冶ならドワーフだな」

「のんびり異世界?うーん。ドラゴンとエルフどっちが良い?エルフ?わかった」

「ドジっ子女神転生!?貴様、俺にドジっ子になれと?そうか分かった。全部ダーツで決めてやるよ。何になっても泣くなよ?ニヤリ」

「弱者からの成り上がり?弱者って奴隷か?スライムか?ケモミミ奴隷な。りょーかい」

「逆ハーレム?あぁ、乙女ゲームってやつか。一応ガーデンに飛ばすが、モブでも諦めるなよ」

「TS転生?男になりたいのか。ふーん。ビジュアルは?おぉ、俺に任せろ」

「自由気ままに暮らしたい?猫にでもなっとけ!」


 サミーニャはどんどん異世界転生者を捌いていった。


「あー、つっかれたー」


「サミーニャ、お疲れ様です。はい、これ飲んでください。喉に効きますから」


「あぁ、デスラン居たんだ。ありがと」


 サミーニャはデスランに貰ったお茶を啜る。


「それにしても、凄い量の魂ですね。いつもいつもすいません」


 デスランの覗く箱には異世界転生を待つ魂がまだ大量に入っている。


「まぁ、少し異世界転生の作業を止めてたからな。ふわぁ」


 サミーニャは一つ欠伸をするとソファに横になる。


「疲れた。少し寝る」


「良い夢を」


 デスランはサミーニャに膝掛けを掛けると、彼女の額に口付けた。


  ***


 サミーニャの世界には今日も転生者が生まれる。たまに転生で無い者が生まれると、逆に驚かれる程頻繁に。今や希少価値は逆転している。


 そして、今日も一人の魔王が倒される。昨日は一人の勇者が死に絶えた。


 彼らの魂は浄化を経てサミーニャの世界にまた転生される。輪廻転生で生まれるこの世界の住人も元を辿ればあの世界の魂だ。

 そして徐々にあの世界の魂は減っていく。そのうちデスランは間違えて連れてくる事がなくなるだろう。


 サミーニャとデスランが仕事に忙殺される事無くイチャイチャ出来るようになるまで、あとどれくらいの年月が掛かるのだろうか。

 今はまだ誰にもわからない。



  END



  ***


登場人物

 ギリシャ神話を参考にした作者の創作です。面倒なので全部ゼウスとヘラの子供、孫扱いにしています。

 本物の神様は「オリュンポス十二神」などで検索してみてください。


親世代…2柱

 ゼウス(最高神)

 ヘラ(家族神)


子世代…13柱

 ヘスティア(料理神)

 アテナ(知恵神)

 アポロン(芸術神)

 アレス(戦神)

 アフロディーテ(美神)

 ハーデス(冥界の王)

 ペルセポネ(冥界の王妃)

 その他


孫世代…たくさん

 サミーニャ(転生神)戦神と美神の子

 デスラン(死神)冥界の王と王妃の子

 エロース(性愛神)戦神と美神の子

 セレーネ(純愛神)芸術神と知恵神の子

 その他



 最後までお読みいただきありがとうございます。


 2018.09.23

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