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僕の土魔法最強伝説!  作者: @さう
第一章 異世界と嫁
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僕が村に帰ったら


 僕が村に帰ったら


「領主様がわざわざ確認しに来たんだ。もういいだろ。ほら、帰るぞ」

 というエイダの言葉に、僕たちは荷物を纏めてドラゴンの死体の前を離れた。

 元々はギルド職員を待っていた。ドラゴン討伐の確認のためだ。

 だが、領主様がそれをやってくれたのだから、もう留まる理由は無い。

 というか、単純に、疲れた。


 埋めてあった討伐部位袋を掘り出し、キャリーカートに積み込む。

 手持ちの袋にドラゴンの肉を詰められるだけ詰めた。

 周辺でモンスターを狩っていた冒険者達はギルド職員が来るまで残るつもりらしい。ドラゴンの素材を切り出したり運んだりするのも仕事になる。ギルド職員が来たらそのまま合流して働くつもりらしい。

 良く働く人達だ。冒険者にもこういう人がいるのかと感心した。


 森の中を進んで行くと、いつの間にか夕方になっていた。

「モンスターの襲撃がありませんでしたね」

「そうだな。領主様が連れてきた騎士団が何かやったのかもしれん」

 夜もモンスターの襲撃は無かった。


 2日目の昼ごろ、そろそろ森を抜けようかというところで、大集団と出くわした。冒険者も混じっているが、多くは作業員だった。荷車がいくつも引かれている。

 領主様別荘の建築工事の時に見かけた顔もちらほら混じっていた。

 僕達に気付くとギルド職員が前に出てきた。

 ドラゴンの死体の場所の確認と少し話をして別れた。


 午後には街に辿り着き、女冒険者達と別れた。

 ギルドへの報告は彼女達にまかせる。

 僕は早く村に帰りたかった。

 街の城郭を出て、僕は走りだした。かなりクタクタだったと思ったが、まだまだ体力が残っていた。

 結構な大荷物を担いでいるのに、あまり重さも感じない。

 やっぱりこの世界に来てからだいぶ体力が付いてる。


 ・


 夕方には村に着いた。

「ミチザネー!」

 まず子供達に見つかった。

 最初の1人に反応して他の子供達も飛び付いて来た。

「ミチザネどこいってたのー!」

「ミチザネずっといなかったね」

「ミチザネ帰って来ないかもってお父さん泣いてたよ?」

 不吉な事を言う奴がいるな。

 ともあれ、子供達が元気そうで何よりだ。

 夕食前に帰って来るのもどうかと思ったが、むしろこのタイミングで着いて良かった。

「兄弟! 帰ってきたか!」

 男達も集まってきた。

 冒険者達に揉まれた後だからか、イカツい村の男達にも以前ほど威圧感を感じなかった。むしろ懐かしい。

 早速村の広場に連行された。

 男達が、

「兄弟が帰ってきたぞー!」

 と叫ぶもんだから、村人達が何事かと集まって来る。

 子供達もどんどん増えてきた。

「帰ってきたか」

 村長も出迎えてくれた。

 そして、村長の隣にはラーテが立っている。

 口をもにゅもにゅさせながら僕を見ていた。

「ただいま」

 僕の言葉に。

「……おかえり」

 と応えてくれた。


「お土産あるんですよ」

 と、僕は担いでいた袋を下ろした。

「なんじゃこれは」

「ドラゴンの肉です」

 村人達がざわめいた。


 ・


 そのまま宴会の流れになった。

 ドラゴンの肉は全員分切り分けるとたいした量にならなかったが、それでも皆喜んでくれた。

「ドラゴンー? ぼく今ドラゴン食べてるの?」

「ドラゴンうめー!」

「ドラゴンの肉おいしー! ヤギと一緒にドラゴン飼うー!」

 あれは家畜にできないと思うぞ。

 子供達も元気にドラゴン肉を齧っている。

 ドラゴン肉はだいぶ日が経っているのに全然悪くなっていなかった。不思議な肉だ。

「お前さん達がドラゴンを倒したというのは街の人間から聞いていたのでな。帰りを待っておったのじゃ」

 僕の事を気にして情報収集していた様だ。ありがたい事です。

 ラーテとは食事が別だ。

 ふと見てみたら、ラーテが奥様方や子供達に詰め寄られていた。ラーテは恥ずかしそうにしていたが、まんざらでもなさそうだ。

「兄弟! 酒だ! 酒飲んでるか? ほら、飲め飲め」

 酔っぱらいに絡まれた。

「すみません。疲れているんで、お酒飲むと胃が痛くなっちゃいます」

「そうか! しょうがねぇな、俺が兄弟の分も飲んでやるぜ!」

 そう言って、僕のために持ってきたはずのジョッキを傾ける。

 僕は隣の村長に向き直り、

「蒸留酒上手くできてました?」

「うむ。あれは凄いな」

 村長が頷く。

 ドラゴン討伐に出る前、ゴブリンショックの不安から皆を元気にできないかと思った。

 皆酒を飲むと元気になるので、蒸留酒なんてどうだろうかと。

 村に常備してある酒を少し頂いてみたのだが、やたらと酸っぱく、アルコール度数も低いみたいだった。

 何かの果実から作られたものらしいが、濁りもあって、あまり精製されていない感じがする。

 とはいえ、これは安酒なのでもっといい酒もあるとは思うが。

 それを蒸留して蒸留酒を作り、果物のジュースなどに混ぜて飲んでもらおうかと思った。

 ずっと使っていなかったお金で、酒と屑鉄を買ってきて、土魔法で蒸留器を整形した。予算の問題で屑鉄の量が少なく、あまり大きなものは出来なかった。

 それでじっくり蒸留しているところでドラゴン討伐の知らせが入った。

 僕がドラゴンと四苦八苦している内に、ラーテがちゃんとやってくれていたようだ。

 この宴では出ていなかった。

 元の酒の量もほとんど無い。流石にそれだけの量は作れないだろう。村長の試飲で無くなってしまったそうだ。


 ・


「ラーテ、蒸留酒できたんだね」

「ああ。見ているだけだからな。簡単だった」

 火加減の調整もあったはずだ。

 アルコールは80度程で蒸発するから、その辺りの温度に抑えなければならない。

 ガラスの覗き窓は作れなかったので、覗き窓を付けた。

 たまに覗き窓を開けて中を見て、過度に沸騰していないかどうか確認しなければならない。それは面倒くさく、神経を使う仕事だ。

 ラーテは文句の1つも言わなかった。

「ドラゴン、強かったか?」

 ぼそりとラーテが言う。

「強かったよ。とんでもない化け物だった」

「そうか。でも、勝ったんだろう?」

「なんとかね」


 ぽつぽつと会話をした。

 今夜はいつもと違う。ラーテと会話をしているのもそうだが、距離が近くなった。手を伸ばせば届く距離だ。

 お互い家の端っこに寄って眠っていたのがかなり昔の事に感じる。

 少しは僕の事を認めてくれた様だ。

「ミチザネの遠い祖先に凄い奴とかいなかったか?」

 と聞かれた。

「遠い祖先? さぁ。分からないな」

「そうか」

 ラーテは血統を気にしているんだろうか。

 確かに僕は外国人だし、気になるのかもしれない。

 ごくごく中下程度の家庭で育った身だ。ご先祖様の事も知らない。

 せめて僕が頑張って、ラーテが自慢できる様な夫にならないと。


 どちらからとも無く会話が途切れていき、いつの間にか2人とも眠っていた。

 

 ・


 それから数日村で過ごした。

 期限は2週間と聞いていた。まぁのんびりやろう。

 朝起きて、仕事をして、昼寝して、午後は子供達と遊んで。

 元の暮らしに戻ると、ドラゴン討伐なんて夢だったんじゃないかと思えてくる。

「これドラゴンー?」

「ドラゴン羽はえてるー!」

 僕は石を変形させて、ドラゴンフィギュアを作った。

 モンスターフィギュアシリーズは結構ウケた。僕が作るそばから、子供達が貰っていった。

 川原から大きめの石を拾って来て作ったのだが、胸に抱えてうんしょうんしょと持っていく。

 もっと小さな石でも同じディテールで作れる様にしよう。

 フィギュア製作は僕の土魔法の練習も兼ねている。


 ラーテもチラチラ見ていた。欲しいのかな?

 でも、普通に作って渡しても「こんな子供っぽいものを」とか怒られそうだし。

 ラーテは素直じゃない所がある。それを上手く扱うのが夫たる僕の使命だろう。


 なお、モンスターシリーズは子供達の弓矢練習の的になってました。

 ちょっと切ない。


「ほう。これが西のドラゴンか」

 と、村長がドラゴンフィギュアを見ながら言った。

「東のドラゴンは違うんですか?」

「うむ。翼は無いし、もっと細かったのう」

「それは……」

 僕は持っていた手のひらサイズの石を変形させる。

 やっぱり小さいのを細かく変形させるのはまだ難しい。要練習だ。

「おう。そうそう。そんな感じじゃ」

 僕が作ったのは、東洋の龍だった。

 蛇の様に長い胴体に同じくスマートな手足。

 僕のフィギュアがどれぐらい似ているかは分からないが、概ね地球の東洋龍と同じような姿をしている様だ。

「強かったですか? 東方のドラゴン」

「強いなんていうもんじゃないわない。あれは人に相手できるものではない。そもそも空から下りて来んしな」

 村長によれば、東方のドラゴンは空の主らしい。

 激しい嵐と雷を操り、地上の人間などゴミを払う様に片付けてしまう。

 強力な風魔法を使うみたいだ。雨を降らせるらしいので、水魔法も使うのかもしれない。

 西のドラゴンが肉体派なら、東方のドラゴンは魔法使いという感じだろうか。

 ただ、西のドラゴンは種類が多い。東方のドラゴンの様なのもいるのかもしれない。

「じゃが、お前さんの話からすると、東方のドラゴンはモンスターではないぞ」

「そうなんですか?」

「うむ。東方のドラゴンは人を目の敵にはせん。天に唾吐く愚か者がドラゴンの制裁を受ける事はあるがの。基本的に天気の様なものじゃ。今日はドラゴンか、という程度じゃの」

 東のドラゴンはモンスターじゃないのか。っていうか、晴れのち曇り時々雨、地域によってはドラゴン? 凄いな東方。


 ・


 村に帰ってから早速ラーテに言葉を習った。

 翻訳魔法を切るのが難しかった。

 ラーテは公用語も喋れる。村の言葉と、公用語を習った。

 いきなり言葉が通じなくなるのは不安かと思ったけど、もう関係が築かれている。むしろ新鮮で楽しかった。


 ・


 村に帰ってきて7日経った。

 ギルドからの使いが村に来て、街に出かけた。

 ちょうど村に滞在していた女冒険者3人も一緒だ。


 街のギルドでドラゴン売却の代金を得た。

 ドラゴンは脇腹に傷少々、内臓傷だらけ、尻尾一本、腕1つ無くなっていたが、それでも大金になった様だ。なった様だ、というのは、僕が未だにお金の価値をよく分かってないからだ。

 十分な現金が街の冒険者ギルドに無かったため、ほとんどは証文で渡された。

 僕が王都に行く事になっているので、現金化は王都で行う予定。

 4人で分けたお金は、1人頭で金貨88枚だった。

 エイダによれば、街の人間の年収が金貨4枚ほどらしい。約22年分だ。ドラゴンすげぇ。

 でも、普通は100人以上で分けるそうなのでまぁ妥当なのかもしれない。


 内臓や脳がズタボロだった事に関しては、元々乾燥させて粉にしたり切り分けて袋にしたりするという事で値引きは無かった。鱗もあまり傷が無く、頭部に至っては完全な形のまま残っているので、むしろ買取価格は普段より高かったらしい。土魔法のお陰だな。

 僕達に買取代金を払って、人足や護衛にも報酬を払い、それでも儲けが出るドラゴン素材。凄いな。


 現金は1人金貨6枚ずつ。これでも洒落にならん大金だ。

 この後は王都でさらに討伐報酬をもらう。

「ドラゴン討伐の報奨金ってどれぐらいなんでしょうか」

「今度の奴はまだ被害を出してないから、そこまで高く無いだろう。金貨300か400といったところかな」

 エイダの言葉に手が震えた。4人で分けたとしても、やはり高額だ。一般庶民として育って来た身としては、大きなお金というのは喜びよりも恐怖の方が勝る。宝くじの高額当選者ってこんな気持ちなんだろうか。怖い。


 金銭価値の換算というのは、本来公務員の給料で比較する。物価の変動に強い物、あるいは変動に敏感な物でも換算したりするが、公務員給料の方が確実だ。

 地球の日本での価値に換算してみようと思ったが、物の値段や高いもの安いものがこの世界では違うだろうから、ちょっとよく分からなかった。

 娯楽があまり無い世界での年収が、娯楽にお金を使っても貯金ができる世界の年収と同じとは考えにくい。

 この世界の公務員というのも分からないし。

 そもそも金属貨幣というのが厄介なのだ。

 貨幣自体に使われている金属の価値も絡んでくるため、物価が高くなったり安くなったりの変動がよくあるらしい。特に近くで金鉱山が発見されたり、戦争前後や不作の時には気をつけろとの事だ。

「だから貯金はしとけよ。お前の場合は鉄製品で貯蓄するのも手だな」

 と、エイダに釘を刺される。

 エイダが体験した事がある酷い価格変動は、滞在していた街の貴族が愛人に金細工を送ると言って金を集め、一時的に金の価値が倍に跳ね上がった時があったそうだ。同時に金貨の価値も上がった。

 上がったのが金の価値だけだったので商人連中が銀貨や銅貨の両替益でダバダバ儲けて、すぐに相場は戻ったそうだが。

 日米和親条約下の日本でも金と銀の両替比率で外国に利益を持っていかれた事があった。こっちではまだ国内でも全然やってるみたいだ。

「でも、金を集めてたわけで、金貨を集めてたわけじゃないんですよね?」

「まぁ…… 溶かしてたんだろうな」

 貨幣の破壊はこの国でも重罪。

 その後、その貴族がどうなったかは知らないらしい。

 性欲なのか愛欲なのかわからないが。振り回されるとろくな事は無い。


 なお、うちに金庫なんてないので出発まで商人ギルドの貸し金庫を借りた。

 証文を持っていると手が震えてくるし、隠してみても不安になってくる。小心者ですみません。

 それで貸し金庫に預けたのだが、その際、投資、投機の誘いを延々受けた。全部断った。そもそもこの証文分のお金は使い道が既に決まっていた。

 今後取引を行う予定は考えていたので、その辺の話をして、なんとか引いてもらった。


 ・


 もうすぐ王都へ立たなければならない。

 ちょっと行って帰ってくるだけなのに、既になんだか寂しい気持ちになっている。


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