偶然はあるか2
彼女の場合、とんでもない火力が出る事も予測されたので身構えていたけど、そんな心配はしなくて済んだ。
キャンドルに炎が灯り、日没を教えてくれる。
暗い部屋のテーブルの下にシャボン玉を小さくしたようなボールがいくつも転がっていた。
「これは一体?」
僕にとっても、これは嬉しい誤算だった。
1個が直径5ミリ程度のボールを一つ指で挟むと
「これは魔力を目に見える形にしたものなんだ。
君は自分で力のコントロールができないけど、これからはそんな心配はしなくてよくなる。」
シルフィアが自ら姿を現して
「この金色のもらっていい?」
たまに特に魔力が詰まったボールが、こんな色になるらしいんだけど、実際に見るのは初めてだ。
ミカエラが気前よく、7個くらい拾うとシルフィアの両手に乗せた。
「袋も持ってきてよかったよ。」
靴下の先みたいな袋をボールに近づけるとキラキラしながら吸い込まれていく。
「セットで持っていれば、いざって時に役に立つと思うよ。」
「こんな新しいモノが作られているんだね。」
しみじみとミカエラがつぶやく。
「いまは、みんな杖じゃなくて、指輪やブレスレットの形で使ってるんだ。」
そして腰のベルトに通っていた使い魔召喚の箱をテーブルに置いた。
「わぁこれをお嬢ちゃんにあげちゃうのね。」
魔力ボールをもらったせいか、いつもほどシルフィアがきつくない。
さすがにミカエラも、これが何か知ってるようで、
「こんな高価なもの、嬉しいけど、これでも足りないくらいよね。」
と、先程渡した封筒に手を置いた。
使い魔召喚の箱は銀の階級を与えられた時の支給品だ。
僕の家には代々、使い魔が受け継がれていたので、ジンとタシームは祖父から譲り受けた。
シルフィアは本来、兄さんが受けるはずだったけど、半日もしないうちにシルフィア自身で僕の所に来た。
理由は言わないから、知らない。
使い魔は主の魔力をエネルギーにしてるので、僕には3体はギリギリだ。
だから支給されても開封なんて無理なんだ。
「昨日見せたみたいに3体もいるんだ、受け取って。」
シルフィアが暗いわと言いながら壁のスイッチを入れると部屋の明かりがついた。
「ありがとう、ほんとに。」
「お礼は、まだだ、横に書いてある文字を読んで、君の使い魔を召喚してくれ。」