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最弱ジョブからの道のり  作者: ponpoc
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ジョブとスキル3

 闇魔法使、それがおれに与えられたジョブである。しかし、このジョブはどうやら人間には習得ができないらしい。

 一人、心の中で歓喜していたが、すぐに、婆さんから説明を受けた。つまりはこういうことらしい。

 まず、魔法といものは、5つのタイプに分類される。すなわち、火・水・風・土・金に分けられる。そして、この5つのタイプともう一つ、光と闇の二つがある。光と闇は対極の関係であるということ。また、人間には、まれに光と闇属性の魔力を持つ者がいるが、人間には習得できない分野であるということ。つまり、人間に扱える魔法属性は、最初の5つの属性に限られるということである。

 そのため、おれに闇魔法使のジョブがあたえられても、何もできないということだった。

 このことと、もうひとつ、そもそも、魔法というものは、この世界では最低級のジョブであるということ、なぜなら、魔法というものは、生活を助けるためのものでしかないということだった。

 わかりにくいだろうけど、つまりは、おれが、そうぞうしていたアニメのキャラのように、派手な攻撃をしたり、誰かを守るシールドのようなものも魔法ではつくれないということであった。

 魔法というものは、暑い日に扇風機代わりに風を送ったり、料理をする際の火起こしなどなど、その程度のものでしかないといことである。

 このためであろう、婆さんがアリスに諦めろと言ったこと。

 近い未来の話であるが。王選の最終決着は、主が召喚した者、つまるところの今日、ジョブを与えられた7人だ。それが、自分の誇りと主への忠誠を胸に、己の磨き鍛えた力で決闘をするといことだった。

 だから、アリスは諦めろと言われたのだ。

 何故?それはおれが悪いからだろう。いや、それしかないだろう。

 おれはアリスに顔向けできないでいた。

 リビアの方をチラとみれば、酷く冷めた瞳でおれを軽蔑するように見ている。また、素晴らしいジョブを自分の拳となり、剣となり、盾となる者に与えられてご満悦な王子王女はクスクスと呆れたような、否、嘲笑うかのように酷く醜い笑を顔に貼り付けていた。

 「ふふふっ」

 唐突に、おれのすぐ後ろから微笑みが漏れるのが聞こえた。アリスしかいない。

 おれが恐る恐る振り向くと、初めて会った時と変わらない微笑みをおれに向けてくれていた。

 「ごめん・・」 それがおれの口からこぼれた言葉だった。

 「何を謝っているの?」 アリスが不思議そうにおれの瞳を見つめてきた。

 「おれ、いつも軽はずみはことばかりで、中途半端に生きてきた。だから、今回だけは、立派に成し遂げたかったんだけど、力になれそうにないや。だから、ごめん・・」

 おれは情けなかった。ただただ情けなかった。今までもたくさんの、もう数え切れないほどの情けない思いをしてきた。だからだろうか、忘れていた。悔しいということに。こんな感覚は久しぶりだった。

 「ルキアは本当はたくましく、立派に、強く生きて行きたかった。そういうことだよね。でもね、私思うの、そんなに自分の理想通りに自分は作れない。だから、私は、自分を受け止めるようにしたの。弱い部分はどうしようもできないから、じゃあ、まずはできることを頑張ろうって。だから、ルキアももっと、自分とちゃんと向き合って、自分を高めていけばいい。ルキアは必ず強くなる。私の、勘だけど。自分の直感て意外と当たってたりするでしょ!?それにルキアは唱えたんだから、私の召喚の条件をね。」

 そう言いながら、アリスはおれが無意識のうちに震え握っていた拳を優しく開き、白く、柔らかな手を重ね、最後におれを、ふっきれさせる言葉を紡いだ。

 「私はね、死のうかと思った事がある。けど生きている。・・んーと、ごめんね。うまく言葉にできないけど、とりあえずルキアは、私の右腕として活躍してもらうんだからね。私のために命をかけて、強くなって。」

 それだけの言葉なのだ。傍から見れば、そんなちっぽけな、曖昧な言葉で開き直れるものかと思われるかもしれないけど、おれには十分だった。


                   *===*===*===*===*


 アリスの部屋に戻ってきたおれたちは、もう一つ確かめるべきことがあった。それは、スキルというものだ。

 ジョブを与えられたのち、婆さんから青白く光る水晶を渡された。どうやら、この水晶に力を込めると自分のスキルがわかるらしい。

 また、何故スキルの確認だけ自室でやるのかというと。スキルは切り札になるらしい。単純な理由であるが、隠したい爪といことなのだろう。婆さんは皆に同じ水晶を渡していた。

 さっそくおれは水晶を手に取り力を込めようとしたとこで、ふと考えた。

 「アリス?力を込めるって・・どうすればいい?」

 そうなのだ。力を込めるって意味がわからなかったのである。

 「んー・・リビア?どうすればいいの?」

 アリスもわからなかったようなので、リビアに頼った。

 「多分ですが、魔力を込めるということだと思うのですが。いきなりは難しいと思うので、自分の信念や願いを強く念じれば、おそらくは、自然と魔力が宿ると思います。」

 「さすがリビアね!!強い思いには魔力がやどったりするものよね。」

 へー、と思いながらおれは水晶を握り締め、ひとつだけ念じた。それは、いつも自分の中にこびりついた感情。

 (おれは、情けない、弱い、中途半端だ、逃げ出したいつも同じだ。だから?そう。だから、最後にしよう。おれは命をかけて、自分を強くしたい。)

 おれがそう念じた途端に、水晶が一瞬だけ、目が眩むほどの強い光を発し、砕け散った。そして、砕けた水晶の中から、紙切れが出てきた。おれはそれを拾いあげ、読もうとしたが、読めなかった。

 どうやら、言葉は理解できるのに対し、文字は理解できないみたいだということに初めて気づいた。いずれ、文字は覚えなくてはいけないのだろう。何かと不便になるだろうから。

 まぁ、それは今は置いといて、自分のスキルが確認できないことにはどうしようもなかった。

 「ごめん。おれ、この世界の文字読めないや。代わりによんでくれない?」 おれは素直に聞いた。

 アリスはおれから紙切れを受け取ると、一通り目を通して説明を始めた。

 「つまりは、ルキアの能力は吸血ということみたい。血を飲むことによって魔力、体力等が回復するらしいのだけど、ごめんなさい。説明が曖昧すぎてわからないことだらけで・・・」

 アリスは言葉に詰まってしまったみたいだったが、おれは、とりあえずは理解をした。いわゆるあれだ、ヴァンパイア的な感じなのだろう。

 アリスが言葉に詰まっているのをみて、リビアが自身の推測を話し始めた。

 「アリス様。おそらく、ルキアのスキルは上級スキルになるのではないでしょうか。だから。説明が曖昧に描かれていると思います。スキルは時に身を滅ぼします。だから、スキルの全ての説明はないと思います。あとは、自分自身で理解しろということではないかと。」

 以外にこのロリは頭がいいようだ。

 おれとアリスを一瞬で納得させる説明でした。

 

                    *===*===*===*===*


 「運命の歯車が回りだしたわ。さて、いくとするかの。ヒッヒッヒ。」 甲高い笑い声を狭い部屋にこだまさせ、年老いた魔法使が一人、分厚い魔導書を抱え、部屋をあとにした。

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