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  ザルド王国編その3

やっとその3です。

さっさと宝物殿に行って、話を進めたいんだけで


大体リンダが出てくるとは!


序盤の物語、いざ!


  第1の祟り神




 ネーダ正教会は実質2人の兄妹によって支配されている。


それは彼等が生まれる前より定まった宿命と呼ぶべき事例であり、正教会の創設から決められた路線で、誰も異議を唱える事は無かった。


異議を唱える者は存在しない、いるわけがないと、言うべきか?


ー 異議など言えるわけがない。


ジタンは、それに一枚かんでいる。

それがまた口惜しい。


「セグ、取り敢えずの調査、と言うか、取っ掛かりは謎の唸り声のする宝物殿だと思うんだけど」


「ですが、宝物殿の扉はあれ以来、ネーダ教の指示で多重結界がはられてますよ」


「ほーぉ」


ジタンがほくそ笑む。

それにマルスが反応する。


「見られちゃやだ!て事で?」

「しかし、多重結界ですぞ」

これはロイド談。


ー 確かに多重結界は厄介だ。だが手がないわけじゃない。でも宝物殿の唸り声に関しては皆目検討がつかない。



◆◆◆◆



「ん?」


あとは明日にしようと皆が腰を上げようとしたとき、窓の脇から小さな生き物が勢い良く飛び出して来た。


小さな鼠に似た、小鼠よりさらに小さい生き物であった。


音もなく走り、マルスの肩を周り右手の甲にチョコンと乗った。


「!」

マルスはちょと驚いて見せたが、直ぐにガテンがいったようだ。


小動物の首にコヨリが巻き付いていた

マルスは起用にコヨリを外すと小動物は木彫りの人形に変わり、塵になり消えた。


マルスはコヨリをほぐし、開いて一瞥し、その紙片をジタンに渡した。


「コヤツがこんな細かい芸をするとは、ビックリじゃ」


ロイドが素直に驚いてた、


「街道の道端でへんな奴がすり寄って来て、たしかチゲリてか、情報屋だとかぬかしてたが」


そう言うと懐から紙片を出して広げて見せた。

四角い紙に○が書かれ中に意味有りげな紋様が描かれていた。


「んー、どっかで見たような」


セグが覗き込んで、呟いた。


ジタンは渡された紙片に目を落としながら、マルスの手の中の模様を見て、


(えん)、だね」と一言。


「!?」


3人が一様に息を飲む。


「エンキドウですか?」


ロイドの声が怒気をはらむ。

マルスとセグの表情も強張た。


「いや、奴じゃないだろう。けど、役(えん

)の一族だろうね」


ジタンは、渡された紙片に目を落とし更に。

「祟り神復活って言ってる」


これには3人とも反応が薄かった。


「祟り神って御伽話なんかに出てくる悪魔的な奴ですよね」


セグの言葉にジタンは苦笑いをする。


ー そーいや前の時もこの件にはあまり深く説明しなかっけ。


「まぁ、この話は明日にして、今夜はお開きにしよう。もう遅いしね。詳しい打ち合わせは、朝飯でも食いながらにしよ」


話しはそこで終わりにし、解散した。3人それぞれの部屋に戻る事になった。


マルスはまだ話し足りないようだったが、ジタンは「また明日」と言って終わりにした。


部屋の灯りを落とし、ベッドに転がる。

寝ると言っても夜着に着替えるような事はしない。


部屋全体に軽く侵入警戒用の結界を張ってはあるが、いつでも飛び出せるように装備は外さない。


聖棒(ロッドステア)はベッドの隅に立て掛けてある。

直ぐに手が届く位置に置いておく。


軽く眼を閉じて、少しすると、脳裏に少女の姿が浮き上がって来た。


ー 夢見の回廊。


夢見の預言姫ラーサの仕業であろう。


回廊がつながった。

睡眠を取る事によって指定する相手に回路をつなぐ手段である。

だが何時でも、誰でも出来るわけじゃない。

これを防ぐ手段が無い。

今の所は。


夢見の姫らの特権だ。


ジタンは、これが嫌いだ。

一方的でこちらからは、簡単に切ることが出来ない。


「まぁ、そお嫌わないでおくれジタン」


ジタンはびっくりして飛び起きた。

モチロン夢の中でだ。


「ラーサ姫じゃない!」


18か19位の黒髪の美女が現れた。


ー ラーサじゃないと、一体?


「わたしをお忘れか?」

白銀の薄衣を一枚しかまといわず、美しい肢体を披露している。


黒髪が腰近くまで流れ、細面の鼻筋がスラリとした、美姫。銀色の瞳が余り似つかわしくない。


夢見の回廊につながっていると、口に出してなくても、考えただけで、全ての思考が筒抜けだ。


ジタンの前に現れた美少女の顔に見覚えがあった。


ー はて、たしか4代、いや5代だった?シレン?


「ばかもの!2代じゃ」


ー 考えがダダ漏れはいやだぁ。


「本当に忘れておったのか?」


「忘れてはいないぞ!第2代夢見姫、し、シモン様でしょ」


「どーだか、今の今まで忘れていたであろうに、悲しいことよの」

両手で顔を覆い、わざとらしく泣く真似をする。


「あの頃は、ベッドでイロイロ楽しいことをした仲だったであろうに、なぁ〜」


ー あ〜もう、面倒くさい。


「何が面倒くさいじゃ!だから、、」


「祟り神の話しが急ぎじゃなかったの?」


遮られ、なお言いたい言葉を飲み込んだ、ようだ。

祟り神の件は確かにやばく、まずい。


「第1の祟り神ザダムよ」

ー やはり、それか。

「なんじゃ、あまりおどろかぬな?」


「祟り神と来て、ネーダ教と関わりがある依頼とくれば、それしかないだろう」


「まぁそうであろうよ」


ズバリ言われて、不貞腐れる。


「ザダムが本当に復活すると?」


「判らぬ、まだ未来は確定しておらぬゆえな」


ー ザダム復活の予知がなされたか。だが未来は確定ではない。


ー そうじゃ、お主達の今後の行動と、ネーダ教の対応の間で未来がふれておる。



「シモン様が来られたのはザダムに含む事があるからか?」

「それもある。だがヌシに会いたいだけかもしれぬ、ひさしぶりにな」


カラカラと笑う。


ー なんだか時間ばかり無駄に流れて肝心の話しがさっぱり進まなかった気がする。


「だいたい、ザダムの情報が少なくないか?もっとこー、なんだ」


「そろそろ時間ぎれかのぉ、またいずれあおうぞ」


ー 結局、詳しい内容は彼女も、持ってはいないか。


闇が訪れ、いつしか深い眠りの中に沈んだ。


ー そーいえばラーサはどうした?




●◆●★◆



夢見の姫はいくつかの国に存在し預言姫としてかなり敬われている。

主に災いを預言することが多い為、彼女らが動く時は余り喜ばれない事が多い。


しかも、知られてはいないが、彼女らは全ての意思が繋がている。

他国の姫と繋がるのは当然として、初代から延々と今に続く夢見姫の意識を全て共有している。

既にこの世を去り、肉体を失っても意識は夢見姫の中に存在する。


つまり、全ての夢見姫が全ての意識と記憶を共有しているのだ。


ー 俺とシモンの間の事もラーサが共有してるって事がなぁ。


「もちろんよ」


ー やっぱり、切れてない。


「いいわよねぇ。シモン様とあーんな事したんだ」


「・・・」


「あら、ふふ。まぁいいわ。次会った時はよろしくね」


ー やりにくい。


ジタンは一つため息をつくと、


「祟り神の事はそれなりに知ってるんだろう」


「そらゃー記憶を共有してるし」


シモン様の記憶を知ることができれば、祟り神の恐ろしさを、ジタンが改めて言わなくても良いであろう。

夢見の美姫シモンは、第1の祟り神の災害によって死んでいる。


この世界、半円球世界ル・リクラードを襲った、最初の災いとされている。


ある日突如、何の前触れも無く天空から地上に舞い降りた災いであった。


火球になって来たと伝えられている。


人の姿に似ていた。

が、似て非なる化け物。

天を突く巨神であった。


頭は2つあった。首が肩の付近からニョキリと生えている。


頭に牛の角を連想させる、ねじ曲がった二本の角が眉間から気持悪く生えていた。

2つの目は釣り上がり、真っ赤に光り、口は歪な牙かゾロリと並び、尖った耳まで裂けている、


その首が二つある。

見るだけで吐気をもよおす不気味さ。


胴は一つ。

ギラギラと醜く金色に光る鱗で覆われていた。


腕は4本。

やはり、金色に光る鱗で覆われている。


胴の両脇から二本づつ生え、妙に長い。

指は五本ある。

長い爪が黒く伸びている。


足は二本、太く、これも金色に光る鱗に覆われている。

爬虫類の足を連想させる、足指が大地を掴んでいる。


尻からは二本の巨大な蛇が尻尾の如くうねっていた。

牙から毒液をしたらせている。


そして、背には巨大な翼が生えていた。

蝙蝠の羽根に似た翼を折りたたんでいる。

それが拡げられたとき、何の位の大きさになるのか?

しかし、いくら巨大でもその翼で飛べるものなのか?


当時「邪神」と呼ばれ、後に祟り神ザダムと呼ばれた怪物。


大陸の中央に降り立った「それ」は、大陸全土に繁栄し、増えた人々をゆっくりとそして確実に殺戮を開始した。



「それ」は人々を手当たりしだいに喰い始めた。


当時、東の大陸ビューザーはゴルドナと呼ばれていた。

ゴルドナ大陸の全土にゴルドナ大帝国が繁栄し、100億に近い人民が生活をしていたとされる。


邪神は出現と同時に、次々とひとを襲い喰らい始めた。


ゴルドナは一瞬のうちに血の海と化した。


帝国も持てる全攻撃力を持って抵抗したが、全く通じ無かった。

物理的攻撃も魔法攻撃も、邪神に傷一つ付ける事が出来なかった。


ゴルドナ大陸は一夜にして滅んだ。

100億の人間が邪神に食いつくされたのだ。


その中に、第2代夢見の姫シモンもいた。

彼女の生きながら食われていく感触までも、代々の夢見の姫は共有することになる。


もちろん、ラーサ姫も例外では無い。


ラーサ姫の顔色が青ざめて見えるのはあの感触を思い出したからかもしれない。


『も〜、変なことを思いださせないで!』

頬を膨らませ、そっぽを向く。


構わずジタンは、

『それでも、我らは奴を封印した』

ー そうだ、滅ぼす事はできなかった。

しかし、永久に封印して、閉じ込めてしまうことはできる。


ラーサ姫は語る。


ー まだよ、まだ未来は確定していないわ。でもサダムが再びこの地に現れるならば、ル・リグラードは長き歴史を閉じる事になるのよ。

 ジタン、脅しじゃないのよ。


ー そうだな、精々頑張るとするか。骨が折れそうだが。


ー ・・・


ラーサの思念か、いやシモンか?複数の思念か、判別しがたい声ならざる声が、木霊し今度こそ回廊が切れた。







 役行者(えんのぎょうじゃ)





早朝の宿。

やっと陽が昇り始め、辺りはやっと明るくなってきた。

薄暗い城下町はまだ人影は無い。


しかし、宿屋の食堂に灯りがともっていた。


ジタンをはじめ、マルス、ロイド、セグの三人が食堂に集まっていた。


マルスもロイドもガタイのデカさは気にも止めないが、セグは人化の魔法を使い一回り小さしている。

そうでないと狭くて仕方がない。

ちなみに猫耳は隠す気がない。


昨晩に朝早くに食事をする旨を伝えていたので、宿の女将の対応は素早い。


女将に断りを入れて、大テーブル二つを合わせ窓際に置いた。

マルスは部屋着を軽く羽織、下着を隠す気もない。

ロイドも軽装ではあるが、しっかり服を着ている。デカイ身体に部屋着が入らない。

セグも似たような出で立ちではあるが、ピンクのワンピースをサラッと着て、女性を少しは意識してかしないか、割と露出度が多い。

が、誰もそんな事は意識しない。


女将は一人で朝飯を運び始めていた。手伝いの娘達が来る時間まてしばらくある。


テーブルに陣取り、四人はそれぞれに、朝飯をかっ込んでいた。

まだ食堂には彼らしかいない。


泊まり人が食堂に顔を出すまで時間があるだろう。

早立ちの旅人もいるだろうが、仕度にも時間かいるだろう。


だからといってはなんだが、周りを気にする事もなく、朝飯を堪能していた。


ジタンはふかふかの焼き立てパンを二切れ。

淹れたてのコーヒー。

温かいコーンスープと薄切りのハム2枚。目玉焼きが二つのメニューだ。

まぁ、一般てきた。


三人は随分と量が多い。


厚切りのステーキをレアで三枚。

超大盛りだ。


冷やした地酒を大瓶で二杯。


それをガツガツと食べきる。


ー みんな肉食だな〜。

と、ジタンはのんびり考えている。



ジタンは食べながらではあるが、かいつまんで祟り神について解説していた。

三人は口いっぱいに肉を頬張りながら、『ほぉ』とか『へぇ』とか一応相槌を打ちながら聞いていた。


ー ちゃんと聞いてるのか?



朝飯を一段落したとこれで、セグが軽く火酒を飲みながら

右手を上げて発言をした。


『そんな化け物をよく封印できましたね?』


『封印を得意にする部族がいるのさ』


『ほえ』とセグが奇妙な声をあげる。

『それが、(えん)ですか?』

マルスが追加の火酒を注文しながら言う。 


『そうだ、彼らとは随分長い付き合いだからな』


まだ早朝だし、時間はあるだろう。

ジタンは役の一族と祟り神について話し始めた。


ジタンと役の行者四人の一行が現地にたどり着いた時には、すでにザダムによって帝国は壊滅していた。


山脈を越え、丘にたどり着いて初めて『それ』を見た。


『それ』は二つの赤い口から奇怪な叫び声をあげながら、

瓦礫と化した大地を更に破壊しながら歩く。


『ザッダーム、ザッダーム』と叫んでいる。




セグはネコの眼を丸くする。


『そんなのムリしっよっ!』


『まぁな、でもやらなくては』


ジタンはしたり顔で言う。


『そこからが大変でなぁ、死にそうになったのて、なら無いとか、本当にしんどかったんだ』


セグは今の話しが本当だとして、いや主ジタンを決して疑う訳ではないが、やはり信じがたい。


ー 祟り神ザダムの話しは何年前の事なの?

その言葉を飲み込んだ。

ゴルドナ大陸など聞いた事も無い。

1000年?2000年?いや、万年?


ー 我が主は何の位の年月を渡り歩いて来たのか?

セグはジタンの時の流れを想像して、ブルッと身震いをした。



『えらい、はしょりますね』とロイド。


『そこでだ、役の行者、小角(おづね)の出番だ』


ジタンの古き友。

役の小角は代々受け継ぐ秘術を使える人物であった。


封印の秘術である。


小角は封印の秘術を発動し、三人の行者は小角を囲み防御の呪文を唱え始める。


結果、秘術は成功するが、三人の行者は命を落とす。

壮絶な最後であった。


小角も瀕死の重症を負う。

ジタンはその横で、ロッドステアを地につき立て、両手で掴み、ボロ雑巾の様にやっと立っていた。


『本当に?』


セグが疑いの眼を向ける。


『ホントーだって。今のネイダー教の本殿の前に巨石のモニュメントがあるだろ。あれがザダムの封印石だ。見たことあるだろう?』


『え?!』

三人は顔を見合わせた。

『あの、デッカイの?』

マルスが息を飲む。


正教会の正面玄関にある、ネイダー教のシンボルにもなっていた。


ザダムの封印石。

ネイダー教の正殿の前に柵で囲われた場所にある。

東西南北の四方に社が設けられ、聖域を表している。


ザルト王国の観光名所になっている。

毎年数千人が集まると宣伝していた。


名所になるだけに、それは奇妙な石であった。


細長い棒状の白い物体であった。

それが天高くそびえ立つ。


とにかくデカイ。

太さは大人十人が両手を広げてやっと囲える。


全長は首長竜レキガンの首より長い。


近くでは棒状の上の先が確認できない。

園庭を出て、遥か高みがやっと確認できた、


両端がエンピツ状に細く尖っていた。

巨大な白い物体は倒れる事なくそそりたつ。

なおかつ、下のエンピツ状の先は地に着いていなかった。


薄紙一枚やっと通る程の隙間があった。

浮いているのだ。


押しても引いてもビクともしない。

雨風があたろうとも、嵐が来ても、大地がゆれようと、倒れる事は無かった。


後に祟り神の封印石と呼ばれ、ネイダー教の基礎となった。


『あのモニュメントみたいな物の下に怪物が眠っているってこと?』

セグが声を小さくして言った。


『まあ、そうだな』


『・・・』


三人は声が、出なかった。


『だから、頑張らなくては、な!』



そうこうしているあいだに、食堂にチラホラと、泊まり客が姿を表し始めていた。


皆、最初はギョッとして立ち止まるが、気を引き締めて離れた席に座り朝飯を注文しついた。


さて、とジタンは食事を終えて席を立とうとしたとき、宿の前通りがざわめきたった。

馬車が止まった気配がする。


重量感のある、軋む音、馬のいななき。


多分4頭立ての立派な奴だろう。

この辺じゃ、似つかわしく無い。


ジタンを除く三人に緊張感が走る。

何者が来たのか?


彼らには、十分予想がつく現れ方であった。


『お偉いさんが、よくあまこんなに朝早くから、こんな庶民の界隈まできたもんだ』

ジタンは軽口を叩くが、悪気は無いようだ。







 近衛師団





さて、表の木戸を開けて入って来たのは、背の高い、年配、の軍人らしき美形の女性であった。


後ろに、若い兵士の男性が一人、護衛らしく従っていた。

副官だろうか?


女性は真っ直ぐにジタンの前まで来た。


女性で位の高そうな衣装を着ているのだから、おのずと予想をすることができる。


全身に随分金のかかった装飾が綺羅びやかに飾られた衣装である、

身分の高い貴族である。


ジタンをはじめ皆がよく知る人物で正確であった。


ー やっばりこの人が来たか、、、


『しばらくぶりだな、ジタン殿』

幾度か聞いたハスキーボイス。


『そだね』

素っ気ない。


『ロイドもセグも、そして、マルスも』

三人とも軽く頷く程度である、


『リンダ.フォーリングス師団長様が直々においでとは、どーいう風の吹き回しで?』


ジタンの言い回しに、少し いら、としながら


『ふん、今は近衛兵士団団長を拝命している』

後ろの若かき兵士がなにか言おうとして、止めたのがわかる。

単純な坊やだ。


ー 近衛師団ときたか!



引き締まっまた細い顔に尖った顎。

金髪を短く狩り、尖った耳が象徴的に見える。

二重のまぶたに沈むブルーの瞳。

スラリと伸びた鼻筋と、薄い唇。

細い柳眉の眉間の縦皺が似つかわしくない。


もう四十を越えたであろうに、今だに背筋をピンと伸ばし、姿勢がカッコ良い。


でも。


『ほぉ〜』と全員。


彼女は一つため息をする。

さて、どう話を切り出すか。


ジタンは皆に軽く目配せをする。


ー 師団長殿が一人で来るわけが無い。

心話。ジタンの放った細く見えない糸が三人につなかり、

思念を伝える道具になっている。


宿の外に、二人。反対の壁側に二人、さらに離れた脇道に騎乗した兵士が四人控えている。


他に、屋根の上に一人いるか?


さすが近衛兵団。厳重な警備だ。


『何も聞かずに、来てくださる事に期待するが?』


『いいけど、』


ー ロイドとマルスは打ち合わせ通りに。

ー 了解。



短い間に、何気なく打ち合わせを終わらせていた。


『行くのは、俺とセグ、で良いかな?』


『もちろんよ』


会話は、それで終わり、リンダ師団長に連れられ、ジタンとセグは宿をでて、迎えの馬車に搭乗した。


最後に若い兵士が、二人に睨みを効かせ、乗り込んただ。

腹に一物ありそだ、


4頭立ての豪華な馬車は、車輪を石畳に軋ませ、静かに動き出した。


街の住人は、そんな光景を覗き診て、『なんだ、なんだ』とささやきあい、噂話を膨らませるのに、忙しい朝であった。




◆◆◆◆◆



ー 近衛師団って言うから、もう少しデキる連中かと思っていたけど・・・


セグは馬車の中で、ヒッソリと考えていた。


その様子をジタンは見て、あまり期待はしないほうがよいよ、とボソリと言った。


馬車の中、向かいにやたら睨むか副官らしい若造を無視しながら思案していた。


そもそも、ジタンが宿屋の周りに張った薄い結界に気づいた様子が皆無である。


この結界は少々特殊な結界になっている。

見る者が見れば、それと分かる様に張ってある。

それも わざと 分かる様に細工をしてある。

術者や魔道士、魔法士とか、ある程度の技量があるばジタンの張った結界を知る事は可能なのだ。


そして、その結界を張った術者の技量を推し量る事ができる。

結果、『こいつには、関わっちゃだめだ』と思わせる事に成功するのだが、


たまに、知ってて絡んでくる輩もいない訳ではない。

そうゆう輩には痛い目に合っともらうこともある。


しかし、この騎士団はそれ以前に、結界そのモノに知らないか、頓着が無いのか。


ー まぁ、騎士団だしね〜。

セグの思惑は結局オチはそこに落ち着く。


『マルス殿とロイド殿は留守番ですか?』

リンダ師団長が何気なく話掛けてきた。


『そだね』

『・・・』


聖棒(ロッドステア)を肩に抱きながら、ジタンは気のない返事をするものだから、話しが続かない。


彼等には、隠密理に宝物殿の周りの調査を依頼していた。


体格がデカイ二人ではあるが、隠密に関する技は想像を超える。

完全に気配を消し、影に沈む。

マルスとロイドが秘密理に動く時、人混みの中に居ても、気づかれる事は無い。


身体がデカイだけの戦士二人では無いのだ。


そうこうしてる間に、4頭立ての馬車は目的地に到着した。


暫く移動したと思う。

多分城に近付いたはずである。


近衛師団の兵士寮、黄金の鷹御殿と呼ばれる、何とも派手な寮であった。


副官らしき騎士が馬車の扉を開け、リンダ師団長を降ろす。


ジタン等もその後にゾロゾロと降りる。


ジタンとセグの二人はリンダ師団長の後について巨大な門の前に降りた。


『この門は通常時は開かん。こっちだ』


右側に有る普通の扉に向かう。既に扉は開けてあり、一同は中に入った。


ー いちいち巨大門を開けたり閉めたりは、重労働だろうし。 セグ談。


さて、中もそれなりに豪華な造りに成っていた。

手の混んた彫刻が並ぶ壁や柱や、天井やら。


金持ちが金が余ると、こうなるのか。とセグは悦に入る。


無駄に長い廊下を歩いていると、何処からか『やー』とか、『たぁー』とか、掛け声が聴こえる。

何処かに、武闘場があるのだろう。


リンダ師団長と副官が前を歩いているが、副官がその声に気づき言った。


『我が近衛師団は王国内でも最強の部隊だ。毎日の修練はかかしません』

『それは、スゴイですね』とジタン。


『後で手合わせ等、いかがですか?』

『いや、滅相もない』


我らは最強だから、少し鍛えてあげましょうか?的な含みがあるのが透けてみえる。


聖棒をかついでブラブラと歩くすがたは、決して強そうには、微塵も見えない。

姿だけなら吟遊詩人的な出で立ちだ。

金属製の棒一本担いでるだけで、ただの青二才であろう。


ー 人は見かけで判断しちゃだめよ。セグ談。

当のセグも少し大きめの獣人にしか、見ていない。


長い廊下を二回も曲がり、やっと目的の部屋の前までたどり着いた。

近衛師団団長室だ。

質素だが、一目で金の掛かった重厚な扉だとわかる。


副官が扉を押すと、重い音をたてて開いた。


室内もきっとゴージャスだろうと考えていたが、期待はずれであった。

部屋の真ん中辺りに応接セットがチンマリと置かれ、両サイドには壁一面に本棚が設置され、分厚い本がギッチリ収められていた。


奥に執務用の木造の立派な机が、ドンと置かれている。

机の上には山積みになっている書類がある。

今にも崩れ落ちそうである。


以外とさっぱりとしている執務室だ。


『まぁ、適当に座ってくれ』


ジタンとセグは言われて、右側のソファに並んて座る。


副官の若者は扉の前で直立していたが。


『パリス、外で待て』


『え、?』

言葉を詰まらせたが、直ぐに扉を開け退出した。


『すまんな、無礼な者で、今日はあんなのしかいないのだ』


リンダ師団長が執務用のデスクからソファに移動しながら言った。


『え?副官か、なにかじゃないの?』


セグは思わず言う。


『まさか、副官は別件で出張中だ、だから共連れに彼を連れただけだ、立候補したのでな、つい』


ナルホド、あの目線には気がついていたわけか。


『さて、宝物殿の話しだが』


リンダ近衛師団長がソファに座り、やっと打ち合わせが始まった。


『国王陛下からの特別依頼だからね、誰でも良いとはいかない、けど、まぁ建前がそう言うもんだからね』



リンダ師団長は言いにくそうだ。


『夢見の姫の御託宣でもあるし、国王陛下の勅命でもあるし、王国の秘宝の探査もあるし』


ジタンは代わりに言う。


本来であれば、このような国家の威信に関わるような事案で、近衛師団が出張るはずである。

近衛師団でも、多分近衛憲兵団あたりかもしれない。


それが、たかが風来坊見たいな若造に依頼が行くのは彼等にしてみたら、面白いわけがない。


で、リンダ近衛師団長からジタンに、取り敢えず宝物殿の怪を調査して、腕を見よう、となった。


『そんな所か?』


『話しが早くて助かる』

『でも』

セグが不思議そうに聞いた。


『リンダ殿が一括すれば話しがもっと早くない?』


『今の私はそんなに偉くないんだよ、この地位は言わばお飾りみたいなものでな』


ジタンは眼を丸くする。


『もう若くないしな』


ー フォーリングス家、公爵家だっけ?確か四大派閥の一つだぞ。そんなはずがない。なんかあるのか?


『言うことをきかないガキは力で黙らせればよいにのに』


セグが無茶を言う。

『はは、立場上そうも行かないんだよ』

口角を少し上げて言う。


『・・・』

『そうなん?』


セグはリンダの腕は知っている。

戦場の鬼神と呼ばれた女である。

腕が鈍っているとは思えない。


『まあいいさ、では宝物殿の入口の結界解除を頼んてよいか?』


『かまわん、今日の午後にでも取り掛かろう』


その後、多少雑談と打ち合わせをして席を立っち、近衛師団長室を出た。



廊下を歩いて、角を曲がるとそこにあの若造が軽装の鎧武装姿で立っていた。

依然として見下す様な眼で二人を睨めつける。


ー やな予感。


ジタンのこの手の予感はなかなか外れてくれない。






模範試合(よわいものいじめ)






『パリスくんだっけ?なにか御用で?』


この言葉にまたイラっとしたようだが、ぐっと、こらえた、

様に見えた。


『お手間は取らせません。どうでしょう、訓練場まで』


白銀の軽装使用の鎧を全身に纏い、慇懃に礼をする。


ー この坊やは、結構カチンときますね。

ー しょうが無いから、ついて行こう。


『いや』ては言わせない。と目が言っている。



二人の返事を聞くのもそこそこに、若き近衛兵士パリスは先頭をきってあるき始めた。


断るはずは無いと思い込んでいるのが、癪にさわるが仕方がない。


ジタンとセグはノコノコとついて行った。


訓練場はこの敷地の真ん中にバカ広く建てられていた。

訓練をするスペースが3か所あり、それぞれが十分なひろさが確保されている。


多分、兵団は三部隊あるのだ。

それが証拠に三面の訓練場に各々の団旗が掲げられていた。


既に四、五十人の兵士が待ち構えていた。


中央の訓練場をぐるりと囲んでいる。


壁側に陣取り、二人の入って来るのを待っていたようだ。



『やっと来た』とか『おせーよ』とか、聞こえよがしに言っている。


全員が立派な鎧を装備している。


上級騎士らは公爵家とか伯爵家の貴族の出であろう。

その下に下級貴族らが付きしたがう。


どっちにしても、実践経験の無い『偉い騎士様』なのだ。



さっきのパリスが木剣を二本持って近づいて来た。


ボイと一本をセグに投げ渡す。


『どうですか?3本勝負で』


セグはジタンに目をやる。


『しょうがないね、でも怪我させちゃだめだよ』と目で言う。



セグは一息入れると、訓練場の中央に進み出た。


パリスも歩み出る。


ー おや、この坊やが相手なのか?


ジタンは誰か変わらないのかと周りを見たが、その気配がない。


ー う〜ん。


パリスの立ち姿を見ても、セグの相手にならないのは一目瞭然であろうに。


パリスは上段のかまえ。力で圧倒する気だろう。


セグが剣を両手に下弦のかまえ、八双だ。

これだけで実力差があるのがわかる。


突っかかって来るパリスの剣を、軽くはじき、返す刀でパリスの喉に剣が入った。

もちろん寸止めだ。


早すぎて見えなかったに違いない。



『!』


一本目の勝負が着いたはずだが、パリスは『まだまだ』とか言いながら、立て続けに剣を打ち込んで来た。


セグは全ての打ち込みをさばき、剣を弾き飛ばした。


再び、喉に切っ先が入る。


パリスは信じられないとばかりに、身体を震わせて落ちた剣を拾う。

そして今度は獣の様な奇声を上げて、切りかかって来た。

何度目も力まかせに斬りかかる。


三本勝負とか言ってのに。セグはゲンナリして剣を弾く。



とうとう、パリスは荒い息を肩でしながらしゃがみ込んでしまった。


『今まで負けた事が無いのだよ』


いつの間にか、リンダ団長がジタンの後に居て、囁いた。


騎士達は誰も気付いていないようだ。


ー そーいやリンダも隠密の使い手だったな。


『彼の部下、下級貴族相手としかやらぬ、誰もが負ける事しかできぬからな』


ー 下手に勝つと後が面倒くさいわけか。


しゃがみ込んて、ゼェゼェ言っているパリスを見下ろし、セグは『体力も無いガキ』と低評価を下す。


『下がれ、パリス、もうよい!』


一回り身体の大きい男が前に出てきた。


ー 中隊長のダリムよ。

リンダ師団長が教えてくれた。


ー こいつは少しデキそうだ。


しかし、少しできそうだ、てだけで、それだけである。

鎧の隙間から見える筋肉は、盛り上がり一見強そうに見えるだけで、だからどうとゆうわけではない。


ベンチプレスとかで、身体を鍛えたのであろう。

見事な逆三角形の体格ではあるが、剣を扱うには無駄な体格である。


マルスやロイドとは身体の造りが全く違うのだ。


セグはゲンナリしている。

確かに少しデキるだろうが、やはり相手には不足であろう。


ー しょうがない。


『セグ、代わろう』


木剣を受け取り、聖棒を渡す。


『はい、お願いします』


意外に素直に交代した。


あとはお任せしました。て事だろう。


『女性ばかりにやらせるのは、忍びないので、次は私が相手をします』



『よかろう。女を打ちのめすのは、性に合わんからな』


セグが後ろの端にいるリンダ団長に気付き、側による。


ー コイツらどーなってんの?よく近衛師団やってられますね?

ー そーぉ言うな。彼らは第三団。実働部隊ではない。主力部隊は今遠征訓練中でな。出払っておる。


ー え!じゃあ?


ー こ奴らは、公爵家の三男と嫡男外氏とかでな、ことあるときは、城壁内の防衛任務が主になる。まぁ、敵と戦う事は少ないと思うぞ。


ー はぁ〜、でも貴族意識は人一倍ある、と。めんどくさ。


リンダ団長はそんな連中も養っているわけだ。


セグは彼女の気苦労を察した。


さて、ジタンと中隊長ダリムの試合。



ダリムはやはり剣を上段に大きく振りかぶり、構えた。

やってることは、パリスと変わらない。


ジタンは右手で剣を持ちそのまま下方に下げる。

下段八双、壱の型。


ー いつもの得意の構え。彼はこの構えに向かっていけるかな?

セグは相手の出方を見ていた。


彼女はこの構えのジタンに勝った試しが無い。


ー 一合でも打ち合えれば、大した者だけど。


自然体でスラリと立つジタンに対し、ダリムは振りかぶったまま動こずにいた。いや動けないのだ。


玉の汗が滝の様に流れていた。


ー う、動けない?何だこの重圧は?


ダリムはジタンの構えだけで、打ち込むスキを見いだせないでいた。

それどころか、一歩でも踏み出せはたちまち打ち据えられるのが分かった。


周りの見物人が焦れだして『早くやってしまえ』とか『どーした!切り倒せ』てか、野次りだした。


『ぐ!』

声援に乗じて前に出ようとするが、身体が出ない。

顔面を油汗がいくすじ流れる、



ジタンが足を動かそうとしたとき、ダリムは膝を折り崩れ落ちた。

剣をおき、右手を上げて『参った』と小さく言った。


見物人は一体何が起きたのか分からず、場内はシーンと静まり返ってしまった。


ー 一合も打ち合えずか、やれやれ。


セグが呆れていると、リンダ団長ばすっと前に歩き出て行った。


『実力テストは終わったと思うが?どうかな?』


彼女のハスキーボイスは静かな場内に響いた。


『では、解散しろ!』


ジタンとセグはパリスの青い顔をチラリと眺めて、訓練場を後にした。







宝物殿の怪異に続く。

















































































次にやっと宝物殿に突入〜です。

鬼がでるか蛇がでるか?


物語は佳境に向かいます。


絶対!おもしろくなる!

乞うご期待!

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