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「お前がそれ程に愚かとは思わなかった、ローズマリア」
ベッドに半身を起こした状態で、男は傍らに立つローズマリアに冷たい視線を向けた。
「お前のしたことは私に……しいてはこの国に不利益をもたらす物と理解しているのか?」
義父と共にあの女の娘が城へと呼び出されたと聞いた時、ローズマリアは歓喜のあまり踊り出したい気分であった。
護衛の男がどう動いたのかはよく知らないが、きっとこのままあの娘は自分の目の前から消えてくれるだろう。
おそらく、隣国への人質として。ローズマリアの大切な娘の代わりに。
そうして、元の家族だけの生活に戻れば、きっと旦那様も落ち着いて、優しいあの方に戻ってくださるに違いない。
「あぁ、良かったわ。本当に、あなた方が居てくれるおかげよ」
にっこりと微笑みながらそばに控えてくれている侍女たちに声をかけ、香り高い紅茶を飲み干した時、扉がノックされ、執事が顔を出した。
「旦那様がお呼びです。直ぐに部屋へと来るように、と」
無表情のまま淡々と告げられ、ローズマリアは首をかしげながら、持っていたティーカップを少し掲げて見せた。
「今、お茶をいただいておりますの。すんだらお伺いいたしますわ」
いつもなら通る、何のことはない返答だった。
だが、執事は表情を変えぬまま、いつものように一礼をして去っては行かなかった。
「申し訳ございませんが、旦那様は今直ぐに呼んでくるようにとの事でございます。ティータイムは後ほど仕切り直し下さいませ」
入り口のところで立ち尽くしたまま、ジッとこちらを凝視する執事に不快感を感じる。
この執事はいつも旦那様に付いて回って家を開けるくせに、帰ってきたら口うるさく細かい事を言ってきて、ローズマリアは大嫌いだった。
(旦那様の寵愛を笠にきて、嫌な執事。今度、お兄様に相談してみようかしら)
内心悪態をつきながらも、ローズマリアは、ようやく重い腰を上げた。
扉の所に立っている執事は、自分が動くまであの場所からテコでも動かないだろう。
(旦那様、今日はお加減がよろしいのかしら?最近では、いつでもあの子が旦那様の所にいて鬱陶しかったもの。嬉しいわ)
何はともあれ、邪魔者がいない2人っきりの時間なんて久しぶりで、良いことだとローズマリアは頭を切り替えることにする。
執事の強硬な態度は気に入らないけれど、一刻も早くと呼ばれているのだと思えば気分は上昇した。
「髪は乱れていないかしら?おかしな所はない?」
侍女に確認して、唇の紅を軽く塗り直すと、ローズマリアは先導する執事の後をしずしずと歩み始めた。
「………意味が分かりませんわ、旦那様。私、何かいけない事をしてしまったでしょうか?」
浮かれた気分が一転、凍えるような眼差しと声に震え上がって、ローズマリアは瞳に涙が滲んでくるのを感じた。
目にいっぱいの涙をため、縋るように自分を見つめてくるローズマリアにディノアークは1つ、ため息をついた。
この涙に潤む瞳に心が動かなくなったのはいつ頃からだろう。
思えば、あの頃から無理があったのだ。
「ミーシャの情報を隣国に流したのは、お前だろう」
「………何のことか、私には……」
唐突に告げられた言葉にローズマリアは首を横に振った。本当に、意味が分からなかったのだ。
「では、この者は知っているか?」
そう言ってディノアークが軽く手を叩くと、騎士が拘束された男を1人、引き連れてきた。その顔に、ローズマリアは目を見開く。
「私の護衛ですわ。なぜ、縄を打たれておりますの?!今直ぐ離しなさい!」
いつも、自分に影のように侍り、あらゆるものから護ってくれた護衛が後手に縛られて立っていた。肩頬を腫れ上がらせ、唇も切れたのか、血の跡が残っていた。
そういえば、ここ数日姿を見せなかったけれど、どうしてこんな姿になってこんな所に居るのか?
ローズマリアは、驚きと怒りに頬を染め、拘束している騎士に鋭い声を向けた。
「その男が、お前のためにミーシャの事を隣国の間者に話したそうだ。その為、興味を示した隣国の王が、ミーシャをよこせと言って来たわ」
「まぁ!」
反射的にあげた声は、喜色が漏れていた。
では、やはりライラは呪わしい運命から逃れる事が出来たのだ。
隠しきれない喜びに顔を輝かせるローズマリアに、ディノアークはついに嫌悪に顔を歪めた。
「愚かだ愚かだと思ってはいたが、本当に何もわかっていなかったのだな」
「何がですの?あの娘だって先方から望まれていくのですから、不幸な事にはなりませんでしょう?ライラも慣れぬ環境で苦労しなくてもすむ。良いことだらけではありませんか」
明らかにさげずまれ、ローズマリアは憤慨しながらも反論した。
そして、口に出してみれば、それは、本当に素晴らしい結末のように思えた。
(それなのに、こんな簡単なこともわからないなんて、旦那様は怪我の熱で本当におかしくなってしまわれたのかしら?)
だが、次いで言われた言葉に、ローズマリアは顔色を変えた。
「そうだな。お陰でライラは修道院に行くほか道はなくなった」
「どうしてそうなりますの?!」
悲鳴のようなローズマリアの声に、ディノアークは冷笑を返す。
「故意ではなかったとしても、人1人の命を殺めているのだ。当然の処置であろう?」
「だって……でも、それは……」
突きつけられた言葉にローズマリアは次の言葉を探して口籠った。
「………でも、私の時は」
そうしてようやく絞り出した言葉は、誰が聞いても零してはいけないものだった。
それに、ディノアークは冷笑を深めると、いっそ優しく聞こえる声音で語り始める。
それは、ローズマリアの知らない過去の話だった。
「それは、あの時、害されたレイアが庇ったからだよ。当時出産間際だったお前と生まれてくる私の子供を気遣ってね。
それでも、私は未だ離縁する気でいたんだが、君の父上に頭を下げて懇願されてしまってね。
今、娘は2人身となって気が立っておかしくなっているんだ。物言わぬ獣とて我が子を護ろうとするように、全てが敵に思えているんだ、と。1度だけ、私の顔を立てて堪えてくれ、とね」
「………お父様が……そんな」
「………最初のレイアのことは無視、かい?まぁいいけど。ご存知の通り、我々兄弟は君のお父上には並々ならぬ恩があった。兄上からまで頭を下げられ、私は、首を縦に振ったんだよ」
そのときのことを思い出し、ディノアークは空を仰ぎ目を閉じた。
良き大臣であったが遅くにできた末娘にはひどく甘い男だった。そこさえ無ければ、本当に尊敬できる人だったのに。
「後悔しているよ。どれほど恩に感じていようとも、あの時離れていれば、今、こんなにも君と自分自身を恨まずにすんだ。………レイアも、大切な我が子を遺して逝く事も無かっただろう」
つぶやきに、ローズマリアは目を見開いた。
それは、あの日から積み上げてきた年月の全てを否定する言葉だった。
「旦那様、それは……あまりにも……」
ローズマリアの喘ぐような声はうまく言葉にならず、この部屋に来てからの怒涛の展開に頭が破裂しそうだ。いっそ気を失ってしまえたら楽なのだが、片時も離されない冷たい視線が、それを許してはくれなかった。
「例え修道院へと行かなかったとしても、ライラを貰ってくれる貴族はいないだろうな。屋敷の片隅で弟のお荷物となりながら生涯を過ごす方が惨めではないか?」
「そんな、だってあの子は公爵家の娘です。どんな家だって……」
「故意では無かったとしても人を殺めた娘。更にその母親は貴族の正妻でありながら側室を苛め大怪我を負わせた挙句追い出した。
どれ程血筋が良くても、そんな家系の女を迎えようとするのは、相当な物好きか金に困っているか、だろうな。
あのプライドの高い子がそんな結婚を望むかな?
少しでも賢さがあるならば、隣国へ行く話が無くなったと知ったら自ら修道院への道を選ぶと思うがね」
ローズマリアの顔はこれ以上ない程に青ざめ、そのまま床に座り込んでしまった。足から力が抜け、立っていることが出来なかったのだ。
いつもなら、そんな時はすかさず支えてくれる侍女の手が無いことを不審に思い、ローズマリアは背後を振り返った。
いつもなら半歩後ろに控えていてくれる筈の侍女の姿が見当たらない。
不思議そうなローズマリアに、ディノアークはクスリと笑った。
「お前の優秀な侍女達も捕らえさせてもらったよ。調べてみたら不審な出費が山のように出てきてね。別室で詳しく話を聞かせてもらうことにした」
救いの手は無くなった。
ローズマリアは、もう、声もなく震えるしか無い。
そんな彼女にディノアークは、最終通告をつきつけた。
「最後に、お前にも選ばせてやろう。ライラと共に修道院へと行くか、離縁して実家に戻るか、離れに閉じこもるか………。さあ、どれが良い?」
冷たい微笑みに答える声は無かった。
ミーシャは、揺れる馬車の窓からボンヤリと空を眺めていた。
抜けるような青空は雲ひとつなく、薬草を乾かすには最適な日だなぁ、と反射的に思い浮かび、クスリと笑ってしまった。
今、ミーシャは生まれ育った国を離れ隣国へと向かっている。
用意されていた馬車は六頭立ての立派なもので、長旅を想定してか、座席は広めでクッションは厚く敷かれ、振動で体が痛くなる事も無いし、野宿になったとしても心地よい寝床となってくれることだろう。
(なんだか怒涛の1週間だったなぁ)
座席にもたれても邪魔にならないように、とサイドで一つに編まれた髪を弄びながら、ミーシャはあの日からの日々を振り返る。
お城に呼び出され、引き合わされたのは頬に傷の走る少し強面の青年だった。
隣国の王の近衛だと名乗った彼は、祖父と名乗りあった後、ミーシャに膝をつき礼をとった。
片膝をつき右手を胸に左手を腰の後ろに回し頭をさげる仕草は騎士の最上級の礼の仕草であり、祖父が驚いたように目を見開いていた。
ミーシャは、そんな御大層なものとは知らないものの、なんだか年上の人に跪かれ頭まで下げられビックリして1歩、後ろに下がってしまった。
「私は貴女の一族に命を助けられたものです。その時に出来なかった礼をどうぞ、今、受け取ってください」
頭を下げたままそう告げられ、ミーシャの混乱は益々強まった。
「あの、……その、私、一族とか分かりません。ずっとこの国にいたし、母さんだけだったし……だから、貴方方の望む者では無いんです」
シドロモドロに返すミーシャに、ようやく顔を上げたジオルドは、ニカッと人好きのする笑顔を浮かべた。
「申し訳ない。コレは俺の自己満足です。うっかり本人に礼を言うのを忘れていまして、ずっと心残りだったものですから。遠くとも血の繋がっている方に会えてタガが外れました。お許しください」
「………はぁ。……でも、私本当に母の故郷の事、よく知らないのです。母は、殆ど話してはくれませんでしたから」
あっけらかんと謝罪され、ミーシャはとりあえず頷きながらも、『知らない』事を強調してみた。
それに、ジオルドは微かに首を傾げた。
「でも、髪と瞳の色がそっくりです。俺は今までその色を他で見たことが無い」
そう言われ、ミーシャは自分の髪を一房指に絡めて視界の中に持ってきた。
淡い金の髪は確かにこの国では珍しいかもしれないが、似たような金の髪は良くあるものだし、瞳の色にしても同じだ。
確かに、母親以外で唯一交流のある「森の民」である叔父も同じ色をしていたけれど、身内だからだろうと思っていた。
「森の民の特徴の一つと言われているのですよ。白金の髪に翠の瞳。確認されている森の民は皆、その色を持っているそうです。理由は不明ですが、ね」
(一族がその色って事?受け継がれる血の力かしら?)
狭い範囲で暮らしている人や動物が同じ特徴を持っているのはよく見られる事だと教わった。より、環境に適応した姿に人も動物もなっていくのだ、と。
(寒い土地だと色が白くなっていく傾向が強いんだっけ?後、緑は?瞳の色が薄くなるのは少しの光でも効率良く見えるようにする為、だったっけ?)
おもわず知識を探り、一族の住む環境に思いをはせるミーシャを、ジオルドは面白そうに観察していた。
見た目は年よりも幼く見えるが、その瞳に映る光は深い叡智に輝いていた。
見た目通りと捉えると痛い目を見るだろう。
「貴女が森の民で無いと仰るのなら、それでも構いません。ですが、私達は貴女が我が国にいらしてくださる事を望みます。
側室という立場にご不満があるならば、ご遊学という形ではいかがでしょう?
我が国は色んな国との交流も深く、王立の図書館はあらゆる知識の宝庫となっております。ご興味はありませんか?」
不意に差し出された提案は、ミーシャの心の琴線を擽るには充分だった。
「………側室にならなくても良いの?」
おもわず、ポツリと溢れた言葉に、ジオルドはニコリと微笑み頷いた。
「ここだけの話、我が王はあまり後宮の事に興味がございません。しかし、既に後宮には数多の姫が集っており、只でさえ持て余されていらっしゃるのですよ。
年もミーシャ様とでは10以上離れておりますし、無理に側室とならずとも問題はありません」
人を不能のように言うな、と脳裏で文句を言う主人の顔を無視して、ジオルドはミーシャの隣で胡散臭そうにこちらを見ている前公爵へ視線を向けた。
「この件に関しては私が王より全権を任されております。決して、ミーシャ様の不利益になるような事はしないと、「黒き稲妻」の名にかけて誓いましょう」
「………お主が」
リュシオンは驚きに目を見開き、目の前の男をまじまじと見つめた。
黒い鎧を見に纏い、黒塗りの大槍を手に戦場を縦横無尽に駆け回る王の懐刀。生まれの身分は低いものの、その功績を認められ側近へと取り立てられたと聞いている。
永く平和が続くこの国にすらその名声は届いていた。
自分を見る目が変わった事に内心舌を出しながらも、すました顔でジオルドは微かに頷いてみせた。
本人的には恥ずかしくて仕方が無い二つ名だが、こういう時には役に立つ。
(ま、交渉にはハッタリも必要だよな)
自分に課せられたお役目は『緑の民の娘を国へ連れ帰る事』。
それが果たされるなら、多少の内容変更は許容内だろう。
だいたい、本物だった場合、強要したらマズイのはこっちの方だという事をジオルドは良く知っていた。
今、目の前の老人の中で自分と自分の言葉がどこまで信用があるかの計算がなされている事だろう。
だが、自分の調べた限り公爵家の中は現在かなりごちゃごちゃになっているようだし、大事な娘をその場にいつまでもおいてはおきたく無いであろう。
その点、こちらに寄越せば自分が後ろ盾になり大国の庇護を受けられると言っているのだ。
しかも、側室という一生物の拘束ではなく「遊学」という、不安定ながらいつでも解消できる身分だ。
(これで釣れなきゃ嘘だろう)
何より、目の前のミーシャ本人がかなり心惹かられているのが目に見えている。
予想通り、知識欲をくすぐったのは成功のようだ。
ジオルドはゆっくりと目の前の老紳士が結論を出すのを待った。
そうして、王様を交えて大人達が会話した後、ミーシャの身柄は隣国へと移る事に決定していた。
当初と違うのは、側室ではなく客人として行く事になった事だ。
元々、「側室」も、こちらから言い出した事だったようで、隣国側的にもそれで特に問題は無いらしい。
しかも、公爵家の名を背負っていく事にもなるらしく、急ぎ衣類や持ち物の準備がなされた。
基本、母親の手作りしか身にまとった事のなかったミーシャは採寸から試着に次ぐ試着に目が回りそうだった。
何しろ、ジオルドが帰るのに合わせて一緒に行く事になったので、時間がなかったのだ。
少なくとも夜会服とデイドレスは最低一枚は持っていかなければいけないと、お針子さん達の血走った目にミーシャはタジタジだった。
「既成のものを手直しでも良いのに」
「公爵家として、プライドというものがあるのです」
すっかりミーシャ付きとなってしまった年配のメイドが澄まし顔で教えてくれる。
「まぁ、さすがに今回は時間が無さ過ぎですので普段使いのものは手直しで誤魔化すようですけれど、1枚くらいは、というところなのでしょうね」
「………プライドってなんだろう」
ポツリとつぶやけば、扉の所から吹き出す声がした。
「ジオルドさん!」
「失礼。聞こえてしまいまして」
くすくす笑いながら、ジオルドが気安い様子で入ってくる。
ジオルドは、なぜか面会した次の日には屋敷にやってきて、ディノアースに挨拶をした後、ちゃっかり居座ってしまった。
そうして、暇を持て余した様に公爵家の騎士と手合わせをしたり、観光しようとミーシャを連れ回して日々楽しそうに過ごしている。
ミーシャとしても連れ回される形とはいえ、街の中を見て回れるのは純粋に楽しかった。
屋台の串焼きや揚げドーナツも家で食べる物とは趣が違って楽しかった。
自分の生まれた国のはずなのに目をキラキラさせて辺りを物珍しそうに眺めるミーシャに、ジオルドは笑ってあれもこれもと手渡してくれた。
「王都へ向かう街道沿いの町もいろいろ変わってて面白いですよ?移動はゆっくり見学しながら行きましょう」
ミーシャは、小さな子供を見る様な目で言われて、少し恥ずかしかったけれど、それ以上に道中が楽しみになった。
山の中しか知らないミーシャにとって行き交う街の人たちを眺めるだけで楽しかったのだ。異国では、どんな風景が見られるのだろうと、想像するだけでも楽しかった。
もちろん、残していく父親の事は不安だったが、人の支えがあれば立ち上がれるまでに回復した姿で「大丈夫だ」と笑顔で背中を押されてしまった。
「嫁に行くわけでも無いし、色々学んで帰っておいで。父さんもここで頑張ってるから」
「………うん」
頷き抱きつけば、母を想ってともに泣いたあの日よりも格段に力を増した腕が抱きしめ返してくれた。
ジオルドに知らないよ、と言った手前大っぴらに治療するわけにもいかず、コソコソと父や他の怪我人たちの薬を用意し医師と相談して今後の治療計画を立てるのは面倒だったが、それはそれで面白かった(すっかり信頼を得た医師やその助手に行かないでくださいと泣きつかれたのには困ったけれど)
そうして、旅に出て、まだ1日目だというのに、なんだか少し心細い気がするのは、どんどん故郷の森から遠ざかっているからだろうか?
結局、色々な準備に追われ森の家に帰る事は出来なかった。
(とりあえず、一緒に行こうね、かあさん)
首から下げたお守り袋をそっと服の上から触れる。
その中には母親の遺髪と共に例の不思議な針と管が忍ばせてあった。森に帰してあげたいと用意していたのだが、今ではどちらも母を偲ぶ縁となっていた。
もう一度、窓から見上げた空はやっぱり抜ける様に青くて、どこまでも広がっていた。
きっと、森の家にも、遠く母親の故郷にだってつながっているのだ。
そう思えば、寂しさも少し薄れる気がした。
「………行ってきます」
呟きはどこまでも青い空に吸い込まれていった。
読んでくださり、ありがとうございました。
ひとまずここで第1章締めさせていただきます。
全体の中の『起』がやっと終わった感じでしょうか。
書き溜めた分もなくなったことですし、暫くは更新もお休みします。
また、溜まった頃に一気に放出予定なので気長にお待ちいただけると嬉しいです。
何しろ1話を5〜6千文字で設定しちゃってるもので、なかなかたまらないんですよね,
遅筆で申し訳ないです(^^;;
次の章は隣国までの旅から始まる予定です。
厄介な仕事押し付けられた意趣返しも込めて、のんびり観光して帰る気満々の方が居るもので(笑)
それでは、暫しのお別れを。
ここまでお付き合いくださり、ありがとうございました。